顧客ニーズが直接見える仕組みを「自前」で持つ

1010 シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第90

コールセンター業者に委託した市場調査結果の90%は役に立たない

 

シニア市場に進出するためには、まずは何から始めたらいいのか?こんな質問をよく受ける。それに対する一番の答えは、顧客ニーズが見える仕組みを自前で持つことだ。

 

一般に大企業がシニア市場への足がかりとして最初に行うのが、調査会社にアンケート調査、グループインタビューなどの市場調査を依頼することだ。しかし、私が見てきた限り、そうした調査結果の90%は役に立っていない。

 

なぜなら、調査を依頼する側が、シニア市場でどのような商品やサービスを生み出して、どういう販路で売り出していくか、といった戦略仮説がないまま、とりあえず市場の状況を調べてみよう、という程度のものが結構多いからだ。

 

その程度のことに割ける予算があるのなら、自社で製造した商品が末端のエンドユーザーの間でどのような売れ方をしているのか、どういう評判になっているのかということを、量販店や中間卸経由ではなく、直接、自分たちが知ることのできる仕組みづくりにお金をかけるべきである。

 

しかし、それぞれの業界には、長年踏襲されてきた商習慣などの暗黙の縛りがある。たとえば、家電業界にはメーカーがあり、中間の卸業者があり、そして量販店、系列店などの小売り業者があり、エンドユーザーがある。この序列をないがしろにすることは、これまでの商習慣の破壊である。そうした既存の仕組みの改革には、メーカーといえどもなかなか踏み込めていない。

 

コールセンターは自前で持ち、顧客の潜在ニーズを直接感じよ

 

そうした既存の商習慣を破壊することなしに、仮にメーカーが直接、シニアユーザーなどの消費者ニーズを把握する有効な方法はあるのだろうか?答えはイエスだ。

 

それは、たとえば、メーカーが直接通販会社を持つことだ。そして、通販会社の運営自体はアウトソースでも構わないが、コールセンターなどの顧客接点のある部分は絶対にアウトソースしてはいけない。実際に顧客と接し、会話のやり取りなどが行われる業務領域は、自社の社員が直接行うことだ。ここがとても重要である。

 

実際、業績の伸びている通販会社はすべて、この手法でやっている。もっと具体的に言えば、コールセンターには大きく2種類の役割があり、一つは商品の支払いに関する手続きなど事務的な処理で対応可能なもの。こちらはそれこそ電話会社等への業務委託でも十分である。

 

しかし、もう一つの顧客からの商品に関する問い合わせ、クレームなどの細かなニーズへの受け答えの領域はアウトソースしてはいけない。むしろ、なるべく製造部門の現場に近い立場の人が対応するのが理想だ。

 

そこで交わされる顧客からのクレームや要望の生の声は、前述の小売業者のところで滞留していた貴重な消費者の生の声でもあり、調査会社や広告代理店への市場調査丸投げではなかなか入手できない情報だからだ。

 

そうした仕組みで顧客から直に仕入れた情報を活用し、試作品を製作したら、まずはモニター用として直営店などで売ってみる。その中から売れ行きの良いものを厳選した後に量販店での本格販売に移行すればいいのだ。

 

シニア顧客のニーズの基本は「不(不安・不満・不便))」の解消である。そして、そうした顧客の「不」は、顧客と直接、接していないとなかなか聞こえてこないものだ。

 

メーカーも小売り化する発想を持つべき

 

近年、小売業ではナショナルブランド(メーカー製品)以外のプライベートブランド商品が売り場でのシェアを上昇させている。いわば小売業者のメーカー化ともいえる現象で、ますます消費者の既存メーカー離れが危惧されそうな流れにある。

 

このように、小売り業者がプライベートブランドでメーカー化しているように、メーカーも小売り化する発想を持つべきだ。小売り化しないから、売れない商品を量産し、在庫調整ばかりやっている。そうではなく、メーカーも思い切って不採算で身売り先を求めているスーパーやコンビニを買収する。それぐらいの思い切った発想があるべきだ。

 

今の時代に求められているのは、たとえば家電メーカーが同業のソニーの真似をする、あるいは東芝の真似をするのではなく、イオンやセブン&アイの真似をする。そうした発想だ。たとえば、家電製品ばかりを売るコンビニがあってもいい。そうした新しい業態を作る発想が、いま、メーカーに求められている。

 

 

参考文献:成功するシニアビジネスの教科書

 

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