「スマートシニアと新市場」から11年

スマートシニア・ビジネスレビュー 2010年9月21日 Vol.144

roujinhome昨日は敬老の日でした。私は11年前の敬老の日、99915日の朝日新聞に「スマートシニアと新市場」という論説を発表しました。

 

また、当時所属していた日本総研が発行するJapan Research Review 19999月号に「スマートシニアがけん引する21世紀のシニア市場」と題した論文を発表しました。

 

これらの小論は、シニア市場の近未来に対する

その時点での予感を述べたものでした。

 

あれから11年経過し、予感通りだったものは、

スマートシニアと私が命名した

ネットを縦横に活用して情報収集し、

積極的な消費行動をとる先進的なシニアが

確実に増えたことです。

 その影響は、たとえば有料老人ホーム市場に見られます。

 

かつては、ある高級老人ホーム運営会社が

朝日や日経に一面広告で無料説明会の案内を出すと、

定員600名のところ、倍の1,200名程度は即座に集まりました。

 

そして説明会の最後に入居希望のアンケート調査を行うと、

最低でも50名程度が入居申し込み欄にサインしたものでした。

 

ところが、2005年頃を境に、様子が変わっていきました。

無料説明会に参加しても、その場で入居申し込みをする人が

激減していったのです。

 

高価な新聞広告を打ち、高級ホテルを借り切って、

豪華な無料説明会を催し、大勢の人が集まっても、

参加者がすぐに入居を申し込むことはなくなりました。

 

なぜでしょうか?

 

こうした説明会に来る人は、

事前にネットでわかる限りの情報を調べ、

他の施設を数多く見学し、知人から口コミ情報を得たうえで

やって来るようになったのです。

 

30件から40件以上の施設を事前に見学し、

施設パンフレットをコレクションにする人も現れました。

なかには、体験入居をする際にデジタルカメラを持参し、

夜中の1時という運営体制が最も手薄になる頃の状況を

写真に収めるという“つわもの”も現れました。

 

こうした変化が、スマートシニアが増えたということの

具体的な例です。

 

有料老人ホーム市場は、20004月の

介護保険制度導入を境に大きく変化しました。

制度導入前は、ごく限られたお金持ち向けの

高級なものしかありませんでした。

 

しかし、制度導入後は多くの異業種から新規参入が相次ぎ、

2000年にわずか350だったホーム数が、

2008年には3,40010倍近くまでに急増しました。

 

ところが、商品をじっくり吟味して衝動買いをしない

スマートシニアが増えたため、常に供給過剰となっています。

これが、有料老人ホーム市場で急激な価格破壊が起きた

大きな理由なのです。

 

このようにスマートシニアの増加する時代とは、

売り手受難の時代なのです。

 

私はこの11年間、多くの企業経営者とさまざまな

仕事をご一緒する機会がありました。

 

そのなかでも、過去の成功体験にとらわれた経営者ほど、

市場の変化、時代の変容についていけず、

頓挫していった姿を目の当たりにしました。

 

今後、IT利用に何の抵抗感も持たない世代が

徐々に高齢化していきます。

スマートシニアの増加は時代の流れです。

 

この流れに処するには、

売り手がさらにスマートにならなければいけないこと、

そのための不断の工夫をし続けなければいけないこと。

 

そして、いかなる成功体験をもつ経営者も

過去の栄光にとらわれてはいけないということ。

 

敬老の日を機に、

このことを再確認した次第です。

  

 

参考情報

論壇 スマートシニアと新市場
(朝日新聞 1999915
日)

スマートシニアがけん引する21世紀のシニア市場
Japan Research Review 19999
月号)

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