シニアにはスマホよりタブレットが本命である5つの理由

2012810日号シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第65

シニアにはスマートフォンよりタブレットが有用

シニアをターゲットにしたスマホ「らくらくスマートフォン」がいよいよ8月から発売される。

しかし、私はシニアにはスマホよりタブレットの方が有用と考えている。その理由は、従来のIT機器が抱えていた使いにくさを次の通り解消しているからだ。

  1. 携帯電話よりもスマホよりも画面が大きい。だから字が大きくて見やすく、文字も入力しやすい。
  2. パソコンよりも操作が簡単。指先でタップするだけで大抵のことが可能であり、キーボード入力が不要。
  3. 電源を入れた後の起動がパソコンよりもはるかに速い。使いたい時に待たされることなく、すぐ使用できる。
  4. 一般にノートパソコンより薄く、軽く、持ち運びが楽。
  5.  購入価格もノートパソコンよりも一般に安い。今後はスマホよりも安くなる可能性も大きい

これらのメリットから、近い将来、現状のパソコンで可能なことがタブレットでもできるようになれば、既存のパソコン利用者のかなりの割合は、タブレット利用者になっていくと予想される。

 タブレットは女性・シニアのIT弱者に有利

半歩先の団塊_シニアビジネス120810_2一方、こうしたメリットのため、これまであまりパソコンに縁のなかった人やパソコン利用を躊躇していた人もタブレット利用者になる可能性が大きい。特に携帯電話は使ってもパソコンは使わない女性やIT機器の使用に無縁だったシニアがその対象となる。

とりわけ、シニアに対しては、1)のメリットは大きい。「らくらくスマートフォン」では、画面上のボタンを見やすくてシンプルなメニュー構成にする、などの工夫が施されている。

だが、一般のウェブサイトにアクセスし、文字入力を要求された場合は、もはや「らくらくスマートフォン」の制御範囲外となる。恐らく入力画面は小さくて見づらく、老眼の人には操作困難になるだろう。

スマホでは二本の指で文字を拡大できるようになっているが、拡大できても画面自体が小さいと文字入力は面倒だ。こうしたことを考慮すると、スマホよりも画面の大きいタブレットがシニアには有利である。

また、2)と3)のメリットは、アップルのiPadが開拓したもので、タブレットが普及した成功要因だ。実際に使用してみないと実感しにくいが、従来のパソコン操作の煩わしさ、不便さを解消したものである。

さらに、退職後、主たる収入源が年金になる人にとって5)のメリットも重要だ。現状でもタブレットの価格は五万円を下回っており、一般のノートパソコンよりも安い。

だが、グーグルが七月中旬から販売を始めたGoogle Nexus 7は、画面サイズが7インチと小さめだが、最低価格が199ドル(日本円で約16,000円)と低価格であり、価格面での購入のしきいは、今後ますます低くなるだろう。

IT弱者が利用しない3つの壁のクリアが必要

シルバー向けiPad教室_出所:japan.internet.comただし、IT機器を利用しない人には、次に挙げる「利用しない3つの壁」があり、今後のタブレットの普及においては、これらのクリアが不可欠だ。

壁1:タブレットという機器の存在を知らない。
壁2:使ってみたいが費用が高いので自分には使えない、と思っている。
壁3:使う必要性を感じていない。自分には用事がないと思っている。

壁1については、知ってもらうための告知に工夫が必要だ。一般にシニアは新聞に対する信頼度が高いので、新聞広告による製品の告知に注力するとともに、記事の形でタブレットの有用性を伝えることも有効だろう。

壁2については、前述のとおり初期費用は安くなってきているので、月間費用もそれほどの負担にならないことをもっと訴求することだ。現状でも、自宅での利用がほとんどの人の場合、Wi-Fi環境さえあれば、携帯電話網である3G回線やLTE回線などを利用する必要がないので、月額費用は3千円台に抑えることはできる。

絶対に使いたくなる用途開発がシニアの普及のカギ

壁3については、絶対に使いたくなるキラーサービスの開発が有効だ。大阪の「さんきん」という食品スーパーでは、保証金5千円でiPadを無料でレンタルする「おつかい倶楽部」というネットスーパー事業を始めた。

「おつかい倶楽部」指定のネットスーパーで月1万円以上購入するのが条件だが、何らかの理由で買い物が困難なシニアにとっては不可欠なサービスとなろう。

こうしたシニアの「不(不安・不満・不便)」を解消する用途開発が、タブレットのさらなる普及を後押しするだろう。