アンケート調査はシニアのニーズ把握にどこまで使えるか?

ビジネス切り口別

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第4回

調査会社に依頼するシニア市場調査は役に立たない場合が多い

シニア市場に参入したい企業担当者から必ず受ける質問の一つは「シニアが何を必要としているか、そのニーズを知りたい」というものです。

その解答を得る手段として彼らが頻繁に行なうのがアンケート調査です。作業は調査会社等への委託が多いのですが、残念ながらその結果が役に立たない場合がかなり多いです。

理由は、調査手法に構造的な限界があるにも関わらず、それを認識しないで実施するためです。

未経験なことへの「願望」を尋ねると回答の信憑性は著しく低下する

アンケート調査は、設問を回答者の「現状の事実関係の確認」に限定すれば、回答者が虚偽の回答をしない限り有用です。たとえば、住所、性別、年齢、生年月日などの事実関係を尋ねる場合です。

ところが、設問内容を未経験なことに対する「願望」や「意向」を尋ねるものにすると、回答の信憑性は著しく低下します。

例えば、40歳から60歳までの母集団に「定年退職後の生活は今の高齢者に比べてどう思うか?」
「海外に数か月滞在するロングステイをしたいと思うか?」
などの場合です。(図がその例)

回答者は、自分が経験したことのない商品・サービスに対しては、実感が湧かないため「明確な価値基準」を持ちません。このため、回答への意識が希薄になりやすく、回答内容の信憑性が低下します。

設問文章や設問全体の文脈の巧拙によっても回答内容は影響を受ける

アンケートの回答内容とは、このように選択肢の作り方で信憑性が大きく変化する性質をもっています。実は、回答選択肢の作り方だけでなく、設問文章や設問全体の文脈の巧拙によっても回答内容は影響を受けます。

そもそもアンケート調査に答えると言う作業は、一般に楽しいものではありません。できれば最小限で済ませたい類の作業です。このため、設問の数や記入欄の書きやすさが回答内容の信憑性に影響します。

これら以外にもアンケート調査の構造的限界は多くありますが紙面の都合で割愛します。重要なことは、こうした適用限界をよく理解して実施しないと金と時間の無駄になるということを覚えておいてください。

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