百貨店や大型スーパーが苦戦する真の理由

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第121回

百貨店や大型スーパー(業界用語でGMSと呼ぶ)の苦戦が止まらない。百貨店については、数年前に中国人観光客が買い物目的に大量に押し寄せた、いわゆるインバウンド消費に支えられた時期は神風が吹いたように売り上げが伸びた。しかし、ブームが去ると以前のように業績悪化が目立つようになっている。

一方、GMSに至っては、インバウンド消費の恩恵すらなかったため、業績悪化が止まらない。こうした大型小売店苦戦の根本的原因は何だろうか?

毎月の消費支出は50歳以降では年齢が上がると共に一般に減少する。しかし、費目毎に見ると、減少するもの、増加するもの、変わらないものがある(図表)

実は支出が減少するものの代表は「被服および履物費」だ。1世帯あたり1ヶ月間の消費支出は、50代では12,541円だが、60代では8,998円、70代以上では6,455円と50代の約半分に減る。

60代以降に被服および履物費が減る大きな理由は退職によって仕事を辞めることだ。男性は会社勤めの時には必要だったスーツ、シャツ、ネクタイ、靴への支出が、退職すると激減する。

いくつかの調査によれば退職後男性の6割強が「自宅ひきこもり派」になる。つまり、外出機会そのものが減るので身づくろいに関わる出費が激減する。

女性の場合は、男性ほどではないが、仕事を辞めて外出機会が減るとやはり被服・履物への支出は減る。にもかかわらず、多くの百貨店やGMSでは未だに衣服売場が売り場面積の大半を占めている

少し前まで流通・小売業では「55歳以上をシニア」と定義する例がよく見られた。この理由は、流通・小売業界では、長年主要ターゲット顧客を、主婦を中心とする「19歳から54歳」までのファミリー層と定めており、それ以上の年齢層はひとくくりにシニア層と扱ってきたことによる。

高度成長期に業容が拡大したスーパーマーケット、ダイエーのかつてのキャッチフレーズは「主婦の店 ダイエー」だった。このキャッチに、この業界の主要ターゲット顧客に対する見方が示されている。しかし、人口動態のシニアシフトで退職したシニア人口が増えているのだから、いつまでも高度成長期の売り場構成のままでは、消費者からそっぽを向かれるわけだ。

前掲の通り、逆に50代以降年齢とともに増える出費の代表は「保健医療費」である。百貨店やGMSはもっとこの分野の売場構成、品ぞろえを充実しないとシニア客を逃がすことになる。

実はGMSなどは数年前からH&BC(ヘルス&ビューティ・ケア)というカテゴリーで売り場つくりを進めてきた。ところが、この売り場はたいていスーパーの食品売り場の隣にある。そのためか食品売り場の賑わいに比べると閑散として来店客がまばらで、実際赤字のお荷物になっている例が多い。

この主な理由は、多くの場合H&BC売場で販売されている商品の価格や品ぞろえが、専門店であるドラッグストアより劣っているからだ。また、比較的華やかでわくわく感のある食品売り場に隣接するせいでH&BC売場は雰囲気が辛気臭く感じるところが多い。

さらに、売り場間の連携が悪く、顧客への利便性が悪い例も散見される。例えば、イオンモール船橋にはDr.ランドというクリニックモールがあり、医者にかかりたい顧客にとって手軽に来店できて好評だ。

一方、処方箋薬はモールにあるイオンGMSのH&BC売場に行かないと入手できない。ところが、この売り場がクリニックモールからかなり離れておりとても不便だ。

グループ企業内の都合でクリニックモールのそばにH&BC売場を置けない事情があるようだが、もっと顧客視点での売場作りをしないと顧客からそっぽを向かれてしまうだろう。

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シルバー産業新聞社

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