スマート・エイジングとシニアビジネス

メトス 未来ビジネス対談 暖話談考

metos株式会社メトスは日本における暖炉・薪ストーブ、サウナ、温浴設備、介護浴槽などのパイオニア。このたび、同社の未来ビジネス対談 暖話談考(だんわだんこう)に同社の神山敏社長との対談が掲載されました。

  

神山社長は、今では当たり前になった個人で入浴できるオリジナル介護福祉浴槽「個粋(こいき)」を日本で初めて開発した個浴のパイオニアです。

 

同社が介護浴槽の販売を開始したのは1997(平成9)年。その頃の日本の介護浴槽は特殊な機械を使った大型浴槽がメインでした。しかし、大型浴槽での入浴は、ガチャガチャッと金属音を響かせながら、横たわるお年寄りをまるで物体のように洗ってはドボンとお湯につけて出す、まさに流れ作業の“人体洗浄”でした。

 

それは同社にとって、入浴介助者の負担を減らす上で必要な機械ではあっても《お風呂》と呼べるものではありませんでした。こうした現状を変えていきたい、という思いから、海外品の輸入販売を経て生まれたのが、オリジナル介護福祉浴槽「個粋(こいき)」です。

 

多くの人手がかかる入浴介護の世界が、皮肉にも人が中心でないという現状。それを本来の姿にしようという思いを商品に具現化してきた同社の歩みが、「常に人を中心に考えること」という同社のポリシーと表裏一体になっています。

 

今回はこの神山社長との2時間に及ぶ対談のごく一部を掲載したものです。

 

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神山:お忙しいところありがとうございます。いきなりですが、スマート・エイジングとは、どのような考え方でしょうか。

 

村田:私が2006年に提唱した加齢についての新しい考え方です。東北大学でのコンセプトにもなっています。 アンチ・エイジングという言葉を聞いたことがありますよね。多くの人たちが、その意味を理解せずに使っています。エイジングとは受精してから死ぬまでのプロセスのことをいいます。つまり、エイジングとは、生きているプロセスのことです。それをアンチ、否定するわけですから、死ぬということになってしまいます。スマートとは賢いという意味です。だから、スマート・エイジングとは、年を重ねるにつれてより賢く成長しようという考え方なのです。

 

神山:先生の著書「シニアシフトの衝撃」を拝読させていただきました。タイトルどおり衝撃を受けました。

 

村田:ありがとうございます。本当はもっと早く出版したかったのです。団塊の世代が一斉に定年退職を迎え、世の中が大きく変わると思われたのが2007年ですが、実際には退職者はそれほど多くなく、大きな変化は見られませんでした。人口動態のシニアシフトは、毎年少しずつ進展していたのですが、企業活動のシニアシフトが目立ってきたのは、東日本大震災後の2011年後半からです。団塊世代が65歳に達し、2007年と異なり、その多くが退職し始めたことと、社会全体の高齢化が進み、高齢者が目に見えて多くなったことが原因です。

 

神山:シニア向けのサービスにはどのようなアプローチが必要でしょうか。

 

村田:従来の介護や福祉分野では、その多くが行政の決めた枠のなかで事業者も物事を考えてきました。これからは、よりサービス利用者の立場に立った商品・サービスのあり方が必要です。たとえば介護入浴などは、機械によって浴槽のなかに入れられるのではなく、湯につかる、あたたまるといった本来の入浴といった人間的な行為に近づけることが重要です。自分が介護をされる立場の当事者なら、たとえ要介護度が重くなったとしても、健康な時と同じ浴槽にはいりたいと思うでしょう。供給側の論理ではなく需要側つまり利用者側の論理で、これまでの商品・サービスのあり方を一旦見直すことが必要でしょう。それが新たな市場となり、新しいビジネスとなります。

 

神山:先生は著書のなかで「シニアビジネスの基本は『不』の解消」ということをおっしゃっておりますが。

 

村田:1つの新しい商品・サービス市場が立ち上がると、その商品・サービスに満足しない顧客が必ず出現します。これは多様な価値観を持つシニアは、限られた商品・サービスではカバーしきれない多様なニーズを持っているからです。既存の市場が一見、飽和しているように見えても、何らかの「不(不安・不満・不便)」を持っている人は意外に多いものです。したがって、こうした人たちの「不」の内容を具体的に突き止め、それらの「不」を解消する商品・サービスを提供すれば新たなビジネスになりやすいのです。いろいろある「不」のなかでも、特に重要なのは、シニアの不安「トップ3」です。これは1番めが健康不安、2番めが経済不安、3番めが孤独不安です。3番めは、生きがい不安と言ってもよいです。どの調査でもこの3つの不安が必ずトップに挙がります。これは日本だけでなく、欧米でもアジアでも共通です。ある程度生活水準が似ていれば、人間が齢を取ると必要になるものは似てくるのです。

 

神山:メーカー側(製造・提供)が考慮すべきことをお聞きしたいと思います。

 

村田:いまや大半のコンビニ、スーパーに販売管理システムPOS(Point of Sales)が導入されています。このPOSのメリットは、商品の売れ筋がリアルタイムでわかることです。特に売り場面積が限られるコンビニでは、POSデータに基づき、売れ筋商品のみを棚に陳列するように管理しています。一方、この裏返しで、売れないものはどんどん棚から外されます。この結果、売れないものが、なぜ売れないのかが詳細に分析されにくくなっています。ところが、実はその売れなかった商品にこそ、次の事業機会が隠れていることが多いのです。飽和しているのは市場ではなく、むしろ私たちの頭の中である場合が多い。私たちのモノの見方、考え方が慣れきって、市場が飽和しているように認識してしまうのです。これだとビジネスチャンスは見えない。したがって、飽和市場と言われるものがあるならば、まず、その周辺をよく観察することだ。実は、必ずそのそばに新しい市場の芽がある。そこには必ずまだ解消されていない「不」がある。つまり顧客の「不安」「不満」「不便」です。その「不」を見つけ出すことが市場創出の第一歩なのです。言い換えると、事業機会というのは外にあるようで、実は私たちの頭の中にある。つまり、私たちが意識を変えれば、事業機会が見えてくるのです。シニアビジネスの基本はこの「不」の発見です。「不」を見つけ、それを緻密につぶしていく。オーソドックスに思われるかもしれませんが、これが過去15年間シニアビジネスに取り組んできた私の正直な実感です。

 

神山:最後にメトスに期待することはなんでしょうか。

 

村田:福祉の三大介助において、メトスが取り組む入浴はとても重要です。機械浴では費用がかさみます。要介護度が上がっても一つの風呂でまかなうことのできる「個粋」はすばらしい商品だと思います。一方、温浴については、ただ単に健康によい、とうたうだけでなく、温浴という行為が「何の健康に良い」のか、どのような効果が具体的に期待できるのかを明確にすることが重要です。たとえば、サウナであれば、その発汗効果による新陳代謝の促進に加えて、多忙なビジネスパーソンには、家庭で手軽に健康になれるための家庭用サウナユニットを提供するのもありでしょう。そして、温浴施設やスポーツジムでは、短期に効果を得られ、かつ値ごろ感もあるサービスもありでしょう。サウナは1964年の東京オリンピックをきっかけに日本でも認知度が上がったと聞きました。2020年に再びオリンピックが東京にやってきます。こういう機会も活用して、体によい生活習慣をつくるインフラを提案していくのもメトスらしいのではないでしょうか。

 

神山:どうもありがとうございました。

 

 

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シニアシフトの衝撃

 

スマート・エイジングという生き方

 

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