その商品でストレス減る?

2020年1月24日 日経MJ連載 なるほどスマート・エイジング

日経MJ シニアBIZに連載「なるほどスマート・エイジング」が掲載されました。連載第10回のテーマは「その商品でストレス減る?」

ストレス社会の現代では「事務的ストレスを低減する」などと謳った商品が急増しています。しかし、そうした商品に本当に効果があるかはかなり疑問です。

それがなぜか、どうすればストレスを解消し、すっきりした気分になれるかを解説しました。
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ストレス社会の現代は、ストレス解消型の商品が求められている。これを反映して「精神的ストレスを軽減する」などとうたった食品、サプリメントが市場に多数見られる。

これらの商品にはGABAという脳の興奮を抑える抑制系の神経伝達物質が機能性関与成分として含まれていることが多い。

だが、連載第5回で説明した通り、GABAは脳内でしか生成されず、口から食べても脳の「血液脳関門」を通過できないため、脳に成分が到達せず、効果がない。

一方、「意図的に気分をスッキリ」させることができれば、精神的ストレスを軽減できる可能性がある。

その一つのカギが「罰系(ばつけい)」と呼ばれる脳のネットワーク機能だ。
罰系とは扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる脳の中枢を核として恐怖や不快情動に関係する神経ネットワークだ。

例えば、暗い夜道を一人で歩いている時に、物陰から突然不審者が目の前に「わっ」と現れたり、山道を歩いていたら急に大きな蛇が出現したりした時に罰系が働く。人間を含む動物の防衛本能に直結する機能だ。

罰系が活性化すると、それに反応して逆に恐怖や不快感を抑制しようと「セロトニン」という調節系の神経伝達物質が脳内に分泌される。

セロトニンは目覚めや睡眠など様々な生体機能を調節する役割を持っているほか、不安を抑制し、負の記憶が過剰に形成されるのを抑制する機能がある。

この罰系の特性をうまく利用して脳内のセロトニンの分泌を促すと「気分スッキリ商品」になる。典型的な例は「お化け屋敷」だ。これは映像や音響、からくり、役者などを駆使し、利用者に対して幽霊や怪物に対する恐怖を疑似体験させるものだ。

前述の通り、恐怖を体験すると、罰系が活性化し、これを抑制しようとしてセロトニンの分泌が促される。興味深いのはお化け屋敷を出ると恐怖感はなくなるが、脳内にセロトニンがしばらく分泌し続けるため、スッキリした気分になることだ。お化け屋敷以外に劇場でのホラー映画鑑賞も似たような商品だ。

もう一つの例は「バンジージャンプ」だ。これは幽霊や怪物による恐怖体験ではなく、高所からの急速な落下という恐怖体験だ。

こちらの場合もジャンプが終われば恐怖感がなくなるが、セロトニンの分泌がしばらく続くので体験が終わるとスッキリする。高速で急激降下のあるジェットコースターも似たような商品だ。

ここに上げた恐怖疑似体験型の商品は、高血圧の方やパニック障害などの精神疾患をお持ちの方には事前に健康状態のチェックをするなどの注意が必要だ。

だが、効果が認められない食品やサプリメントの摂取よりも効果を自覚しやすい商品と言えよう。

東北大学スマート・エイジング・カレッジ(SAC)東京では、毎月二つのコースで月例会を開催し、最先端の研究動向とそれに関連するビジネスヒントを提供している。

実は今回のテーマの罰系ビジネスは昨年12月の月例会で議論したものだ。参加企業からは「顧客の消費行動を脳科学的に分析するのは、ここでしか学べない貴重な経験だった」「報酬系・罰系の脳のメカニズムをビジネスと関連付けた知見が得られた」など多くの評価の声を頂いている。

1月29日に東京・日本橋で第6期説明会を開催するのでご興味のある方はぜひ参加ください。

東北大学スマート・エイジング・カレッジ(SAC)東京

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