人の役に立つ、新たな喜びに:定年後に起業する④

朝日新聞 5月11日 Reライフ 人生充実 なるほどマネー

asahi150511前回に続き、起業テーマをどう選ぶかについてお話しします。今回は「他人の役に立ち、地域の役に立つ」テーマでの起業です。

福岡県に住むBさんは、仲間の退職者3人と便利屋を開業しました。Bさんは「60、70代はまだ元気なのに退職がやってくる。住んでいる地域の人たちとは面識もないため親しく話す人もなく、毎日が日曜日だ。退職者の中には、大工仕事が得意だったり、植木の剪定(せんてい)が好きだったりと様々な特技を持った人が大勢いる。これらの人材を活用しないのはもったいない」と感じていました。

一方、「地域には高齢者だけの世帯が増えている退職者たちとうまくマッチングできれば両者に喜ばれ、地域の活性化もできる」と考え、便利屋を起業して実践することに決めました。

Bさんらは「業者に依頼するほどではないものの、不便で困っていることはありませんか?庭の清掃、障子張り替え等々、相談に応じます」との案内状を作成し、地域に配布することから始めました。翌日から電話が鳴り、依頼が舞い込んできました。幸い、仲間の1人が水回りや大工仕事を現役時代に経験していたので助かりました。

便利屋を起業するにあたり、Bさんらは「お客さんからもらう人件費は1時間千円だが、時給は700円とする。材料費は原価としその合計に30%の諸経費を加える。人件費の差額300円と諸経費は会社で積み立て、道具類などの費用に充てる」としました。

また、「この仕事の報酬で生活費を賄うことはできない。地域の人たちに喜んでいただき、会話のある親しい町づくりに少しでも役に立ちたい。専門的な難しい仕事はお断りし、業者を紹介する。サービスの範囲は原則、自転車か徒歩で行ける距離とし、クルマを使っても20分以内の範囲とする」と決めました。

このように「自分たちの身の丈を超えることはやらない、起業の目的は生活費を稼ぐことではない」とはっきり決めています。起業に際し、こうした方針を明確にして相互確認しておくことが、後に人間関係を壊さないためにも重要です。

ある日、老夫婦から「家具の配置換え」の依頼がありました。足が弱ったために、歩きやすいように家具の配置換えをするというのです。Bさんともう1人で老夫婦の家に行き、仕事は短時間で終わりました。そこで、高い窓ガラスや電気の笠を拭いてあげたところ、おばあさんは正座してお礼を言われたとのこと。仕事が早く終わったのでついでにしてあげただけなのに、こんなに喜ばれ、恐縮してしまったといいます。

Bさんは現役時代の会社では直接顧客と接することがなく、自分が携わった製品が顧客にどのような気持ちで使用されているのか全くわかりませんでした。便利屋を起業してから、こうした感動や新しい発見がたびたびあるそうです。前回取り上げた買い物代行業のAさんも「お客さんに喜んでもらえる」のが何よりもうれしいと言っていました。定年後の起業では、他人の役に立つことをテーマにするとうまくいくようです。


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