消費増税は社会保障の充実にどれだけ効果があるのか?

不動産経済 連載シニアシフトの衝撃 第5

消費税使い道10%増税も焼け石に水

 

この4月から消費税が現状の5%から8%に増税になる。増税の目的は社会保障の充実と言われるが、果たしてどれだけ効果があるのだろうか。

 

消費税率を現状の5%から10%にアップした場合、金額では年間13.5兆円の税収アップとなる。このうち、約8割にあたる10.8兆円を社会保障費に回すことになっている。

 

ところが、この分だけ毎年度の国債発行は減らせるが、新たに年金や医療介護費に回せる分はない。残る2.7兆円は、子育て支援などの社会保障の充実に回すことになっている。

 

つまり、消費税を10%に増税しても焼け石に水なのが実態なのだ。ましてや8%の増税ではそれ以下である。

 

社会の高齢化に伴う最大の課題

 

社会の高齢化に伴う国家レベルでの最大の課題は、年金・医療・介護などの社会保障費の増大による歳出増大と、経済活動縮小による歳入減少とにより、財政赤字が拡大し、財政破たんのリスクが高まり、国際的な信用不安から円が大暴落することだ。

 

実はこの問題は2010年から起きたギリシャの経済危機で現実化している。EU内での対処の結果、幸い国際的な通貨暴落は起きなかったが、財政赤字の拡大が信用不安につながることがまざまざと示された。

 

しかし、この問題はギリシャだけでなく、超高齢社会に突入している日本を含む多くの先進国が共通に抱えている問題でもある。

 

社会保障費の増大は、受給者である高齢者の増大による。2012年度の社会保障費は109.5兆円。内訳は年金53.8兆円、医療35.1兆円、介護・福祉その他20.6兆円(うち介護8兆円)となっている。

 

2025年度には年金60兆円、医療53兆円、介護・福祉その他31兆円(うち介護16兆円)と予測されている。2012年度比でみると、年金1.1倍、医療1.5倍、介護2倍となり、医療・介護費の増加割合が大きい。

 

一方、社会保障費の財源は、2012年度で保険料60.6兆円、国の財政負担29.4兆円、地方財政負担10.9兆円、不足分8.6兆円は資産収入等で賄っている。また、国の財政負担29.4兆円は、国の一般会計歳出全体の33%に及んでいる。

 

これに対して歳入は、46.9%に当たる42.3兆円が租税と印紙収入で、49%に当たる44.2兆円が国債発行などの公債金収入に依存している。つまり、歳入の約半分を借金に依存しており、これは将来世代への負担となっていることも問題だ。

 

今やるべきなのは

 

これらの問題解決のために今やるべきことは、①医療・介護費の低減、②国債発行に依存しない歳入源の確保、である。

 

まず、①については、「高齢者の社会参加」がカギとなる。すでに埼玉県和光市や新潟県見附市などでは高齢者の社会参加が増えると医療・介護費が低減することを定量的に実証している。私が所属する東北大学加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センターでの研究からも、認知症改善プログラムやサーキット運動が医療費・介護費を低減することがわかっている。

 

社会の高齢化に伴う個人レベルの共通の問題は、健康不安、経済不安、孤独不安である。これらの不安解消には、認知症や要介護状態にならずに健康状態を維持し、経済不安を少なくし、社会的孤立を防ぐことだ。そのためには、定年退職後も何らかの仕事を通じて社会との関わりを維持して、年金以外の収入を得る必要がある。

 

年金以外の収入を得られると生活に余裕が出る。また、生活にリズム感が生まれる。さらに、社会とのつながりが保てるとボケ防止や介護予防にも役立つ。したがって、企業は、若者の雇用機会を損なわない範囲で高齢者の就業機会を増やすのがよい。

 

次に②については、新たな税収増がその手段である。しかし、前述の通り消費増税では本質的な解決策にならない。本来必要なことは、消費税増税に頼らない税収増の方法である。

 

増税よりシニア消費促進が効果的

 

2010年の総務省「家計調査報告」と厚生労働省「国民生活基礎調査」をもとに算出すると、60歳以上の人が保有する正味金融資産は合計482.3兆円となる。以前述べた通り、仮にこの3割、144.7兆円が消費支出に回ったとすると、2010年度一般会計90.3兆円の1.6倍が実体経済に回ることになる。

 

ただし、先行き不安の強いシニア層は、正味金融資産の3割どころか、1割すら消費に回すことさえ現実的でないという見方もある。したがって、ここに企業の新たな役割がある。

 

商品の売り手である企業が、シニア層が必要としていたが、これまで市場にはなかった、より付加価値の高い商品・サービスを創出するのだ。すると、「こういう商品が欲しかったのよ」という機会が増え、生活不安の解消につながり、結果としてシニアの消費も増える。

 

消費が増えれば消費税収も増える。また、企業の売り上げ・収益が増え、業績が向上すれば、法人税などの税収も増える。この結果、国の税収が増え、財政改善に寄与することになる。財政が改善されれば、ギリシャのように財政破綻することもなく、国際的信用を維持でき、シニアも安心して老後を過ごせるようになるのだ。

 

 

参考文献:シニアシフトの衝撃

 

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