アメリカ大統領選挙と高齢者の関係

スマートシニア・ビジネスレビュー 2008年11月6日 Vol. 122

obama-08electionなぜ、オバマ氏がアメリカ大統領選挙で勝ったのか。
直接的な理由は、選挙人が多い激戦州を制したからだ。

選挙人とは形式上、間接選挙制をとるアメリカ特有の制度だ。
アメリカでは有権者がその州の選挙人を選び、
選挙人が正副大統領を選ぶようになっている。

有権者が投票するのは正副大統領候補であるため、
直接選挙とあまり変わりない。
ただし、その州でトップになった候補は、
その州の選挙人を丸取りできるという制度である。

選挙人が多い激戦州とは、多い順に①フロリダ州(27人)、
②ペンシルバニア州(21人)、③オハイオ州(20人)、
④ミシガン州(17人)、⑤ノースカロライナ州(15人)である。

2000年の大統領選では、フロリダ州の結果で共和党の勝利が決まった。
2004年ではオハイオ州の結果で勝敗が決している。
今回の選挙では、現時点(日本時間6日8時現在)で開票結果が出ていない
ノースカロライナ州を除く激戦州上位4つをオバマ氏が制したのである。

なぜ、オバマ氏はこうした激戦州で勝利できたのだろうか。

多くのメディアでの分析では、オバマ民主党の勝因は、
①非白人マイノリティ、②白人の若年層の支持を得たこと
と総括されている。

CNNの出口調査によれば、黒人投票者の96%、
ヒスパニック系の66%がオバマ氏に投票したという。

また、年齢別では18~29歳までの人々(18%)の66%、
30代(18%)の54%がオバマ氏に投票したのに対して、
40代・50代ではほぼ互角とのこと。
65歳以上ではマケイン氏が54%獲得したと言われている。

一方、激戦州の別のデータを眺めると興味深い事実に気がつく。
そのデータとは州毎の高齢化率(全人口に対する65歳以上の割合)である。

07年7月現在でフロリダ州は17%で全米第一位。
ペンシルバニア州は15.2%で第三位。
(アメリカ平均は12.6%。参考までに日本は同じ時点で21%)

激戦州上位二つは、実はアメリカで最も高齢化が進んでいる州なのだ。
私は、今回の選挙では高齢者の動向が大きな影響を及ぼしたと見ている。

ブッシュ政権第二期の大きな政策の一つが年金制度改革だった。
これは簡単にいえば、公的年金の管理を、
政府から個人に委ねようというものだ。
この政策の背景は、年金制度崩壊への危惧である。
イラク戦争がなければ、この政策がブッシュ政権での
大きな目玉になるはずだった。

しかし、この制度は自己責任原則の名の下に、
政府の責任を個人に押し付けるものとして
AARPを筆頭に高齢者から猛反発を食らっていた。

イラク戦争による疲弊だけでなく、社会保障政策についても
ブッシュ共和党政権は高齢者からそっぽを向かれていたのだ。

一方、フロリダ州とペンシルバニア州で高齢化率が高い理由は、
老後を過ごすために他の州から移り住む高齢者が多いからだ。
このため、リタイアメント・コミュニティなどの
高齢者向け住宅が他の州に比べて大変多い。

フロリダ州ではマイアミなどのリゾート地では広いゴルフ場の間に
高層建築のリタイアメント・コミュニティが林立する光景がよく見られる。
一方、ペンシルバニア州では、フィラデルフィアなどの都市部では
高層建築のものが、郊外では牛の放牧地の合間に忽然と
巨大なリタイアメント・コミュニティが現れる光景をよく目にする。

リタイアメント・コミュニティの住民の資産水準は、平均よりも高めである。
ただし、彼らの多くは金融資産を銀行預金ではなく、
ミューチャルファンド(投資信託)や株式で保有していることが多い。

だから、9月以降に起きた金融危機は、
こうした高齢者の金融資産に大きな打撃を与えた。

前述のとおり、一般的には72歳のマケイン氏は、
ベトナム戦争の帰還兵であり、外交経験も豊富で、
47歳のオバマ氏よりも、高齢者層の支持が多いと言われている。

しかし、今回の選挙に関しては、上記の理由により、
激戦州における高齢者が非共和党のオバマ氏に向かったと思われる。

アメリカでは投票日に雨が降っても必ず投票に行くのは高齢者だと言われる。
今回の大統領選挙は、社会の高齢化が選挙に及ぼす影響を
如実に示したケーススタディと言えよう。
 

●参考情報

スマートシニア・ビジネスレビュー Vol.107 2007年8月1日
政治家に国民の声を伝える術・日米比較

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