新規事業としてシニアビジネスに取り組む意義は何か

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第123回

大企業がそもそも新規事業に取り組む目的は何か

「事業規模」を大きくするのが目的なら、短期的には、既存収益部門の売上拡大を図るほうが早道だ。例えば、不動産会社なら、現状より100億円売り上げをアップしようとする場合、ゼロから新規事業に取り組むより、売上げ10億円規模の商業ビルを10件立ち上げたほうが、実現は早く、確実だろう。

また、素材メーカーなら、既存取引先への卸量を増やしたり、経費節減を徹底したりすることで、比較的容易に収益をアップできるだろう。

しかし、こうした短期的な打ち手は、競合他社も当然行うことに加え、ある程度行うと、打ち手がなくなってしまう。しかも、今の収益部門が3年後、5年後、10年後に収益部門であり続けるかは全く保証できない。

したがって、重要なのは、短期的に既存収益部門の売上げ拡大を図りながら、中長期の成長のための布石を打つことだ。この中長期戦略の布石が、新規事業としてのシニアビジネスへの取り組みなのだ。

売上げ増加だけではない新規事業の効果

実は、新規事業の効果というのは、その事業の売上げ増加に留まらないなぜなら、注目される新規事業に取り組んでいるということ自体が、新しいビジネスチャンスを生み出すからだ。

新規事業に取り組むと、まず、社内に新しい雰囲気が生まれる。特に若手社員が、やる気になり、その若手社員に触発されてベテラン社員も奮起し、沈滞化した雰囲気の社内に活気が出る。

そして、取り組んでいる新規事業が、テレビや新聞などのメディアに何度も取り上げられると、既存の取引先から「最近、御社で面白いことやっていますね」と声をかけられ、取引関係が深まる。

さらに、これまで全く取引のなかった企業からも「ウチとも何か一緒にやりませんか」と声をかけられるようになり、取引の幅が広がる。

面白いのは、こうした社外の「社会的評判」が、ついには、社内をも動かすことだ。まず、既存の収益部門の担当者に、顧客から新規事業についての問い合わせがいく。するとその担当者から新規事業部門の担当者に「ウチのお客さんから問い合わせがあったので、今度同行してもらえないか」などと相談されるようになる。また、経営トップのところにも、他社のトップから声をかけられやすくなる。

実は、これも新規事業に取り組むことのメリットだ。新規事業そのもので、すぐに飯が食えなくても、新規事業が注目を浴びると、会社全体のイメージアップにつながるこのイメージアップが、結局、既存事業の拡大につながるのだ。こうなると、収益部門の現場の部長からも「ぜひ、新規事業部と一緒にコラボレーションしましょう」などとラブコールを寄せられるようになる。

こういう状況になると、次は優秀な人材が社内外から集まってくるのだ。「あの○○という事業に興味があって、この会社を志願しました」といって、新卒でも中途入社でも、社外から優秀な人材が集まってくるようになる。

今の学生は、一昔のように有名大企業だからという理由だけでは入社しない。その企業のビジョンや目指している方向性などを注意深く勉強し、いまの企業価値だけでなく、将来にわたる企業価値も見込んだうえで面接を受けにやって来る。

これに加えて、今度は社内の別の部署の若手人材が「新規事業部に行きたい」といって、異動を嘆願するということが起きるようになる。

一方で、こうして入社したり、他部署から異動したりしても、その職場の実態が、期待していたものと大きく異なる場合は、結局やめていく人も出てくる。会社の実態は、ごまかしが効かないので、この場合は仕方がない。

しかし、こういう状態が頻繁に起きるとすれば、せっかく獲得した「社会的評判」に、社内の実態を一致させるように経営トップは努力せざるを得ない。こうなると社内に大きな「揺らぎ」が起きるようになる。

そして、この「揺らぎ」が、それまで硬直していた企業体質を根本的に変えなければいけない、という危機感を社内全体に生み出すのだ。こうした「揺らぎ」が起こることが、実は新規事業の隠れた効果ともいえる。

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シルバー産業新聞社

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