シニアの利便性に特化した店・売場づくりを

日販通信10月号 特集 シニアが喜ぶサービス・商品・店づくり

表紙日販通信は日販(日本出版販売株式会社)が発行する全国の書店向け月刊誌。日販は、書籍・雑誌の流通を担う国内最大の出版販売会社(出版取次)です。

 

シニアシフトはあらゆる業種に影響を及ぼしていますが、小売店としての書店にも当然その影響が表れています。

 

今回のインタビュー記事は、書店においてシニアシフトをどのようにビジネスチャンスに変えていくべきかを語りました。以下、インタビュー記事全文です。

 
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シニアビジネス・高齢社会研究の第一人者として、多くの民間企業の新事業開発や経営などに参画している村田裕之氏。昨年刊行の著書『シニアシフトの衝撃』(ダイヤモンド社)では、2012年以降の構造的なシニアシフトを提起し、シニアマーケットの重要性を論じている。そのビジネスチャンスを書店でどう活かすべきなのか。シニアビジネスのトレンドやサービス、店づくりのポイントについてお話を伺った。

 

■シニア時代到来でマーケットは急速に拡大

 

ご著書タイトルにあります「シニアシフト」について教えていただけますか。

 

シニアシフトには2つの意味があります。1つは、「人口動態の変化」です。以前の日本の人口構成は若者中心でしたが、現在、人口の山は60~65歳の高齢者層にシフトし、生産年齢人口よりも高齢者人口が増加する傾向にあります。もう1つは「企業活動の変化」です。企業がターゲット顧客の年齢を若者中心からシニアにシフトしてきています。この動きの最も先鋭化している国が日本といえるでしょう。

 

シニアシフトの流れが顕著に現れてきた時期やその理由を教えてください。

 

2011年末頃からシニアシフトの流れが加速してきています。それは、団塊世代の一番上の人たちが2012年に65歳になり、リタイヤされる方が増えてきたことも影響しています。しかし一方で、65歳を過ぎても働き続けたいと考えるシニアも増えてきています。

 

今、すでにリタイヤしたシニアの消費市場と、不安定な社会情勢の中で稼げるうちは稼ぎたいというシニアの労働市場の問題が同時に起きています。これにより、社会全体でシニアの存在が目立ってきたことが理由だと考えています。

 

最近のシニアマーケットにおいて、具体的にどのような動きがみられますか。

 

スーパーやコンビニ、ドラッグストア、百貨店など、特に小売業がシニアシフトに力を入れています。まずスーパーを例に挙げますと、値札のタグは文字が大きくなり、身長の低いシニアでも見やすいよう、低めの位置に取り付けられています。

 

さらに、10個パックが主流だった卵をバラ売りしたり、弁当・惣菜のサイズを小さくするなど、小口対応している店舗も多くなってきています。コンビニでは、サバの味噌煮など中高年の方が好むような1人分の惣菜が増えました。1人分を作るのに手間の掛かる商品を、手頃な値段で提供しています。

 

また、某百貨店では1階から2階に上るエスカレーターの速度を遅めに設定しています。それはシニアの転倒を防止する効果があります。低速のエスカレーターで身体を慣らしていただいた後は、普通の速度に戻しても大丈夫というわけです。

 

■シニアの特徴を見極め、チャンスに変える

 

シニアビジネスに取り組む上で、商品構成やサービスをどのように考えていくべきなのでしょうか。

 

シニアが感じる「不(不安・不満・不便)」の部分に着目することが重要です。その中で最も注目すべきなのが「健康に関する不安」です。シニアの中には、老眼により商品の説明書きが読めないために買わないという方がかなり多いのです。その「不」への対応策として、店頭で老眼鏡を無料で貸し出したり、安価な老眼鏡を販売したりするアイディアが生まれています。

 

また、身体機能の低下、特に足腰の衰えを感じているシニアには、休憩用の椅子が大変喜ばれます。椅子に座っている時に見える場所に、訴求力の高い商品を配置するのも効果的です。

 

接客面でのサービスについてはいかがでしょうか。

 

店舗のスタッフが若さゆえにシニアの「不」の部分に気づかず、会話が上手くできないという事例が多いようです。そのため、「コンシェルジュ」のような接客のプロを据えることも1つのポイントだと考えています。専門的な知識を持つスタッフの役割分担をはっきりさせて、シニアのニーズに合わせて速やかに案内することが重要です。例えば、40~50代くらいの女性スタッフであれば、シニアにとって子ども世代にあたるため、話しやすいといった利点もあるかもしれませんね。

 

仮に、シニアと同世代のスタッフが接客するメリットはあるのでしょうか。

 

シニアは、同世代の「この商品いいわよ」という口コミに共感したり、「あの人が買ったのなら私も買う」と、ライバル心を燃やしたりする傾向があります。それらの心情を刺激して販売できれば強みかもしれません。また、シニアに限らず若い世代に対しても自身の知恵や経験を伝えることができます。昔でいう、古本屋のオヤジのような存在ですね(笑)。シニアは買い手としてだけでなく、「担い手」として高いポテンシャルを秘めていると考えています。

 

シニアが求める店づくりについて、どうお考えでしょうか。

 

売場を見て瞬間的に欲しいものが見つけやすい視認性が重要です。そして、店舗の規模についても留意すべきですね。足腰の弱ったシニアは歩行できる距離が短いうえに行動範囲も狭いため、大型店舗を動き回ることを好みません。品揃えと規模のバランスでいえば、スーパーなどでは300坪くらいの店舗がちょうど良いと感じるようです。

 

また、ショッピングセンターのフードコートやコンビニのイートインコーナーの設置は、来店頻度を上げる効果があります。最近は書店さんでカフェを併設している店舗が増えましたね。そういった主力事業以外のサービスを連結させた店づくりで、トータルの滞在時間を長くすることで、シニアのリピーター獲得に繋げられると考えています。

 

シニアがゆっくり過ごしたくなるような雰囲気づくりも大事になってきますね。

 

例えば、団塊世代より少し上の世代は、クラシックを聴きながらタバコと珈琲を味わい、本を読めることに幸せを感じる人もいます。そのような自分の世界に浸れて懐かしさを感じたり、自分の生活を豊かにする情報が手に入ったりすることで、そこにいると楽しい、また来たいと思える空間を提供することが重要です。

 

■ネット社会におけるリアル店舗の取り組み

 

著書の中で「スマートシニア」という言葉を使っていらっしゃいますが、シニアの行動は、「リアル」から「ネット」に進んでいくのでしょうか。

 

シニアのインターネット利用率は年々上昇しており、これからも利用者は増加していくでしょう。会社に勤めていた時代には黙っていても入ってきた情報が、退職後は自分から収集する必要に迫られてパソコンを始める方も多いようです。私は今後、ネットショッピングなどの際に画面が大きく操作が容易なタブレットの人気が高まっていくと予想しています。

 

一方で、ネットは一切使わないという方も根強くいらっしゃいます。そのような方は特に行動範囲が狭い傾向がありますので、1つの場所で欲しいものがすべて揃う環境を求めています。書店さんでは、本を読んだ後につい買いたくなるような商品を周りに置き、できるだけ本と関連する商品の距離を短く設定すると良いと思います。

 

シニアの購買意欲を喚起するテーマを1つ伺えますか。

 

シニアにとって関心の高い「健康」がキーワードになると考えています。普段から健康に気を付けていても、急に健康を損ねた人には「まさか自分がこんな風になるとは思わなかった」と話すシニアが多いのが現状です。本を読むことで健康に生きるための知識を身に付ける大切さをPOPなどでアピールし、お勧めする本から得られる情報や未来像を具体的に示していくことが重要だと思います。

 

 

参考文献:シニアシフトの衝撃 超高齢社会をビジネスチャンスに変える方法

 

 

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