親世代と子世代で考える老後のトラブル予防

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第95

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私は東北大学スマート・エイジング・カレッジで「親世代と子世代とで一緒に考える老後のトラブル予防」と題したゼミを開いている。このゼミは、拙著「親が70歳を過ぎたら読む本」(ダイヤモンド社)をテキストに、高齢期の親にかかわるトラブル予防のために親世代、子世代でどのようなことを考え、行動すべきかについて議論するものである。

 

スマート・エイジング・カレッジでは、医学系のテーマを中心に病気の予防、健康維持・増進のための最新知識を得る機会がたくさんある。これらを踏まえ、家庭における高齢期の親にかかわるトラブルや家族間トラブルを予防するための実践的な方法について包括的に議論する機会をつくっている。

 

異世代での学びあいが新たな人間関係を育む

 

ゼミ生は公募で選ばれた一般市民。年齢層は30代後半から70代後半まで。まさに親世代と子世代が参加している。ゼミは隔週に一度、一回2時間開催する。

 

ゼミではまず毎回ゼミ生二人に自分自身の体験を15分間プレゼンしてもらう。その後45分間、発表内容をもとに、どうすればもっとよいトラブル予防策があるかを様々な観点から議論する。

 

発表してもらう内容は各人に任せているが、親の入院、介護、高齢者施設探し、相続、成年後見などがテーマになる。また、墓をこれからどうするべきか、在宅での看取り、緩和病棟、尊厳死などもテーマになる。

 

このように極めてプライバシー性の高い内容をテーマにしているので、ゼミ開始当初は、参加者も遠慮気味で、互いに様子見風なところがある。しかし、発表者が自分の家族や親戚も含めたトラブルの内情を率直に真剣に発表すると、他のゼミ生もそれに共感して活発に意見を言うようになり、議論が深まっていく。

 

また、普段ディスカッションをするという習慣の少ない社会人のゼミ生が、15分のプレゼンを聴いて何を議論すべきかを見い出し、限られた時間のなかで建設的に議論するという修練の場にもなっている。こうした経験を毎回積み重ねることで、ゼミ生どうしの信頼感が高まり、さらに議論が活発になっていく。

 

silversangyou1503忙しい現役世代は高齢期の問題を知る機会が少ない

 

このゼミを約3年間実践してきて、私がつくづく感じることは、おおむね40代以上の老親を抱える現役世代の人は、介護や相続などのトラブル予防の知識がきわめて希薄だということだ。また、それがゆえにそうした知識や知恵を包括的に学びたいと思っている人が多いことも痛感する。

 

高齢期の親に関わる諸問題は、実は親だけの問題ではない。むしろ多くの場合、子供である「現役世代とその家族の問題」になる。ところが、現役世代の人は、仕事で忙しいうえ、一般にこれらの諸問題についての知識や理解が乏しいのが現状だ。そして、自分の親に何かがあって、初めてその対処に着手する人がほとんどと言っても過言ではない。

 

人生の成熟期の対処法を教えてくれる学校はない

 

子供から成人への成長期には、小学校から大学まで必要な基礎知識や学力を身につけるための教育の場が整備されている。ところが、成人から中高年への成熟期には、自分の生活防衛のための知識や、よりよい後半生を過ごすための対処法を身につけるための学習の場は、残念ながらほとんどない。したがって、こうした知識や対処法は独力で学ぶ以外に方法がない。

 

一方、こうしたことを学ぼうと思って書店に行くと、「相続」「介護」「老人ホーム」「成年後見制度」といった個別テーマによる専門書は数多く存在する。ところが、これらのテーマは相互に深く関係があるにも関わらず「高齢の親とその家族が遭遇しうる諸問題」といった視点で、これらの個別テーマの勘所を横串にした書物は、なかなか見当たらない

 

現役世代が生活防衛のために、よりよい人生を送るために、どんなアクションが必要なのか、その理由は何かを包括的に整理した書物が意外に少ない。そのことに気がついた私は、2011年に先述の拙著を執筆したのだった。

 

3年間のゼミ体験を踏まえて、改めて感じているのは、超高齢社会・日本では、こうした分野の知識や知恵を必要としている人がますます増えているにも関わらず、それをわかりやすく、自分事として包括的に学ぶ機会が少ないことだ。

 

これは私自身の課題でもあるが、今後はこうした学びの機会を社会に広く普及させる必要があるだろう。

 

 

参考文献:親が70歳を過ぎたら読む本

 

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