トレーニングで要介護状態を防ぐ

先見経済12月10日号 連載 親と自分の老い支度 第11回

先見経済1112_表紙脳卒中、関節疾患、転倒・骨折が要介護状態になるきっかけ

 

〇七年の「国民生活基礎調査」によれば、要介護状態になるきっかけの第一位は「脳卒中(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)」、第二位は「認知症」。その次の「高齢による衰弱」を除くと、以下「関節疾患」「転倒・骨折」と続きます。これらより、「脳卒中」と関節疾患などの「運動器障害」の予防が要介護状態にならないために重要なことがわかります。

脳卒中の予防法として一番いいのは有酸素運動です。最も手軽にできるのがウォーキングでしょう。この有酸素運動は、血圧を下げたり、血中脂質の状態を改善したりするのに効果的です。

 

七〇代の筋肉量は、二〇代の半分

 

高齢による衰弱は仕方がないとして、重要なのは運動器障害の予防です。運動器障害には複数の要因が関係していますが、原因の一つに加齢による「下半身の筋力低下」が挙げられます。

筋肉量の低下は三〇~四〇代から徐々に始まり、二〇代を一〇〇パーセントとすると、六〇代では約六〇パーセントに、七〇代では約五〇パーセントにまで減少してしまいます。あなたの親が七〇歳を過ぎているなら、筋肉量は二〇代の半分になっていると教えてあげてください。

また、上半身と下半身での筋肉量の低下割合を比較すると、下半身は上半身より一・五から二倍近くも低下していることが明らかとなっています。

 大腰筋を鍛えるのがポイント

 

私たちの体は、歩く際に「大腰筋」と太ももの筋肉を使っています。大腰筋とは、上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉です。大腰筋は歩行能力に影響を与える重要な筋肉です。

前述のとおり、私たちの筋肉量は、加齢とともに減少しますが、特に大腰筋が弱ると、歩行時に地面からのつま先の高さが下がって、ちょっとした段差や小石などに「つまずき」やすくなります。こうした「つまずき」がきっかけで転倒・骨折すると、そのまま寝たきりになってしまう可能性が大きいのです。

したがって、「筋力トレーニング」によって大腰筋をはじめとした歩行に関わる下半身の筋力を維持・強化し、筋肉量を増やすことが転倒・骨折の予防になるのです。

 

先見経済1112_2-1ウォーキングだけでは筋肉量は増やせない

 

筋力トレーニングが重要だ、という話をすると、高齢者の方からは、「毎日、ウォーキングをしているので大丈夫です」という返事が返ってくることがあります。

ウォーキングのような有酸素運動は、脳卒中の予防法としては一番いいのですが、残念ながらウォーキングだけでは、筋肉量の低下を抑えたり増加させたりすることはできません。筋肉量の低下を抑えたり、増加させたりするためには、対象の骨格筋に対して負荷をかけることによって行なう筋力トレーニングが必要なのです。

 

80代でも、筋トレすれば筋肉が増える

 

実は八〇代、あるいは九〇代の人でも、適切な筋力トレーニングによって筋肉量が増加することが多くの研究によってわかってきました。同じ年齢層でも筋力トレーニングを行なっている人と行なっていない人では、大腰筋の面積が明らかに違うのです。

私のアメリカ人の友人で八四歳の男性がいますが、彼はほぼ毎日スポーツジムに通い、筋力トレーニングを行なっています。いまでも姿勢・スタイルがよく、彼の周辺の同年代の人が認知症になったり、寝たきりになったりしているのに対して、彼は元気はつらつで、とても八四歳とは思えないと周りの人に言われています。

 

寝たきりになると認知症も進行しやすい傾向がある

 

ある特養(特別養護老人ホーム)で入居者の要介護度、脳機能の度合いと、自立歩行状態の一〇年間にわたるデータを見せてもらったことがあります。

明らかだったのは、転倒・骨折して自立歩行ができなくなると、認知症の進行が速くなる傾向が見られ、これに伴い要介護度も急速に重くなっていく傾向が見られたことです。このデータが示しているのは、自分の足で自立して歩くという行為が、脳機能にも何らかの影響を及ぼしているということです。

私の母は脳梗塞で倒れた後、懸命のリハビリにより、何とか自立して歩けるようになりました。しかし、まだ足にしびれが残るようで、長時間歩くのはしんどいようです。先のデータを見てから、私は母に、本人は辛いかもしれませんが、「無理をしない範囲で、なるべく歩け」と口を酸っぱくして言うようにしています。

 

先見経済1112_2-2高齢者でも続けられる筋トレ・サービスが増えている

 

高齢者に「筋力トレーニングをした方がよい」と言うと、「高齢だから、無理、無理」と言って、あきらめてしまう人が多いようです。しかし、最近は高齢者でも無理なくできる筋力トレーニングの機器やサービスが増えてきており、本人にやる気さえあれば、継続できる環境は整ってきています。

たとえば、(株)つくばウエルネスリサーチは、筑波大学における研究成果を基盤に、高齢者を中心に多数の住民に対して個別指導と継続支援を可能とする個別運動・栄養プログラム提供・管理システム(e-wellnessシステム)を提供し、全国の自治体・企業健保等において約一万人の方がプログラムを実践しています。

また、各フィットネスクラブも、高齢者でも取り組みやすい機器やプログラムを開発し、高齢者の利用を促しています。特に、(株)カーブスジャパンが運営する「カーブス」は、女性専用ですが、中高年を中心に、高齢者でも継続して取り組みやすい筋力トレーニングプログラムとして人気を呼んでいます。

このカーブスは、アメリカで開発され、世界六〇か国でのべ四三〇万人以上が利用している世界最大の女性専用フィットネス・チェーンです。〇三年に、私が日本で初めて紹介し、〇五年七月に一号店をオープンして以来、わずか六年余りで全国に一〇六八店舗(一一年一〇月現在)、会員数は四〇万人を超える日本一のチェーンに成長しました。

カーブスに通っている人は五〇代が最も多く、全体の三〇パーセントを占めますが、六〇代が四〇代と並んで二番目に多く、二二パーセントを占めています。また、七〇歳以上も六パーセント占め、最高齢はなんと九七歳です。私がアメリカで最初にカーブスを見たときには、一〇〇歳を超える女性が通っていたのを見て、びっくりしたものでした。

このようにカーブスが、高齢者でも継続して取り組みやすいのには、いくつかの理由があります。一日わずか三〇分で効果が出る点、一人ひとりの体力に合わせて無理なく運動できる点、住宅地のそばや商店街のそばにあることが多いので通いやすい点、仲間ができやすく楽しい点、など多くの工夫が施されています。

あなたの親を要介護状態にさせないために、ぜひ、こうした最寄りの筋力トレーニング実施場所に足を運んでもらってください。

先見経済を発行する清話会のご好意により記事全文を掲載しています。

参考文献:親が70歳を過ぎたら読む本


あわせて読みたい関連記事

タグ


このページの先頭へ

イメージ画像