シニア向けリフォームのメリットは節約、介護予防、認知症予防

Hyas PLAZA Vol.23

シニア市場にはどの程度潜在力があるか

本日お話しする「シニア」の言葉の定義は60歳以上の人、そして「シニア市場」とは60歳以上の人が商品・サービスの使い手である市場だとご理解下さい。

シニア市場の規模は、「60歳以上消費額の推計と家計消費市場全体における割合(出所:ニッセイ基礎研究所)」によると約105兆円です。

シニア市場の特徴

シニア市場について4つの俗説をお話しします。1つ目は60歳以上の資産が多いことから「シニア層は他の年齢層よりもお金持ちである」という説です。

ちなみに「世帯主の年齢階級別 正味金融資産(貯蓄−負債)」を見ると1世帯当たり平均値は70歳以上が一番大きく約2,350万円、次いで60歳代の約2,100万円です。

確かに資産は多いのですが、実はシニア層の多くは年金生活のため他の年齢層よりも所得が少ないという特徴があります。ストックリッチだがキャッシュプアが平均的特徴です。

2つ目は「資産が多いから日々の消費も多い」という説です。実際には日常消費は所得にほぼ比例しており、シニア層の日常消費は必ずしも多いわけではありません。

3つ目は「シニア層の消費は年齢で決まる」という説です。この様に思いたい経営者は小売業などのマス・マーケティング志向の強い業界に特に多いです。

実はシニア層の消費は年齢ではなくシニア層特有の変化で決まります。シニア層特有の変化とは、体の変化、個人や家族のライフステージの変化などです。

4つ目は「人数の多いシニア市場は巨大なマス・マーケットである」という説です。実はシニア市場は「マス・マーケットではなく多様なミクロ市場の集合体」です。

先ほども言いましたがシニア層はシニア特有の変化で消費行動が変わり、その変化の要因が若い層と比べて多いので一様な市場を形成しません。少しずつ性質が違うミクロ市場の集合体になります。

したがってシニア層をターゲットにしたリフォーム市場があるとしても求められるリフォームの市場はターゲットとするシニアによって異なります。

ハウスINハウスが提供する断熱という省エネルギー商品は、それを求める人が平均よりも少し環境意識の高い方であり、単にシニアとひとまとめにしたマス・マーケティングを行うのではなく、意識の高いターゲットを狙いすましたきめ細かいアプローチが有効です。

シニア市場のビジネスチャンスをつかむ秘訣は「不の解消」

はじめに結論を申し上げると、シニア市場のビジネスチャンスをつかむ秘訣は「不の解消」です。

シニアが抱える「不」は3つあります。健康不安、経済不安、孤独不安です。この3つの頭文字を取って私は「3K不安」と呼んでいます。これを解消するサービスを提供できるかがシニアビジネスの勝負どころです。

3K不安を上手く解消することで成功したシニアビジネスの例をご紹介します。女性専用フィットネス「カーブス」です。日本導入当時、フィットネス市場は参入会社が多く、市場として飽和状態にあると見られていました。

それまでのフィットネスジムは若い層に「痩せたい、外見を良く見せたい」という目的で利用されていましたが、健康オタクが使うものというイメージが強く、利用者も限られていました。

それに対しカーブスは主に50代と60代の女性から「健康になりたい、要介護になりたくない」という目的で利用される新しい市場を切り開き大成功しました。

この事例の成功要因を分析すると、中高年女性にとっての従来のフィットネスにあった高額な会費、男性の目、利便性が悪い、化粧をする手間がかかるなどの「不」を1つずつ解消していったことが挙げられます。それによって飽和市場と考えられていたフィットネス市場で新しい顧客層の開拓に成功しました。

カーブスの2018年8月30日時点の店舗数は1,912であり、業界2位の同業者の店舗数は2桁台なのでそれと大差をつけています。これも福島さんが仰った「ファーストムーバーアドバンテージ」ではないかと思います。

和していたと思われていたフィットネス市場は実は飽和しておらず、飽和していたのは我々の頭の方であり、フィットネスクラブをやめてしまった人、商品を買わなかった人が何故やめたのか、買わなかったのかという理由、不満にビジネスチャンスが眠っていたのです。

シニアを対象にしたリフォームのメリットは節約、介護予防、認知症予防

シニアを対象にした断熱リフォームのメリットは省エネルギーと省マネー、つまりエネルギーとお金の節約に繋がる点です。しかし、実はリフォームには、これ以外のメリットがあります。

要介護認定率は70代後半では14%ですが、10歳年を取る 80代後半では51%に上がります。ここでの問題は、要介護になった人の多くが「自分は要介護になると思っていなかった」ことです。

要介護になるきっかけとして自宅での事故が多いのですが、それを先回りして自宅で事故を起こしにくい様にリフォームをすることで介護予防に繋げられることもリフォームのメリットです。

また認知症予備軍の人の認知機能を高め、認知症予防につなげるメリットもあります。具体的には、料理をすることが脳の前頭前野をはじめ多くの部位をとても賦活(活性化)することが東北大学の研究で分かっています。

複数人のグループで食事をすると会話などコミュニケーションが増えることで、脳は一層活性化します。老人ホームに入ると急にぼける人がいますが、理由の一つは料理をしなくなるからです。

古びたキッチンのリフォームによって料理を作りたくなる環境に変え、綺麗になったダイニングに友人を呼んで一緒に食事する機会が増えれば、それが認知症予防に繋がるのです。

シニアを対象にしたリフォームのメリットはエネルギーとお金の節約、介護予防、そして認知症予防に広がります。

人生100年時代が来てシニア層が不安に思う「お金や健康」の問題を解決出来るリフォームは、こうした時代意識に敏感なシニア層を取り込んで新しい市場を切り開けると思います。