超高齢社会に明るい未来を感じる瞬間

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第120回

「高齢社会」という言葉のイメージは、一般に明るくない。年金崩壊、医療費高騰、介護地獄、孤独死、老後難民、限界集落、極点社会・・・などなど、油断すれば暗い話の“オンパレード”だ。

国連の定義により高齢化率が21%を超える国は「超高齢社会」と定義されている。2016年9月時点で高齢化率27.3%の日本は、名実ともに「超高齢社会」であり、ますますネガティブな話題がメディアを賑わしている。

しかし、シニアビジネスの現場にいる私には、一見暗く思われがちな「超高齢社会」に明るい未来を感じる瞬間が多くある。そのひとつが、女性専用フィットネス、カーブスの年に一度のイベントに参加する時だ。

そのイベントは毎年12月の日曜日に開催される。年末の12月は、いろいろと予定が立て込んでおり、本来休息日である日曜日の早朝からのイベント参加は、正直言って辛いものがある。

ところが、だるい身体に鞭打って会場にたどり着くと、いつも目が覚める。広い会場全体を埋め尽くした20代、30代前半の若い女性の大群に遭遇するからだ。その数は、昨年末は6500人を超えていたとのこと。ここだけ眺めていると、日本が高齢化率で世界一の超高齢社会であることを忘れてしまいそうだ。

しかし、目が覚める本当の理由は別にある。それは、店舗を運営している若いスタッフの現場での生々しい体験発表を聴く時だ。

一つの店舗には、多い場合500人を超える顧客がいる。それを平均3人のスタッフで相手をする。スタッフの年齢は20代、30代前半が中心。この若いスタッフが50代、60代、70代のおばさまたちを相手に格闘しているのだ。なかには80代、90代のおばあさまも少なくない。まるで祖母と孫娘のような年齢差である。

ところが、実態は祖母と孫娘ではない。サービス提供者と顧客との関係だ。祖母と孫娘との間に許される甘い態度は通用しない。

あるスタッフは「あんたなんかに指導されたくないわ」と年配顧客に冷たく言い放たれ、悔しくて、毎日涙を流し、夜も眠れなかったという辛い思いをしたという。

若者にとっては、年齢が若いというだけで、能力を判断されたくないと思うだろう。ところが、年上の人間は、常に年下の人間を、「この若造が」と見る性向がある。

それでも、そのスタッフは、こうした悔しい思いをバネにして、粘り強く、あの手この手と工夫する。すると、ある日、体重が減った、健康になった、などの成果が出た年配顧客から、初めて「ありがとう、あなたのおかげよ」と感謝の言葉をもらう。「ああ、やっと、自分もコーチとして認められた」という実感が得られ、それまでの苦労が吹き飛んだという。

若干27歳で三つの店舗運営を任されている女性店長の話も印象的だった。店長になる前は、事務員の一人だったその女性が、もはや事務員ではなく、経営者としての目線と心構えを持ち、店舗経営についてしっかりと語っていた。普通の会社勤めなら単なるOLで終わるかもしれないが、店長になることで27歳の女性でも、こうもしっかりするものかと感服したものだ。

私はカーブスの若いスタッフのこうした話を聴くと、いつも心が温まる。それは、目の肥えたシニア顧客の厳しい要求に応えるべく悪戦苦闘しながら、20代、30代の若いスタッフが、しっかりと成長していく姿を感じるからだ。

20代、30代の若者が、50代以上の人に厳しく文句を言われ、怒られ、格闘しながらサービス提供する機会が、実は人間として成長できる機会にもなっている。これが、私がかねてより「シニアビジネスはシニアのためだけでなく、若者のためにもなる」と主張していることの別な意味である。

そして、このことを実感できる時、私は超高齢社会に明るい未来を感じることができる。「日本の未来は、決して暗くないと。」

成功するシニアビジネスの教科書
シルバー産業新聞社

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