ニューロフィードバックを応用した新しい脳トレの登場

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第140回 

最近、東北大学の研究をもとに、新たな手法による脳トレ(トレーニング)が登場した。それは「ニューロフィードバック型脳トレ」というものだ。

自分の脳活動状況をリアルタイムで計測できる

ニューロフィードバックとは、自分の脳の活動状況を自分でリアルタイムにモニターして、意識的に脳の活動を調節する手法のこと。自分の生体情報をモニターして自分の身体活動を調節する「バイオフィードバック」という手法は以前からあり、その脳神経(ニューロ)活動版がニューロフィードバックである。

ニューロフィードバックは、従来うつ病や注意欠陥・多動性障害(ADHD=多動性や衝動性、不注意などの症状を特徴とする行動障害)といった精神疾患の治療法として研究されていた。そのため用途は医療用がほとんどだったが、今回初めて東北大学がこれを脳トレに応用した。

ニューロフィードバック型脳トレは、「超小型NIRS(近赤外光計測装置)」という装置とスマホを使って行う。NIRSは、赤外線よりも波長がやや短い近赤外光を活用して、大脳の活動状況をリアルタイムに計測する装置だ。

手のひらを太陽に透かすと赤く透けて見える。これは近赤外光が血管を流れる血液中の赤血球に当たり、反射しているからだ。NIRSはこの原理を使っている。

脳のある部位が賦活(活性化)するとその部位の神経細胞周辺の血流が活発になる。この血流の変化を計測することでその部位の神経細胞の賦活状態を計測できる。この原理は日本人研究者が考えたもので、NIRSの技術は世界で日本が一番進んでいる。

NIRSのメリットは、CT(コンピューター断層撮影)のようにX線を使わないため、放射線被ばくがないことだ。このため乳幼児や子どもの脳の計測も可能だ。

また、CTや機能的MRIに比べてはるかに低コストである。さらには、CTや機能的MRIに比べて小型軽量化が可能で、病院や研究施設以外の日常の生活空間で計測可能なことも大きなメリットだ。

なぜ、ニューロフィードバックで認知能力が向上するのか?

従来のNIRSは、頭に多くのセンサーが取り付けられ、そこから多数のケーブルが伸び、それがそばにある計測装置につながっている大掛かりなもので、実験室の中でしか使えなかった。

最新の超小型NIRS「XB-01]

その不便をなくすために、東北大学と(株)日立ハイテクノロジーズとの産学連携で改良に取り組み、ケーブルをなくしてヘアバンドのような形状に小型化した超小型NIRSを開発し、15年に商品化した。

両者は17年8月に大学発ベンチャーとして(株)NeU(ニュー)を設立し、18年10月に、さらに小型軽量化したNIRS「XB-01」を商品化した。

新しい超小型NIRSは、パッチのような形状の計測装置を額に貼り、頭に巻くバンダナで固定して計測できる。これを使えば、自宅やオフィスなど日常生活空間で自分の脳(前頭前野)の活動状態をスマホで見ることができる。

NIRSを頭に装着し、スマホにインストールした脳トレのプログラムを行うと、前頭前野の活動の様子がスマホに表示され、活性化レベルをリアルタイムでモニターできる。

それを見ながら、脳活動をさらに活性化させようと思ったら、脳トレアプリを通じて内的(精神的)な努力をする。そうすると脳がさらに活性化する。この仕組みによって、より高い認知機能向上効果が得られるのが、「ニューロフィードバック型脳トレ」の特徴だ。

この脳トレを継続して行っていくと、年齢にかかわらず、若い人でも50歳過ぎの人でも、トレーニング効果が出る。ただし、若い人の方が、効果が出やすいようだ。これは、脳の「可塑性(かそせい)」という、脳の神経ネットワークが再構成したり新生したりする力が、若い人の方が強いからだ。

自分の脳の活動状況を日常生活空間で計測できる時代となった。高齢者住宅や介護施設の居住者向けの健康増進サービスとして活用しても面白いだろう。

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シルバー産業新聞社

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