「わくわく消費」がシニア層と日本社会を元気にする

C-magazine 2015年秋号 特集 シニア市場を切り拓け

c-magazine_表紙_0902キヤノンマーケティングジャパンのグループPR誌『C-magazine』特集「多様な価値観が溢れる時代の成功のカギとは?シニア市場を切り拓け!」にインタビュー記事が掲載されました。

記事タイトルは『「わくわく消費」がシニア層と日本社会を元気にする―――シニアマーケティングを読み解く視点』です。

インタビュー記事以外のコラム「シニア層はますますオンラインショッピングのヘビーユーザーになる!」も有用でしょう。

また、セブン-イレブン、第一興商DKエルダーシステム、タニタ健康プログラム、カーブスなどおなじみの事例紹介、プリヴェAGのハズキルーペ、明治乳業のメイバランスMiniカップ、タイガーの土鍋圧力IH炊飯ジャー、ブリジストンの電動アシスト自転車などシニア層のニーズに応えたヒット商品も取り上げられています。

シニア市場に取り組みたい方には参考になる情報が沢山掲載されています。私へのインタビュー記事は次の通りです。

******************************

c-magazine_掲載_0902「わくわく消費」がシニア層と日本社会を元気にする
──シニアマーケティングを読み解く視点

「シニア」と「高齢者」はしばしば同義であると考えられていますが、意味合いには実は大きな違いがあります。「高齢者」は年齢によって定義される言葉で、現在の日本では65歳以上が高齢者とされています。

何歳以上が高齢者なのかは、時代や国によって異なります。50年前に高齢者とされていたのは55歳以上でした。今後、この年齢は70歳、75歳と引き上げられると見られています。ドイツではすでに、67歳以上を高齢者とすることが決まっています。高齢者とは社会的定義であり、「国の制度上、年金が支給される人たち」がすなわち高齢者です。

一方、「シニア」に年齢の定義はありません。私は尋ねられれば「現時点ではおおむね60歳以上をシニアと呼びましょう」と答えていますが、一昔では50代もシニアに含まれたこともあるし、最近は60歳になっても自分をシニアと思わない人もいるでしょう。

したがって、シニアを対象にしたマーケティングも、年齢だけでセグメントすると誤ることになります。

例えば、現在の60代後半から70歳くらいまでの年齢層に「団塊の世代」が存在しますが、団塊世代とひと口に言っても、人によって家族構成、収入や資産の水準、ライフスタイルなどは極めて多様です。現代では一つの世代や年齢層を「塊」として捉えるマーケティング手法は無理があります。

では、何を基準とすべきか。ひと言で言えば「価値観」です。50代から90代まで、さまざまな年齢層のなかで、ある共通の価値観をもつ人たちがセグメントを形成しているのがシニア市場です。シニア層というマス市場があるわけではなく、多様な価値観で括られるミクロな市場が数多くある。シニアマーケティングでは、こうした視点が非常に重要です。

もう一つ、「シニアはお金持ち」というのも誤解を含んだ考え方であることを指摘しておきます。正確には「資産は多いが、所得は少ない」のが平均的シニア層です。主たる所得である年金分しか日々の生活には使わず、本当に自分にとって必要と思うものにしか出費はしない。資産はいざというときのために蓄えておく。それがシニア層の典型的な消費スタイルです。

さらに、シニア層の近年の変化を押さえておくことも必要です。10年前と比べ、シニア層は主に5つの点で大きく変化しています。

1つ目が、インターネット利用率の劇的な向上です。2000年頃、60歳以上のネット利用率は1割程度でした。現在では6割を超えています。

2つ目が、「近居」が増えたことです。子どもと同居はしないが、いざというときにすぐに駆けつけられる程度の距離に住む。そのような居住スタイルが増えています。

3つ目が、介護の一般化。2000年に公的介護保険制度が導入されてから、介護サービスを受けることが身近になり、現在では介護ビジネスが一大市場を形成しています。

4つ目が、人生の終え方を自分で選択する風潮が強まったこと。「終活」などはまさにそれを象徴する言葉と言えるでしょう。子どもの世話にならず、老人ホームなどを自分で選択し、自分の終末は自分で支度する。そう考える人が増えています。

5つ目が仕事意識の変化です。定年後も仕事を続け、社会と関わり続けたいと考える人がとくに男性に多く見られます。

人生を豊かにする「わくわく消費」に市場開拓の可能性がある

資産は多いが所得は少なく、財布のひもが固く、モノ消費にそろそろ飽きてきたシニア層の消費を刺激するアプローチには、どのような方法があるのでしょうか。私は、大きく次の二つがあると考えています。

一つは「不の解消」に着目する方法です。「不」とは既存の商品・サービスに対する「不安」「不満」「不便」です。シニアあの三大不安は、健康不安、経済不安、孤独不安、の「3K不安」です。これらを解消すると思われる商品やサービスを開発すれば、広範なシニア層に受け入れられます。例えば、健康寿命の延伸に寄与するフィットネスサービスや、リバースモーゲージ、就職支援サービスなどが含まれるでしょう。

もう一つは、日常生活ではめったに感じられない知的興奮やときめきを商品・サービスに入れ込んで、消費を促す方法です。この結果、生まれる消費を私は「わくわく消費」と呼んでいます。

アメリカの心理学者、ジーン・コーエンは、50代から70代前半までに訪れやすい人間の心理的発達の段階を「解放段階」と呼んでいます。それまでのしがらみから解き放たれ、自分のやりたいことをやりたくなる段階です。「わくわく消費」とは、まさしくその段階にあるシニア層の人たちのお金の使い方と言っていいでしょう。

私は以前、シニア向け雑誌とのタイアップで、「ボストン・ワンマンス・ステイ」という商品をつくったことがあります。参加費はおよそ120万円でしたが、数多くの参加があり、とくに50代、60代の女性に好評でした。普段は倹約気味でも二度とない人生を豊かにするためにはそれなりのお金を使うことも厭わないのがわくわく消費の特徴です。

「不の解消」のためのニーズはまだまだ尽きないと思われますが、私はむしろ「わくわく消費」を誘発するマーケティングの方に大きな可能性を感じています。普段は節約気味のシニアでも心から楽しいと思えることにはお金を惜しまないものです。

ぜひ知恵を絞って、シニア層がわくわくするような商品・サービスをどんどん生み出して、シニアが振込詐欺でお金をなくすのではなく、人生を豊かにするためにお金を使うように企業は努力してほしいと思います。

C-magazine 2015年秋号のサイト
成功するシニアビジネスの教科書

あわせて読みたい関連記事

タグ


このページの先頭へ

イメージ画像