エクスペリエンス・エコノミーとしての銀座の変貌

スマートシニア・ビジネスレビュー 20111020Vol.166

 

ginza-mitsukosi-matsuya昨日から長年のライバルだった銀座の三越と松屋が、

共同販促イベント「ギンザファッションウィーク」を始めました。

 

各メディアでは隣の有楽町に商業施設のオープンが相次ぐ中、老舗同士の強力タッグで銀座の魅力を高め、

顧客流出を引き留める狙いであると報じています。

 



百貨店の担当者は、有楽町にやってくる若年層を

百貨店にも取り込むのが狙いのようです。

 

しかし、老舗の百貨店が共同キャンペーンを張った程度では、

当初は多少話題にはなるものの、

その有効期間はそれほど長くないでしょう。

 

その理由は、銀座の百貨店の集客力が下がってきた背景が、

有楽町の商業施設やファストファッションの新興勢力に

客を取られているためではないからです。

 

むしろ、銀座で買い物をするという「体験の価値」が

昔に比べて変貌してきたことが、

より本質的理由だと考えられるからです。

 

experience-economyここで「体験の価値」について触れておきます。B・J・パインⅡとJ・H・ギルモアは、著書The Experience Economy(『〔新訳〕経験経済』ダイヤモンド社)において、顧客にとっての「エクスペリエンス(経験・体験)」という新たな経済価値を提唱しました。

 

この考えによると、顧客にとっての価値は、①コモディティ、②製品、③サービス、④エクスペリエンスの順に高くなります。たとえば、コーヒー一杯の価格は、コーヒー豆というコモディティの場合、カップ一杯に換算すると一~二セントにしかなりません。

それを加工業者が豆を挽いてパッケージングし、
製品としてスーパーで売るときには、
カップ一杯に換算すると、
五~二五セントで売れます。

 

さらに、その豆を使って淹れたコーヒーが

ごく普通のレストランや街角の喫茶店やバーで提供されるときには、

一杯につき五〇セント~一ドルとなります。

 

しかし、同じコーヒーでも五つ星の高級レストランやエスプレッソ・バーだと、

顧客は一杯につき二~五ドル払うのです。

 

注文するのも淹れるのも飲むのも、すべて心ときめく雰囲気や

舞台のセットのような空間の中で行われるからです。

(『〔新訳〕経験経済』ダイヤモンド社より)



現代はモノ余りの時代であり、すぐに競合商品が互いに真似しあい、

似たような仕様になります。

 

そして、商品差別化の猶予時間がどんどん短くなり、

その結果、最終的には価格競争になり、体力勝負に陥ってしまいます。

 

たとえば、旅行のパックツアーのような商品は、

すでにコモディティ化しており、激しい価格競争にさらされています。

昔は銀座での買い物には、

ハレの日の贅沢感を味わうという価値がありました。

銀座で高いものを買うこと自体に価値があったのです。

 

しかし、ユニクロやH&Mなどの新興勢力が進出し、

主要顧客層も中高年から若年層に広がりました。

 

これに伴い銀座で高いものを買うこと自体に

価値を見出す人の割合が減ってきたのです。

つまり、銀座もコモディティ化の波にさらされているのです。

 

こうしたコモディティ化競争から脱却するための一つの手段が

「エクスペリエンス」という経済価値を中心に据えた

「エクスペリエンス・ビジネス」なのです。


たとえば、ディズニーリゾートはその一例です。

ディズニーリゾートでは、個々のアトラクションやショーを

それぞれ単価いくらという商品として売っているわけではありません。

 

むしろ、そこでの非日常空間における心地よい、楽しいといった体験が

心に残ることが顧客にとっての価値になっています。


老舗同士のタッグにとどまらない、銀座での新たな体験を提供する

「銀座エクスペリエンス・ビジネス」こそが求められているのです。

 

 

●参考

 

見込み客には商品を売るな - 「商品」から「商品体験」へ

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