脳トレの効果的なやり方は?

2020年7月17日 日経MJ連載 なるほどスマート・エイジング

難しい計算より簡単な計算を素早く解く方が脳は活性化する

日経MJ 連載「なるほどスマート・エイジング」第16回のテーマは「脳トレの効果的なやり方は?」。

依然厳しい入退室制限が続いている高齢者住宅や介護施設では、入居する人たちの認知症が進んでしまう可能性が懸念されています。

そこで重要になるのが脳のトレーニング(脳トレ)です。多くの高齢者施設等で導入されていますが、改善効果が得られていない例も多いようです。どうすれば効果が上がるか、その勘所をお話しました。
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緊急事態宣言が解除されても、高齢者住宅や介護施設は依然厳しい入退室制限が続いている。高齢者は新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクが高く、こうした施設はクラスターになりやすいと見られているからだ。

だが制限が長引くと、入居者は外出機会が減少してしまう。運動不足や他者とのコミュニケーションが不足し、認知機能の低下につながりかねない。

また、外出機会が減ると、どうしてもテレビの視聴時間が長くなりがちだ。実はこれがさらなる認知機能の低下を促してしまう。

テレビを見ている時に大脳の前頭前野(ぜんとうぜんや)に抑制がかかることが東北大学の川島隆太教授らの研究でわかっている。

前頭前野は「脳の司令塔」と呼ばれ、コミュニケーションや思考、意思決定など重要な機能を担っている。この部位の活動に長時間抑制がかかると、認知機能の低下につながってしまう。

このため、コロナによる外出制限が長引くと、高齢者施設等に入居する人たちの認知症が進んでしまう可能性が懸念されている。本人だけではなく、家族や施設スタッフにとっても看過できないことだ。

そこで重要になるのが脳のトレーニング(脳トレ)だ。多くの高齢者施設等で導入されているが、改善効果が得られていない例も多い。原因は、科学的な効果検証をしていないプログラムを使用していたり、効果の上がるトレーニング方法を実施していなかったりするためだ。前者は問題外として、ここでは後者について説明する。

川島教授によれば、脳トレには「情報の処理速度を向上する」ものと「作動記憶容量を拡大する」ものがある。

前者の例としては、大きな声で音読する、簡単な計算を解く、手で書くことが挙げられる。一方、後者の例としては、スパン課題などがある。

効果を上げる秘訣の第一は、こうした作業をできるだけ素早くやることだ。文章は意味を考えず、間違ってもよいのでとにかく早く読むのがコツだ。

第二は、計算は難しいものより、簡単なものを素早く解くことだ。昔、脳画像イメージング技術がなかった頃、難しい計算をする方が脳は活性化すると考えられていた。

だが、機能的MRIなどで計算する時の脳を見ると、簡単な計算を素早く解く方が脳はより活性化することがわかっている。

第三は、自分ができるギリギリの難しさで継続することだ。脳トレ効果を最大限発揮させるためには、その人の現時点の認知機能レベルより少し難しい課題を行うのが肝要だ。

以前紹介した「学習療法」では、サポーターが学習者の認知機能レベルをチェックして課題レベルが最適になるように調整している。

また興味深いことに、自分ができるギリギリの難しさでトレーニングを継続すると、情報の処理速度や作動記憶の容量を大きくできるだけでなく、直接トレーニングをしていなかった他の認知能力(がまんする力、注意力、論理的記憶力など)まで一緒に向上することがある。これを「転移効果」と呼んでいる。

第四に、トレーニング時間は一日最長15分とすること。これ以上やっても効果は変わらない。むしろ長時間やると疲労して逆効果になる。また、トレーニングは午前中がよい。私たちの脳は午前中が一番元気で、以降時間と共に疲労してくるからだ。

スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣 秘訣その3 脳トレをする

東北大学スマート・エイジング・カレッジ東京

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