「スマートシニア」急増 ネット 買い物弱者に力

読売新聞 201472日 論点

140702_yomiuri3最近、街中でスマートフォンを操作している高齢者に出会うことが多くなった。実際、年齢別のインターネット利用率では、この10年間で高齢者の伸びが最も顕著だ。

 

総務省の「通信利用動向調査」によると、シニア層のネット利用率は200112年の11年間で、6064歳が19.2%から71.8%に、6569歳が12.3%から62.7%に、7079歳が5.8%から48.7%に急上昇している。

 

ネットとIT機器を縦横に駆使して情報収集し、旅行やレジャーに出かけたり、通信販売で気に入った商品を購入したり――。筆者がネット時代の高齢者像を「スマートシニア」と名付けてから15年以上がたつ。当初は「コンセプトは面白いが、そんな高齢者はどこにいるのか」と質問されたが、いまや決して珍しくなくなった。

 

ネットを通じて多様な情報に接し、賢くなったシニアの消費行動は確実に様変わりした。例えば、老人ホームの買い方がその一つ。以前は高級ホテルで説明会を開くと、入居一時金4000万円と高額でも、参加者600人中50人がその場で入居を希望した。だが、最近は1000万円でも即決する人はいない。

 

「ショールーミング」という消費行動を取る人が増えた。ネットであらかじめ欲しい商品の情報を調べてから実店舗の店頭で商品を確認し、店員に価格を尋ねたうえでネットで価格を比べて購入する。店舗では商品が売れず、ショールームの役割にとどまっていることから、こう呼ばれる。

 

ネットで得た多様な情報を比較・検討し、最善のものを選ぶことを学んだシニアは、決して「衝動買い」をしなくなったのだ。

 

スマートシニアの増加は市場をさらに変えていく。要介護認定率と過去11年間のネット利用率を基に予測すると、25年には、83歳で要介護者とそうでない人が半々で、ネット利用率は45%に達する。10年後には、後期高齢者でも日常的にネットを利用することが当たり前になる。

 

その効果がはっきり現れるのは「買い物行動」である。仮に寝たきりになったとしても、本人の判断能力が失われていなければ、自宅のベッドからタブレットを使って、今夜の晩ご飯や読みたい本を取り寄せる人が爆発的に増えるだろう。

 

現在は新聞の折り込みチラシやテレビの情報番組が主流のシニアの通信販売がネットにシフトしていく。高齢者は、からだの衰えから店舗に行くのが困難になる「買い物弱者」になりがちだが、そうした問題の解決策にもなるはずだ。

 

ネットを駆使して自立した生活を楽しむスマートシニアが増える一方、ネットをほとんど使わない高齢者も依然存在する。これらの人が高齢になると、ネット全盛の社会では、周囲の人の手を借りなければ暮らせなくなる懸念がある。

 

また、ネット利用の高齢者の増加は、ネット経由の悪徳商法にだまされる機会が増えるという影の部分も見逃せない。超高齢社会では、ネットを正しく利用するためのネット・リテラシー教育が求められている。

 

 

参考文献:成功するシニアビジネスの教科書

 

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