意外に知らないアンケート調査の落とし穴

スマートシニア・ビジネスレビュー 2014728 Vol.206

アンケートの例未経験なことへの「意向」を尋ねると回答の信憑性は低下する

 

アンケート調査という手法は、設問を回答者の「現状の事実関係の確認」に限定すれば、回答者が虚偽の回答をしない限り有用です。たとえば、性別、住所、年齢、生年月日、資格の有無などを尋ねる場合です。

 

ところが、設問内容を未経験なことに対する「願望」や「意向」を尋ねる性質のものにすると、その回答の信憑性は著しく低下します。

 

たとえば、40歳から60歳までの母集団に「あなたは、海外に数か月滞在するロングステイをしてみたいと思いますか?」「ロングステイの場所は、カナダ、オーストラリア、タイ、マレーシアのどこがいいですか?」「ロングステイにいくらまで予算をつぎ込めますか?」などの設問の場合です。

 

回答者は、自分が経験したことのない商品・サービスに対しては、実感が湧かないため「明確な判断基準」を持ちません。このため、回答への意識が希薄になりやすく、回答内容の信憑性が低下します。

 

先ほどの母集団に「老後は田舎暮らしと都会暮らしと、どちらを希望しますか?」という設問をする場合も回答の信憑性が下がります。その理由は、まだ老後になっていない人に老後の生活を尋ねる点にあります。

 

自分の老後が想像できない人に老後自分がどうなっているのかを尋ねても明確な回答は得られません。このような設問をされる場合、「この設問よくわからないから適当に回答しておけ」という気持ちが回答者に起こりやすいのです。

 

こうした理由から、未経験なことに対する設問の場合、アンケート調査結果の信憑性が下がります

 

回答内容は選択肢の作り方で信憑性が変化する

 

一方、設問内容がこれまで自分が経験したことだとしても、回答の選択肢に自分の状態あるいは考えに合致する表現がない場合、回答しづらくなるため、回答内容の信憑性が下がります

 

たとえば、「あなたは、どんな気分の時に運動をしたいと思いますか?」という設問に対して、回答の選択肢が、①気分転換したい時、②体が疲れている時、③落ち込んだ時、④体重が増えた時、⑤運動不足だと感じた時、の5つとします。

 

この設問に対して、あなたが仕事の締め切りが迫っているのに、一向に仕事がはかどらない状況の場合、どれを選択するでしょうか。恐らく①を選択する場合が多いと思われますが、⑤を選択する人も少なくないでしょう。

 

気分が塞いでやる気が出ないのだとすれば、③を選択する人もいるでしょう。あるいは、脳こうそくで倒れた後、運よく機能回復した人なら、リハビリのために運動したいと思うでしょう。しかし、それに合致する選択肢がないので、回答せずにスキップするでしょう。

 

このように、アンケートの回答内容とは選択肢の作り方で信憑性が大きく変化する性質があります。

 

設問文章や設問文章全体の文脈の巧拙によっても回答内容は大きく変わる

 

実は、回答選択肢の作り方だけでなく、設問文章や設問文章全体の文脈の巧拙によっても回答内容は大きく変わります

 

設問に答えれば答えるほど、回答者の問題意識を駆り立て、そのテーマへの関心が深まり、回答意欲が湧いてくる設問のデザインがある一方、設問内容が回答者の問題意識よりもレベルが低く、回答意欲がまったく湧かないという設問のデザインもあります。私が知る限り、世の中のアンケート調査の大半は、残念ながら後者です。

 

アンケート調査に答えると言う作業は、一般に楽しいものではありません。できれば最小限で済ませたい類の作業です。このため、設問の数や記入欄の書きやすさが回答内容の信憑性に影響します。

 

一つのテーマについてあまり多くの設問があると、たいていの場合、回答者は途中で回答するのが面倒になります。また、自由コメント記入欄が小さく、記入しづらいとコメントを記入される確率が低下します。

 

アンケート調査のこうした特徴を理解していないために、本来得られるはずの重要な情報をみすみす失っている例は枚挙に暇がありません。

 

 

参考:成功するシニアビジネスの教科書 第4章  

いかにしてシニアのニーズを把握するか?―市場調査では見えてこないシニア市場

 

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