巣鴨地蔵通り商店街で「赤パンツ」が売れなくなる日

2013210日シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第71

マルジ店舗巣鴨の地蔵通り商店街が高齢者に人気の理由

 

東京・巣鴨の地蔵通り商店街は高齢者の人気スポットである。とげぬき地蔵を中心にした「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる。なぜ、高齢者はここにやって来るのか。理由の1つは、「とげぬき地蔵」のご利益である。

 

江戸時代、毛利家の女中が針を誤って飲んだ際、地蔵菩薩の「御影」を飲み込んだところ、針を吐き出すことができ、吐き出した御影に針が刺さっていたという伝承があり、「とげぬき地蔵」の通称はこれに由来する。

 

そこから他の病気の治癒改善にもご利益があるとされ、それを求めて高齢者を中心に参拝者が絶えない。本尊の御影は、財布や定期入れなどに入れて肌身離さず持っているとよいと言われ、これを目当てにやって来る人も多い。

 

高齢者が巣鴨地蔵通り商店街にやって来るもう1つの理由は、そこでの買い物だ。昔懐かしい駄菓子や日用品なども豊富にあるが、やはり巣鴨を象徴するのは、マルジの「赤パンツ」だ。干支の入った赤パンツや、オリジナルの駄洒落をまじえた「若ガエル」赤パンツなどが売れ筋だ。

 

なぜ、おばあちゃんは、そもそもこの赤パンツを買うのか。その理由は、健康にいいという言い伝えのようだ。赤パンツは、へその上まで隠れる程度に深めにつくられている。

 

この形だと、へその下にある丹田が覆われるので、身体が冷えにくく、自然治癒力を高めるらしい。また、女性は赤を身につけると、一生、下の世話にならないという言い伝えもあるらしい。

 

しかし、こうした言い伝えを信じるのは、特定の世代までである。大正生まれの私の母は、赤パンツの愛用者だ。私の子供の時に田舎から訪ねてきていた農家のおばあさんたちも、赤パンツをはいていた記憶がある。

 

彼女たちは、明治生まれだったはずだ。私の知る限り、赤パンツを愛用するのは、明治生まれから昭和一桁生まれまでの1935年(昭和10年)よりも前に生まれた世代だと思う。

 

半歩先の団塊_シニアビジネス130210_22025年、「赤パンツ世代」は巣鴨に買い物に来るか

 

ここで、1つの疑問が湧く。この「赤パンツ世代」は、いつまで赤パンツを買いに巣鴨地蔵通り商店街にやって来るのか、という疑問だ。

 

図は、2025年の女性の人口構成推計値を示したものだ。図には、要介護人口の推測値も示してある。ちなみに、この推測値は、2009年の要介護認定率の実績値をもとに、未認定の分も考慮して私が推計したものである。

 

「赤パンツ世代」の最年少者が1935年生まれだとすると、2010年に75歳だった人が、2025年には90歳になる。図を見ると、90歳以上の大半が要介護状態となるので、自力で巣鴨まで来られる人は少数派となる。

 

そもそも、要介護状態になれば、パンツではなくおむつをする頻度が増えるので、赤パンツのニーズはますますなくなる。

 

一方、1935年よりも後に生まれた人たちは、世代の嗜好性が違うので、当初から赤パンツの愛用者ではない。したがって、無病息災を願って巣鴨地蔵にやって来るとしても、巣鴨地蔵通り商店街で赤パンツは買わない。

 

また、仮に赤パンツが好きな人であったとしても、1935年から後に生まれた世代では、2025年にはネット利用率が結構高くなる。

 

図に示してあるとおり、75歳から80歳までの人でもネット利用率が50%を超える見込みなので、歩行に難がある場合は、わざわざ巣鴨まで出かけることなく、ネットで買うようになると予想される。ということは、ますます巣鴨の商店街までやって来る理由が少なくなる。

 

他方、赤パンツ世代には、自分の娘などにご利益を言い伝えて買い与える人も少なくない。自分の親から赤パンツを買い与えられた「準赤パンツ世代」はどうなるだろうか。母親との年齢差が20歳から30歳とすると、「準赤パンツ世代」の最年少者は、1955年から1965年生まれ。

 

この年齢層の人たちは、2025年には60歳から70歳になる。これらの人たちの多くはまだ介護が不要で自立して生活できるので、巣鴨に自力で来ることはできる。しかし、こうした人たちは少数派と思われる。

 

以上より、「赤パンツ世代」が顧客になり続ける時間はそう長くないことがおわかりいただけただろう。わかりやすいので赤パンツを題材にしているが、実はこの話は、いま現在、シニアをメイン顧客にして商売をしている企業すべてに当てはまる

 

 

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