高齢世帯でのスマホ、タブレットの普及状況とその原因

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Clinic ばんぶう7月号連載 データから読むイマドキ「シニア」の実態第12回

2012年から15年までの総務省統計局「通信利用動向調査」を見ると面白いことに気が付きます。世帯主の年齢階級別のスマートフォンとタブレットの保有率が、15年から、それぞれ65歳以上、70歳以上でのみ減少に転じているのです(図1、図2)。

12年頃に発表された多くの市場予測ではスマホ、タブレットのいずれも毎年増加し続くとされていました。実際、通信事業者やメーカーはシニア向け商品の普及にかなり注力してきました。にもかかわらず、こうした結果になっている理由は何でしょうか。

スマホが65歳以上で減少に転じている第一の理由は、視力の衰えによるスマホ離れです。

㈱ゆこゆこが15年10月に発表した調査によれば、50歳以上の82.3%が老眼で、45.6%が目の疲れを感じているとのことです。さらに高齢になると眼精疲労、ドライアイや白内障を患う場合も多く、小さな画面のスマホで字を読むことや複雑な操作を嫌って利用がおっくうになるのは容易に想像できます。

第二の理由は、高額な通信料です。

年金依存の高齢者に平均月額6000円以上の出費は経済的負担が大きいです。格安スマホが高齢者に受けているのもこれが原因ですが、「格安」と謳っていながら、実際使用すると月額通信料が5000円を超えることも多く、結局解約する例が後を絶ちません。

以上の通り、高齢者にとってスマホは利用しづらいのに高価なので必要性が低いのです。一方、タブレットではスマホと状況が少し異なり、60歳代では増加傾向が続いています。これはスマホの場合の裏返しで、画面が大きいため、字が見やすく操作しやすいのが評価されていると言えます。

利用価値が認められれば、高額な通信料負担も受け入れられるのでしょう。もっともタブレットはWi-Fi環境のある自宅での利用が多いため通信料はあまり負担にならない面もあります。一方、70歳以上で保有率が減少しているのは、スマホ同様、必要性が低いと感じる人が多いためと思われます。

高齢化率27.3%で世界一の日本は、今後要介護高齢者が増えることが予想されます。要介護になり外出が難しくなった高齢者にとって、スマホ、タブレットは生活に不可欠な道具となります。

格安スマホやSIMの普及は追い風ですが、通信事業者やメーカーには、画面インターフェイスやアプリケーションのさらなる使いやすさの改善・工夫が求められます。

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