新天地ではばたく

スマートシニア・ビジネスレビュー 2007年6月12日 Vol. 105

kuwata-pirates39歳のオールドルーキー、
大リーグパイレーツの桑田デビューは
久しぶりに爽やかなニュースだった。

結果は最初の回を三者凡退で退けたものの、次の回でヤンキースのAロッドにホームランを打たれ、2失点。
本人いわく「苦いデビューだった」。

桑田デビューと同じ日に、レッドソックスの松坂と
ダイヤモンドバックスのランディ・ジョンソンが投げあった。
27歳の松坂に対して、ジョンソンは43歳。

このジョンソンが、元中日の川相昌弘と3年前の正月に
日本のテレビ番組で対談したことがある。
対談当時、ジョンソンは40歳。川相は39歳。
どちらも野球選手としては「引退適齢期」と呼ばれていた。

ジョンソンは腰痛を抱えながらも未だ現役。
松坂との投げあいでも一枚上手であることを見せつけた。

一方の川相は、その後移籍した中日でセリーグ優勝に貢献し、
2006年の日本シリーズ終了後に選手生活にピリオドを打った。

野球に取り組む姿勢やそのプレースタイルから、
川相を信奉する選手は多い。

kawai-chunichiこの川相を慕っていたのが桑田だった。
二人は厳しいトレーニングを自らに課し、
求道的とも言えるほど自分を律する姿勢が似ている。

桑田は巨人時代、試合中のけがが原因で、
投手としての生命線である肘を痛め、
手術とリハビリのために何度も渡米した。

手術後、ボールが投げられない期間が続いたが
「ボールは投げられなくても、下半身は鍛えられる」と
ジャイアンツ球場の外野をひたすらランニングし続けた。

桑田が走り続けた部分は芝が剥げ上がり
「桑田ロード」と呼ばれるようになった。

その後、一時復帰するものの、徐々に精彩を欠いていった。
結局、20年在籍した巨人を事実上解雇され、
昨年ピッツバーグ・パイレーツとマイナー契約を結び、渡米。

開幕メジャー入りを目指していたが、
開幕直前に、三塁線上で主審に追突され
右足首じん帯断裂、戦列を離れざるを得なくなった。

約2ヶ月のリハビリ生活を終え、やっと試合に復帰したばかり。
当分はマイナーリーグだと誰もが思っていたところ、
予想外のメジャー昇格。
周りも本人も少し早すぎたメジャー昇格で
準備が足りなかったようにも見える。

それにしても、なぜ、桑田の大リーグデビューが
こんなに爽やかに感じたのだろう。

「本当に、こんな幸せなことってない。涙が出そう」
感極まるのを必死に抑えるように笑う姿が
逆にこちらの涙を誘う。

挫折してもくじけずに這い上がってきた
39歳のオールドルーキーの姿に、
私を含む中高年の人たちは、
自分の姿を重ねて見ていた人が多かったのではないか。

自分が一生懸命努力したというだけで
やっていけるほど大リーグは甘くない。
それはAロッドに初球ホームランを打たれた
桑田自身が一番わかっているだろう。

彼の本当の挑戦はこれから始まる。
だが、もしかしたら彼は
大リーグという新天地ではばたくのではないか。

なぜか、そんな予感がした。

ジョンソンと投げ合った松坂のいるレッドソックスに
最近めっきり注目されている日本人投手がいる。
岡島秀樹だ。

実は、この岡島は巨人時代からずっと桑田を慕い、
今も自主トレを一緒に行うほどの仲である。
巨人時代とその後の日本ハム時代は
制球力がいま一つで、正直ぱっとしなかった。

だが、新天地のレッドソックスに移籍した途端、
それまで隠れていた力が一気にあふれ出るように
花開き、活躍するようになった。

先の川相は選手生活を引退するときに
次の言葉を語っている。

「24年間の選手生活のなかで中日の3年間が最高だった」

桑田にも川相や岡島のように
新天地で花を咲かせて欲しい。
そう思った。

●参考情報

「リタイア」をリタイアして「男」を上げた男

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