団塊市場の不思議

スマートシニア・ビジネスレビュー 2005年12月25日 Vol. 78

dankai最近、大手企業の経営幹部の方向けに
講演する機会が増えています。
それで改めて気がつくのは、各社の社長、
経営幹部の方々に団塊世代が多いことです。

ほぼ一年後の2007年から団塊世代の最年長者の方が60歳になる。60歳がこれまでの標準的な定年年齢なので、経営幹部に団塊世代が多いのは当たり前なのです。

しかし、お話をしていると不思議な感じがします。
その理由は、経営幹部の皆さんの反応が
話の途中から変わっていくからです。

最初は経営者の立場で話を聞かれているのが、
途中からそう遠くない時期に退職されるご自身のことに
話を重ね合わせていらっしゃるようなのです。

これまでは経営者にとって
会社が対象とする「市場」と
会社の構成員である「個人」とは
多くの場合、別のものだったようです。

これに対して団塊市場では、
自然に両者が渾然一体になってしまう。
つまり、商品を「売る立場」でありながら、
同時に「買う立場」でもあるのです。

outrander先日、三菱自動車の幹部の方とお会いした際、アウトランダーという新車が好調との話を伺いました。この新車は開発において団塊世代を意識したもので、特に車内のオーディオにこだわったものだそうです。


スピーカーのつくりや素材にこだわり、
自分の好きな曲を最も迫力をもって聴ける
イコライザーをつけるなどの工夫を凝らしたもので、
自分だけの「プライベート鑑賞室」のようなところが
受けたとのことでした。

注目すべきなことは、
この商品を設計した中心メンバーが
団塊世代だったことです。

室内スペースとコストの制約のなかで
「自分が買うなら、こういう商品が欲しい」という思いを
実現させるのは並大抵のことではなかったでしょう。
だからこそ、逆に「つくり手の思い」が深く込められた
商品になったのだと思います。

モノ余りの時代に生きる現代の消費者は、
特にクルマのような嗜好性の強い商品の場合、
気になることへのこだわりが強いため、
中途半端な品質では受け入れられません。
だから、オーディオにこだわる人が商品をつくると、
同じこだわりをもつ人に共感されやすくなるのです。

このように「売る立場」と「買う立場」とが混在する
団塊市場では、商品の「使い手」が「担い手」になると
売れやすいということです。

一方で、この新車のデザイン自体は、
パジェロ等に比べるとオーソドックスで物足りない、
という人も少なくありません。
特定の顧客層に絞れば絞るほど、
その顧客層以外の層に売れにくくなるジレンマです。

でも、これからの時代のクルマの作り方は
これでよいのではないかと思います。

つまり、誰にでも受けそうなモノではなく、
こんなクルマが好きな人に楽しんでもらいたい、という
「作り手の思い」が込められたクルマこそが、
顧客に支持されると思うからです。

そうした個性的なクルマつくりの延長上にこそ、
予想外の多くの顧客層にも受けるヒット商品が
生まれてくるのではないでしょうか。

団塊市場向けというと、
あたかも団塊世代という特定の顧客層が
存在するかのような錯覚も少なくありません。

しかし、団塊世代という固有の人格は存在しません。

現在のような経済成熟の時代には、
団塊世代であるという「世代(コーホート)効果」より、
好みや懐具合などの「個人の都合」の方が
消費行動に大きく影響するのです。

「団塊世代はこうなる」というのは、もはや通用しない。

そういう市場の時代に入ったことを
まずは認識すべきなのでしょう。

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売れる商品は顧客につくってもらえ - 「使い手」から「担い手」へ

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