今を大切に、それが最大の準備:定年後に起業する⑩

朝日新聞6月29日 なるほどマネー Reライフ 人生充実

asahi150629私はこれまで数多くの定年前後に起業された方を拝見してきました。現役時代にできなかったことを実現した方がいる半面、事業が軌道に乗らず、数年後に撤退した方もいます。成功する方は「定年前の過ごし方」に共通点があります。その中から四つのポイントを挙げましょう。

【自分の専門性を磨いておく】
身の丈起業であろうとも独立起業すれば何が自社(自分)の売りなのかが必ず問われます。現役時代に自分の専門性を磨き、「この分野なら誰にも負けない」という売りを持つことが重要です。

連載第3回で紹介したAさんの起業後の強みは、現役時代の食品会社で培ったバイヤーとしての専門性でした。確固たる自分の専門性があるとそれが土台となり自信を持って起業できます。

【現役時代に顧客と良い関係を築いておく】
連載第2回で述べた通り、定年後起業の基本は「顧客がいること」です。現役時代に取引先と良い関係をつくっておくと起業後も取引先になってくれる可能性が大きくなります。

現役サラリーマン時代は恐らく何千枚の名刺交換をすることでしょう。しかし、退職後起業した時、そのうちの何枚が本当に役に立つか。恐らく100枚に1枚役に立てば良い方ではないでしょうか。会社時代の縁は退職するとその多くが途切れるものです。

一方、会社時代の縁でも業務上のつきあい以上の関係性があると、退職後も続きます。会社についている縁なのか人についている縁なのかの違いです。現役時代から「人につく縁」を広げましょう。

【会社を辞める時は円満退職する】
起業後の最初の顧客が退職前の古巣になることはよくあります。ただし、これは退職前の職場との関係が良好な場合。連載第6回で取り上げたDさんのように、古巣の会社に企画提案したものの、全く受け入れられない場合もあります。Dさんはけんか別れしたわけではありませんが、実力不相応な提案をして後輩にあきれられてしまい、以降取引相手になってもらえませんでした。

前の職場での評判は必ず新たな取引先にも伝わり、思わぬところで足をすくわれることがあります。世間は広いようで狭い。定年後起業するなら円満退職が鉄則です。

【現役時代に会社設立の実務を経験しておく】
機会があるなら現役時代に会社設立の実務を経験しておくと定年後起業に役立ちます。会計・経理の実務や契約書など法務実務も起業後に有益です。これらは起業後に習得するのでも間に合いますが、起業直後はやることが多いので、可能なら現役時代に体験しておくと良いでしょう。

以上、定年後起業の成功の秘訣(ひけつ)は定年前の過ごし方にある、というお話をしました。しかし、現役時代が定年後起業の準備期間というわけでは決してありません。現役時代にビジネスパーソンとしての力量を磨いておけば、定年後起業の成功確率が高くなるということです。今の仕事を大切にすることが最大の準備になると心得てください。

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