”いまどきシニア”は千差万別 着目すべきは年齢よりも「変化」

電通報9月号 識者の目

月刊電通報_2014年9月号現在は4人に1人、2033年には3人に1人が65歳以上という超高齢化が進行している日本。2000年に立ち上がった「電通シニアプロジェクト」は、これまでさまざまな高齢化テーマに取り組んできた。その責任者を務める電通総研の斉藤徹氏が、団塊世代・シニアマーケット研究の第一人者である村田アソシエイツの村田裕之氏を招いて、“いまどきシニア”の実像と攻めどころについて徹底討論した。

 

斉藤 村田さんはよく「シニア市場は多様なミクロ市場の集合体である」と言っています。年齢的な点では、60歳と80歳や90歳では1世代違うので、物事に対する価値観は全く違ってくる。経済的な側面でも、高齢層の場合は「持てる者」と「持たざる者」の差が、若年世代と比べると非常に幅広い。また、ライフステージごとに多様なニーズがあることも考え合わせれば、シニアの中のどんな人の、どんなニーズをくみ取ってアプローチするのか起点をきっちり詰めないと、あまりに漠然としてしまう。

 

村田 おっしゃる通りですね。例えば、高齢者を「お年寄り」というと、社会的弱者といったイメージで見がちです。一方、「アクティブシニア」というと、かなりの資産貯蓄があって、高額商品もよく買うといったイメージがあります。これは実はどちらも正しくない。同じ高齢者でも、あるときは高額商品を買いつつ、一方で非常につましい生活習慣を送っている場合もあります。

 

私がいつも言うのは、「年齢よりも変化に目を向けよ」です。例えば、ライフステージの「大きな変化」。男性ならまず定年がある。ただ、定年になっても再雇用されるセミリタイア層が増えています。完全リタイアするのは今は65歳くらいでしょうが、その完全リタイア時期も今後はさらに高齢になっていく。

 

斉藤 電通の調査でも、65歳で、第2の退職を迎えた後も働き続けたいという人が非常に増えています。

 

村田 それでも、いつかは仕事から完全に身を引く時がきます。その後、ライフスタイルに大きな変化が現れるのは健康状態の変化によりまですね。おおむね75歳を過ぎると、医者にかかる率や認知症の発現率、要介護認定率が急に上昇する。

 

女性の場合は男性とは少し違っていて、多数派の主婦層でいうと、中高年の変化の最初の大きな変化は子育て終了時期。子どもが大学へ行き始めたころですね。第二が夫の退職時期。第三が子どもが独立結婚して夫婦二人の生活になる時期。その次に男性と同じように健康面の変化がありますが、最後は夫が亡くなるときですね。

 

斉藤 一つは加齢。そしてもう一つは、ライフステージの「変化」のタイミング。それによって消費行動も時間消費の在り方も変わってくるというわけですね。

 

村田 もちろん、生活実態に対するきめ細かな分析は必須です。主婦の時間消費の実態であり方も、夫が退職しても自由時間が必ずしも増えるわけではない。自宅引きこもり派の夫が多く、手間がかかるからです。そんな実態を踏まえれば、総菜や弁当などの「中食」市場が成長市場と読み解ける。

 

月刊電通報_2014年9月号_1面「なじみ性」の強いシニアには「自分ゴト化」がキーワード

 

斉藤 シニア世代には、いわゆる「なじみ性」があります。人生経験が長いので、自分なりの心地よさとか、こだわりといった生活価値観が形成されていて、若い世代のように簡単に流行には乗らない。そういうシニア世代を動かすには、「自分ゴト化」が重要なポイントになります。例えば年を重ねると、骨密度や体脂肪、肌年齢といった自分の現在の状態が気になる。そういう正味の自分を体験的に理解してもらった上で、現在の状態に適した商品を訴求する。そういう動線づくりが大切なのではないかと思います。

 

村田 健康問題や財産に関わることは「自分ゴト」になりやすいですね。

 

斉藤 もう一つの問題意識としては、これまでのサービス・商品を提供する側と享受する側という関係性ではなく、高齢社会ならではの新しい関係性のモデルが構築できないか。単なる需給関係ではなく、もっと強いつながり。例えば、65歳でリタイアしても元気な高齢者がたくさんいる。そういう人たちの働く場を会社が提供しつつ高齢者との関係性を築いていくようなイメージですが。

 

村田 一種のオーナーシップによる関係構築ですね。例えばサービス付き高齢者住宅をつくるときに、入居者が出資をして、その会社をつくるようなビジネス。

 

斉藤 高齢者の人たちが持っている資産や知恵をうまく次世代に生かしていくような仕組みづくりは、やっぱり超高齢化社会では絶対に必要ですね。

 

村田 私の試算では、60歳以上が持っている正味金融資産、つまり貯蓄から負債を除くと482兆円ある。そのうち1割でも回せれば、一般会計予算の約半分の額になる。それができれば、経済も財政状況もガラリと変わる。結局、シニアの資産が動かないのは、「健康不安」「経済不安」「孤独不安」という3Kの不安があるからです。

 

この三つを解決するのに一番いいのは、仕事をしてもらうことです。例えば月に10万円年金以外の副収入を稼げればでも、稼いだ分の大半多くは可処分所得になります。仕事をすれば、人とのつながりもできる。メンタル的にも健康が保たれ、病気になりにくい。医療費や介護費の抑制にもなります。

 

“浮気しない”シニア世代 長期的な関係構築に好機

 

斉藤 企業がシニアと向き合っていく上では、長期的な関係性をどうやって築いていくかという視点も重要ではないかと思います。ハードルにもなる「なじみ性」を逆手に取るような発想ですが、気に入ってくれれば浮気しないのが高齢者です。自分ゴト化してもらうためのハードルは高いかもしれないけれど、一度関係性をしっかりつくっていくと、生涯価値として企業の方にもきちんと恩恵がもたらされる。

 

村田 僕がずっと関わっている女性専用のフィットネスクラブでは、今、お客さんの平均年齢が60歳くらい。店舗数が全国で1480店以上になるまで成長して、現在会員数が約65万人。サポートするスタッフは、20代から30代ぐらいの若い女性ですが、会員の年代からすると、娘や孫娘みたいなものです。

 

初めのころは、中高年の女性会員に軽くあしらわれるようなこともありましたが、でも、それを払拭しようと、あいさつの仕方や言葉がけなど一生懸命になって勉強した。それでの成果が出るようになると、「あなたのおかげで、私、よくなったわ。ありがとう」という感謝の言葉を掛けられるようになる。それがスタッフの自信にもなるし、評判が他のお客さんにも伝わる。

 

結局、長期的な関係性の構築は、そういう改善の積み重ねです。スタッフとお客さんの関係が良くなれば、店舗施設全体の雰囲気も良くなるから、新たなお客さんの定着率も高くなる。

 

斉藤 信頼というのは、理屈だけじゃなく、情によって築かれるという側面がありますよね。それも、長期的な関係構築においては、重要なポイントではないかと思います。いろいろ貴重なお話、ありがとうございました。

 

 

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