“シニアシフト時代”の顧客接点 「対話力」を磨いた企業が勝つ!

月刊コンピューターテレフォニー 20132月号 CT Interview

月刊コンピューターテレフォニー2013_2月号4-1_2超高齢化社会に突入した日本。商品を見る目が厳しく、不快さ・不便さに対し敏感なシニアに通用する商品戦略、サービスとは何か。「従来、非合理とされてきたビジネススタイル、イマジネーションを喚起するようなコミュニケーションで絆を強める手法が必要」とシニアビジネスの見識者である村田裕之氏は指摘する。

 

――高齢化が加速するなか、消費者の動向や企業戦略にはどのような変化がみられますか。

 

村田 2012年は、団塊世代の最年長者が65歳に達する年でした。つまり、これから定年退職し年金生活に突入するシニアは加速度的に増えることになります。内閣府も2050年には2.5人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上と推計しています。

 

人口動態の変化に伴い、消費動向も変化するはずです。例えば、少子化もあいまって、すでに大人用紙おむつの市場規模が、乳幼児用のそれを上回っています。老人ホームや介護ビジネスも活況です。

 

これらシニア特有のビジネスだけではなく、従来若者向けとされてきた商品・サービスにも、シニアシフトが進んでいます。例えば、ゲームセンターやファミリーレストランもシニアの利用者が増加傾向にあります。

かつて若者の生活インフラとされたコンビニエンスストアもそのひとつ。最大手のセブンイレブン・ジャパンの来店客(1日1店舗当たり平均客数)の年齢別構成比をみると、1989年度に63%だった30歳未満が2011年度には33%に落ち込み、代わりに50歳以上が9%から30%に拡大しています。

 

これを受けて同社では、プライベートブランドで小口惣菜を充実させるなど、高齢者の単身生活をサポートする商品力強化に乗り出しています。

 

本物志向で倹約家?!シニアの実態を把握すべし

 

――シニア消費は100兆円市場といわれ、多くの企業が注目しています。

 

村田 「人数が多くてお金持ち」という単純な認識では痛い目に遭います。ひとくちにシニアといっても、まだ現役で就業している60歳と年金生活の70歳では消費スタイルがまったく異なります。年齢ではなく、「本人のライフステージの変化」「家族のライフステージの変化」など対象者の変化で市場を分類すべきです。

 

例えば、本人および配偶者が就業しているか否か、子育てが終わっているか否かで収支は変わってきます。「シニアをターゲットにする」という大雑把な考え方ではなく、どのようなライフスタイルのシニアが自社の顧客ターゲットとなるかを明確にする必要があります。

 

――顧客分類がカギを握るということですね。

 

月刊コンピューターテレフォニー2013_2月号4-2_2村田 ターゲットとなる顧客を見定めたら、次にその顧客がどのような商品・サービスを求めているのか捉えることが必要です。

 

シニアの特徴は「ストック・リッチ、フロー・プア」。つまり、高額出費に備えてお金を蓄える傾向が強く普段の生活においては倹約志向なので、お金を引き出すのは容易ではありません。また、目が肥えている分、子供だましは通じないことも忘れてはいけません。本物志向でいながら、財布のひもは固い。それがシニアの実態です。

 


ExcitedEncouragedEngaged 財布の紐をゆるめる3つの“E”

――シニアが要求する商品・サービスとはどういうものですか。

 

村田「わくわくすること(Excited)」「勇気づけられたり、元気になること(Encouraged)」「当事者になること(Engaged)」の3つのEを満たす商品・サービスです。例えば、旅行の案内であれば、訪れる地域やホテルの名称といった情報だけではなく、満天の星空や窓から見える朝日など、どんな体験ができるのかを伝え、わくわくさせることで興味を引くことができます。

 

「興味はあるけど体力的に自信がない」と訴える顧客には、「大丈夫、まだお若いですよ」と励ますことで背中を押すことができます。また、旅行に行った後には旅日記などを書いてもらってパンフレットに掲載すれば、その顧客は旅行会社の一員になったような感覚になり、つぎもまたその会社のツアーを利用しようという気持ちが芽生えます。

 

――ち密なコミュニケーションで関係性を深めることが必要だということでしょうか。

 

村田 その通りです。手間はかかりますが、いったんそうした関係性を構築すると簡単には離れません。また、ち密なコミュニケーションといっても、単に多くを話せばいいというわけではありません。サービス提供者側からの一方的な情報提供は、かえってへそを曲げることにつながりかねない。

 

まずは顧客がなぜ電話をかけてきたのかを聞き、どういうことにわくわくするのかを察して、イマジネーションを喚起させるような話を返す。対話そのものが、楽しくなくてはなりません。

 

――サービス提供者側にはかなり高度な応対力が必要になりますね。

 

月刊コンピューターテレフォニー2013_2月号4-3_2村田 まず、単純な商品知識ではなく、その商品の魅力はどこにあるのか、なぜリピーターが来るのか、などと掘り下げて考えることが大事です。一方で、顧客の興味のポイントを察する力を磨く方法は、とにかく実践感覚が重要です。

 

シニアとの会話が不慣れなうちは、「あんたみたいな若造に教えられたくないわ」と怒らせてしまったり、クレームになることもあるでしょう。

 

しかし、くじけずに「どうすれば喜んでもらえるのか」と悩みながら応対を続けるうちに、いつしか「あなたのおかげで元気になったわ」と喜んでくれる顧客が現れるものです。このプロセスを通じて人間力が磨かれ、いい応対につながるのです。

 

 

合理主義はマッチしない!要求に応え信頼関係を構築

 

――業務効率を重視するような顧客対応では、シニアを喜ばせることは難しそうですね。

 

村田 対シニアビジネスは、徹底した合理主義のビジネスとはマッチしません。シニアが求めるのは、不安・不満・不便の解消です。

 

例えば、あるスーパーマーケットでは、「多くは必要ないのでばら売りしてほしい」という要望に応え、調味料や卵をばら売りしており、それがシニアに受け入れられて売り上げを伸ばしています。こうした一見すると非合理に見えることが、シニアの期待に応え、信頼につながり、ついで買いを促し、リピーターになるのです。

 

逆に、不安・不満・不便を増大させるような応対をしてしまうと大クレームに発展します。例えば、インターネットがつながらないとか、機械が壊れたという、すでに不安・不満・不便を感じている状況でコールセンターに電話をしたときに、いつまでたってもつながらず、やっとつながったらたらい回され、あげくメールで再度問い合わせするように言われる。

 

若い人でもクレームになるでしょうが、不安・不満・不便に敏感なシニアでは怒りが3倍になると考えるべきでしょう。電話をつながりやすくすることはもちろん、応対のルールも、電話をかけてきた理由を伺ってから、いつまでにこういう対応をしますと確約することを徹底すべきです。この約束がシニアの不安を和らげ、不満を飲み込むことになるのです。

 

――クレームに発展してしまった場合、応対のポイントは。

 

月刊コンピューターテレフォニー2013_2月号4-4_2村田 まず顧客が言いたいことを気持ちよくいわせることが鉄則です。「燃えさかった火はそのまま燃やせ」という石油化学工場火災のセオリーと同じです。途中で遮ると「ちゃんと最後まで聞け」と興奮しがちですが、燃料が燃え尽きるまで話し終えると「言い過ぎたかな。これからもよろしく頼むよ」と落ち着くものなのです。

 

シニアに限りませんが、怒り心頭の顧客は何を言っているのか自分でもわからなくなってしまうこともあるので、ある程度話してもらったところで「つまりお客様の今回のご意見はこういうことでございますね」と言いたいことを要約してあげることも重要です。それによって「この人は自分の気持ちをよくわかってくれる」と信頼関係につながります。

 

――シニア対応に向いている応対者とは。

 

村田 例えば70代の顧客がメインであれば、その子供世代である50代前後が話しやすくなると思います。ただし、若い人がダメということはありません。誠意を示すことができれば、性別・年齢は関係ありません。

 

とくに電話対応の場合は、声に心の姿勢があらわれます。シニアはそういうことに敏感です。これからは、応対者の心持や、顧客に対する姿勢に踏み込んだ採用や教育が必要になるでしょう。

 

――顧客がシニアシフトすることで、サービスの在り方やサービス提供者に必要な資質も変化しそうですね。

 

村田 サービスだけではなく、商品企画から営業形態、マーケティングとありとあらゆる企業活動が今後加速度的にシニアシフトしていきます。そこに気づいていち早く着手するか否かが、20年後、30年後の生き残りを決める分かれ道になりそうです。

 

 

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月刊コンピュータテレフォニ

 

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