家族のライフステージの変化で消費はどう変わる?

販促会議6月号 連載 実例!シニアを捉えるプロモーション 第四回

hansokukaigi1306シニア本人の消費は「家族のライフステージの変化」にも大きく影響を受ける。この変化には配偶者の退職、子供の巣立ち、親が入院・要介護状態になることなどがある。特に影響を受けるのは夫、子供、実親、義理の親がいる妻の消費行動である。今回はこうした「中高年の妻」の消費行動に焦点を当てる。

 

1.夫が退職しても妻の自由時間が増えるとは限らない

 

夫が退職すると妻は自分の自由時間が増えるものと予想しがちだ。だが、現実にはそうとは限らない。図表1は、くらしHOW研究所が50代、60代の女性を対象に「5年前に比べて自分の時間が増えたと感じるか」を調査したもの。すでに夫が退職している妻の場合、「増えた」と答えた人が41.8%なのに対し、「減った」と答えた人が31.6%となっている。これより夫の退職で妻の自由時間が増えるとは必ずしも言えないことがわかる。

 

なぜ、夫の退職で妻の自由時間が増えるとは限らないのか。その理由は、退職後に自宅にいる時間が長くなる「自宅引きこもり派」が結構多いからだ。図表2は、「1週間のうち、夫が家にいるのはどの程度か」の調査である。これによれば「ほぼ毎日家にいる」が38.5%、「家にいる方が外出より多い」が25.0%で、両者を足すと何と63.5%の夫が「自宅引きこもり派」なのである。

2.夫が「自宅ひきこもり派」の場合、「食事の手間」を減らしたい

 

会社を辞めた途端、「夫がずっと家にいて、朝から晩まで一日中テレビがついている」とこぼす妻は結構多い。こうした「自宅ひきこもり派」の夫がいる場合、妻が一番負担に感じるのは「食事の手間」が増えることだ。「お願いだからお昼だけは外で食べてほしい」と夫に頼む例も多い。また、夫に料理の仕方を教える人もいるがマスターするまで3~5年かかったという例も少なくない。年齢層が若くなるにつれて、男性でも料理する割合は増えていくが、団塊世代以上の年齢層では、まだ少数派なのが現状だ。

 

senior_4このような状況から、最近「中食(なかしょく)」市場を狙った動きが増えている。中食とは、総菜やコンビニ弁当などの調理済み食品を自宅で食べることをいう。イオンの「レディーミール」、セブン&アイの「セブンプレミアム」、ローソンの「ローソンセレクト」などスーパーやコンビニが小容量の煮魚や煮物など中高年が好む商品開発に注力している。手間はかからないが価格も高くつき、栄養バランス面からも頻繁にはできない「外食」と、美味しくて栄養バランスも良いが手間のかかる「内食」との「いいとこどり」をいかに実現するかが勝負となる。

 


3.夫が「外出派」の場合、妻と共に行動するかで消費行動が分かれる

 

夫が比較的外出を好む場合、妻と一緒に行動したがるか、別に行動したがるかで、妻の消費行動は異なる。前者の場合、旅行は常に夫婦一緒、美術館や博物館へのお出かけ、映画、演奏会なども一緒に行くため、消費の意思決定には夫の意見が尊重されやすい。また、消費行動一回当たりの単価は常に二人分であり、高めになる。

 

一方、夫と妻とが別行動を取りたがる場合、妻の「自由度の高い」消費行動になる。たとえば、おひとり様専用の旅行、女性グループ同士の旅行や食事会、スポーツジム通い、カルチャーセンター通いなどが増える。これらは、これまで夫の面倒や子育てなどの「拘束からの解放」がきっかけの、新たな「時間消費」の形態である。

 

たとえば、クラブツーリズムの「おひとり参加限定の旅」は、参加者全員が一人での参加が条件のパッケージツアーだ。以前「クラブララ」と呼んでいた頃から6万人の会員がいる人気商品である。興味深いのは、夫がいる妻でも「夫と一緒に旅行してもつまらない」といって参加する人がそれなりにいることだ。

 

4.夫の親に介護が必要になると介護従事者になる妻に負担が集中する

 

家族のライフステージの変化のうち、最も肉体的・精神的に負担の大きいのは、親の介護。夫が仕事をしている場合、多くの負担が妻にかかり、これが消費行動を大きく変える。たとえば、介護のために自由時間が激減するため、食事や家事などに費やす時間の短縮化が必要となる。このため、中食、食材や弁当の宅配、家事代行などの「省時間需要」が増える。これに伴い、利用登録者が27万人を超えたワタミタクショクやレストラン・エクスプレスなどの食事宅配、ヨシケイやタイヘイなどの食材宅配などの分野に市場参入が相次いでいる。

 

今後は介護従事者の「時間負担」だけでなく、長期間介護に従事せざるを得ないことの「精神的負担」を和らげ、ストレス解消につながる「介護従事者支援サービス」が求められていく。たとえば、映画や演奏会での息抜きとその間の介護代行サービスがセットになったものなどが望まれるだろう。

 

5.夫婦ともに、いつ要介護状態になるかは想定外のことが多い

 

要介護状態になった人に尋ねると、多くの場合、まさか自分が要介護状態になるとは思っていなかった、と答える場合が多い。要介護状態になる理由は、脳卒中(脳こうそく、脳出血など)や認知症などの脳疾患か関節などの運動器障害や転倒による骨折がほとんどである。ところが、詳細に追跡すると、倒れる前の段階に何らかの予兆が見られているのだが、本人は気づかないか、気づいても「自分は大丈夫」と思い込んでいた例が多い。こうした背景から、配偶者が要介護状態になるのは、想定外の大地震が起きるようなものなのだ。

 

とりわけ退院後に自宅での介護となった場合、手すりの取り付けや段差の解消、浴室の転倒防止などのバリアフリー工事から、重度の場合は介護居室への引っ越しと介護ベッドの設置、電気工事、道路から居室までの舗装工事、ポータブルトイレの設置、空気清浄器やエアコンの取り付けなど多くの作業が発生する。

 

したがって、商品・サービス提供者は、当該顧客が自立して生活できる段階から自社に適切な商品・サービスがあることを認知してもらうこと、要介護認定後に担当のケアマネジャーから居宅介護事業者として指定してもらえるよう、良好な関係構築と商品・サービスの告知をまめに行うことが重要だ。

 

 

参考:シニアシフトの衝撃 超高齢社会をビジネスチャンスに変える方法

 

 

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