企業と消費者にとってのシニアシフトの意義とは?

2013110日 シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第70

 

図1

企業にとってのシニアシフトの意義とは?

 

前号で企業活動のシニアシフトが日本中で進みつつあると述べた。このシニアシフトには、商品の売り手である企業、商品の買い手であるシニアの双方にとって、どのような意義があるのだろうか。

 

まず、企業にとっての意義は、先細る若年層ではなく、今後も増え続けるシニア層を自社のコア顧客にすることで、持続的な売上げ増・収益化が可能になることだ。これをいち早く実行している業界の例としてコンビニ業界が挙げられる。

 

従来、コンビニは「近くて便利だが値段が高い」というイメージが強く、主な顧客層は長い間若い男性で、シニアや女性は少数派だった。

 

ところが、ここ数年シニアや女性の来店者の割合が増えている。国内コンビニ最大手セブン‐イレブン・ジャパンの来店客(1日1店舗当たり平均客数)の年齢別構成比の年次変化を見るとそれがよくわかる。

 

1989年度には30歳未満が63%、50歳以上が9%だったのが、2011年度には30歳未満が33%、50歳以上が30%となっている。30歳未満の割合がほぼ半分になったのと対照的に、50歳以上の割合が3倍以上に増えている

 

店内を見渡せば、「セブンプレミアム」というプライベートブランドの小口惣菜シリーズが目立ち、弁当コーナーでも少量パックの弁当や惣菜の種類が増えている。

 

一方ローソンは、運営するローソンストア100で、野菜や肉といった生鮮品を品揃えの重点にしたのに加えて、「ローソンセレクト」という低価格のプライベートブランド商品の割合を増やした。これらの施策により「近くて便利だが、スーパーのような生鮮品がなく価格も高い」という従来のコンビニのイメージを刷新した。

 

こうした「企業活動のシニアシフト」にいち早く取り組んだ結果、セブン‐イレブンも、ローソンも近年は毎年最高益を更新し続けている。

 

半歩先の団塊_シニアビジネス130110_2シニアにとってのシニアシフトの意義とは?

 

次に、商品の買い手であるシニアにとっての意義は、より価値の高い商品・利便性の高いサービスを得られるようになることだ。このわかりやすい例は、大手スーパーにおけるシニアシフトの動きである。

 

イオンやイトーヨーカドー、ダイエーなど大手スーパーは、従来品揃えの豊富さを売りにするために売り場の広い大型店舗で事業展開してきた。品揃えの豊富さと規模の経済を追求するために、店舗規模を徐々に大型化し、土地コストを下げるために徐々に郊外のロードサイドに出店するようになった。

 

ところが、こうした郊外の大規模店舗は、シニアにとっては行きづらい場所になる。高齢になるにつれてクルマの運転をしなくなり、足腰の衰えに伴って自宅からの行動範囲が狭くなるからだ。

 

また、店舗が広いと欲しい商品を探すのにいちいち長い距離を歩く必要があり、疲れる。すると、店舗の広い大型スーパーに買い物に行くのがおっくうになる。

 

さらに、買いたい商品が手の届かない高い棚にあったり、価格表示や商品説明の字が小さくて読めなかったりすることで、購入意欲があって来店したにもかかわらず、実際には購入されないという機会損失も大きくなっていた。高齢化の進展とともに大型スーパーからシニア客が徐々に遠ざかっていったのだ。

 

このように大手スーパーがシニア客を失った最大の原因は、長い間彼らのターゲット顧客が54歳以下の「ファミリー層」だったからだ。

 

かつてのスーパーの盟主、ダイエーの店の看板には「主婦の店 ダイエー」と書かれていたものだ。主婦とその子供を中心としたファミリー層をいかに取り込むかが、かつてのスーパー経営の常識だったからだ。

 

こうした状況に陥った反省を踏まえ、スーパー各社では2011年あたりからようやくシニアシフトに本腰を入れるようになった。シニア客に好まれる売り場、商品、サービス開発などにおいてさまざまな取り組みがなされるようになった。

 

体の機能低下が買い物にもたらす影響と売り場・サービスの対応

 

とはいえ、スーパーにおけるこうしたシニアシフトの取り組みはようやく本格的に始まったばかり。まだまだ改善の余地が多いのが実情だ。しかし、こうした取り組みが今後ますます増え、競合他社との切磋琢磨を通じて商品・サービスの質が上がれば、シニア消費者にとっての利便性はどんどん高くなっていくだろう。

 

 

シニアシフトの衝撃 - 超高齢社会ビジネスチャンス方法

 

 

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