魔法の鏡 非接触でその日の体調を定量評価

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「魔法の鏡」での計測風景

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第162回

非接触化は必要だがコスト要因

ついに東京都でもコロナ禍による営業短縮要請が解除され、飲食店、小売店、娯楽店舗などが通常に近い営業を再開している。

多くの店舗で感染予防のためにマスク着用・入店前消毒の義務化、入店時の体温計測に加えて、客席どうしの間隔を空ける、一度に入店できる人数を制限するなどの「非接触化」対策が新常識となった。

例えばカラオケ店では室内で客同士が1mずつ間隔を開けて対面にならないようにする、個々のマイクに飛沫を防ぐための「マイクマスク」を取り付けて別の人に渡す際に交換する、などもルール化した。

また、一部レストランでは配膳ロボットを導入し、店員による接触を最小化するなどの非接触化策をこうじている。

多くの店舗型事業では、こうした非接触化策により安全性をアピールして、客の来店を少しでも復活させることが当面の重点だ。

一方で、こうした非接触化策は店舗面積当りの営業効率を下げることになる。ウイズコロナの時代には感染リスク低減策は事業者なら「やって当たり前」のことだ。

だが、これだけでは同業他社との差異化にはならない特に収益面ではコスト要因でしかない。したがって、中長期的には「非接触化」でも収益性を確保し、他社との差異化のある事業構造が不可欠だ。

求められる非接触で高付加価値

従来面積効率を最大の価値基準としてきた店舗経営は新たな価値軸が必要となる。そのヒントとなるのが東北大学の吉澤誠教授らが開発した「魔法の鏡」だ。

私たちは通常毎日、洗面台の鏡を利用する。朝シャワーをする人はシャワーの前後に利用するだろう。女性であれば洗面台以外に自室の化粧台の前でメイクをするなど必ず鏡を利用するはずだ。

「魔法の鏡」では、こうした毎日行う「鏡を見る」というルーチン動作の際に、鏡の中に埋め込んだ「非接触センサ」(ビデオカメラ)で利用者の身体映像を撮影する。すると映像情報を瞬時に解析して、その人の心拍数や血圧変動状態、自律神経の状態などを定量評価して知らせてくれる。

体調不良の原因の一つとして、自律神経機能の低下があり、脈波(みゃくは)から得られる自律神経指標がそれを表すとされている。

特に、不定愁訴(動悸、息ぎれ、発汗、めまい、頭痛、吐き気、食欲不振、不眠、手足のしびれなどを訴えるもの)のような自律神経に関係する症状は、自覚できても自分で客観的に把握するのは難しい。

ウェアラブル機器の課題は煩わしいこと

一方、近年家庭や職場で健康状態を常時モニターすることを目的に、多くの IT 企業がリストバンドや腕時計型のウェアラブルセンサを開発している。それらのほとんどは、光電脈波センサや加速度センサのような「接触式」センサによって、心拍数や活動度などの健康関連指標を得るものだ。

だが、こうしたセンサを常時身に付けることは煩わしく、利用を始めても途中で止めてしまう人が多い。一方、「魔法の鏡」を用いると、身体に何のセンサも着けることなく、非接触で自律神経や血圧変動の状態などを手軽に測定でき、毎日の体調管理が容易となる。

システムの基本原理は、血液中のヘモグロビンが緑色をよく吸収するため、身体映像の緑色成分の輝度情報から脈波信号が抽出できることを応用したものだ。

映像から得られる脈波信号(映像脈波)は、指先などに取り付けた光センサから得られる脈波信号(光電脈波)と等価のため、従来光電脈波から算出されていた自律神経指標を映像脈波から容易に得ることができるのだ。

コロナ禍で非接触エコノミーと呼ばれる経済活動が新常識となりつつある。だが、通常の「非接触化」対策はどの事業者もやって当たり前の義務でしかない。これから必要なのは「非接触」だからこそ価値の上がる商品・サービスだ。

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