砂糖税で糖尿病は減らせるか?

スマートシニア・ビジネスレビュー 2019年3月24日 Vol.229

砂糖税の導入が東南アジアで広がっています。

WHO(世界保健機関)の報告書によれば、シンガポール政府は18年12月、糖分の多い飲料や食品の摂取を抑制する策として、砂糖税の導入のほか、広告宣伝の規制や糖分の多い一部飲料の販売禁止などを検討していると表明しました。

この背景には生活習慣病による医療費の増加に歯止めをかけなければ、財政が立ちゆかなくなるとの危機感が政府にあるからです。

18歳以上のシンガポール人の9%が糖尿病、35%が肥満で、同国の2019年度予算に占める医療費総額は15%に上り、前年度より10%増える見通しです。

こうした砂糖税を導入する動きは各国にも広がっています。ブルネイやタイでは17年、フィリピンでは18年1月に導入済み。ベトナムでも課税を検討中、マレーシアでは19年7月に導入予定です。

しかし、果たして砂糖税で糖尿病は減らせるのでしょうか。

実際に罹患した私の体験から言えば、その実現は難しいでしょう。

糖尿病の改善・予防には、砂糖だけでなく糖質摂取量全体の低減が必要だからです。日本人を含むアジア人の糖質源の多くは主食(コメ、小麦など)であり、必ずしも砂糖とは限りません。

これに加えて、毎日の有酸素運動で内臓脂肪を燃焼させること、筋トレで筋肉をつけて体の基礎代謝を上げることの方が糖尿病の改善・予防にはるかに有効だからです。

砂糖税を導入済のフィリピンでは18年1~10月に販売された課税対象飲料から5億7000万ドル(約630億円)の税収を得たとのこと。どうも砂糖税は国民の糖尿病予防というより、新たな税収源としての側面が強いようです。

政府が国民の糖尿病予防・改善を正しく推進したいなら、砂糖税でなく、糖質全体への課税と運動促進をするべきでしょう。

参考:スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣
秘訣その1 有酸素運動をする
秘訣その2 筋トレをする
秘訣その4 年齢相応の食事をする