旧態依然として「不」が多い市場を狙う

ビジネス切り口別
不便な家電リモコンの例

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第26回

補聴器市場は供給側が利用者の「不(不安・不満・不便)」が多い市場

有望なシニア市場の例のひとつは、需要側が変化しているのに、供給側が旧態依然としていて利用者の「不(不安・不満・不便)」が多い市場です。この市場の代表が補聴器市場です。

補聴器はドイツやデンマークなどからの輸入品が多く、今でも一台35万~50万円という高価格で売られています。

にもかかわらず、「雑音が多い」「耳に閉塞感を感じる」「フィッティング感が悪い」「頭痛がする」などの理由から、使用をやめてしまう人が結構多いのです。

補聴器という商品の最大の問題点は、しばらく使ってみないと本当に自分にフィットしたものかがわからない点です。

そのためにはまず購入の必要がありますが、価格が高価過ぎます。最近は体験レンタル制度も一部登場しましたが、せいぜい1週間。自分に合っているかがわかるには短すぎます。

家電製品のリモコンもシニア利用者の不満が多い

供給側が旧態依然として利用者に不満がある他の例として、家電製品のリモコンがあります。どのリモコンもボタンの数が多く、配列がまちまちです。しかも、ボタンのサイズも文字も小さくて、老眼気味の人には操作しづらいものがたくさんあります。

家電製品のリモコンの数は莫大です。このため業界の統一規格を作り、どれを使っても共通に、誰もが簡単に使えるリモコンがあれば、シニア利用者の満足は大きくなるはずで、日本企業の競争力も上がるでしょう。

固定電話もその一例です。携帯電話やスマホはどんどん機能を増やして進化していますが、その反面、固定電話機は進化がほとんど止まっています。

スマホ優位の時代で、もはや固定電話は死んだ市場と思われているため、メーカーも固定電話の開発・改良には金も力も注がないのでしょう。

しかし、シニア層にはまだまだ固定電話派が多いことを忘れてはいけません。たとえば、携帯電話やスマホでは当たり前の電話帳を簡単に変換できる機能や「らくらくホン」では当たり前だった「はっきりボイス」などのすでに存在する使いやすい機能を盛り込むだけで、容易に高付加価値化が図れ、ヒットは間違いなしでしょう。

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