退職をきっかけに売れる商品とは

ビジネス切り口別

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第12回

退職は新たな消費の大きなきっかけになる

「本人のライフステージの変化」は消費行動に影響を及ぼします。男性で一番大きいライフステージの変化のひとつは退職です。電通の調査によれば、退職をきっかけとした具体的な行動で一番多いのが「夫婦での旅行」です。

これは実は定番商品で、退職したら半分くらいの人が旅行に出かけます。パック旅行費への年間支出を見ると、一番多いのは60代、70代です。旅行の場合は、退職後半年以内に、まず退職記念旅行に出かけ、その後も折に触れて何度も出かけるというパターンが多いようです。

その次には「散歩・ジョギング・ラジオ体操など」「家のリフォーム」「保険の加入・見直し」「株やファンドの購入」が上位にきます。退職直後の消費の共通点は、健康維持、老後準備、趣味・自分探しのための消費です。また、比較的高額商品が多いことも共通点です。

フルタイムで仕事をしていた人は、退職して仕事をやめると収入は減りますが、自由時間は大幅に増えます。このため、この増えた自由時間を使うための商品・サービスに目が行くようになります。また、収入が減った分を補填するため、安全かつ有利な投資活動にも興味を持つようになります。

ダウンサイジング消費は多くの退職者に起こる

一方、退職者によく売れる車は、軽自動車とハイブリッド車です。こうした車が売れるのは、退職後は年金生活なので毎月の出費はなるべく減らしたいからです。だから、ガソリン消費の少ない車がいい。

子供はもう独立して夫婦二人なのでサイズは小さくていい。こうしたダウンサイジング消費としては、携帯電話を格安スマホへ、電気代・電話代をセット割引へ、郊外の一戸建てを都心のマンションへ買い替えるなどの例が見られます。

注目すべきは毎月のランニングコストを下げるためにそれなりの高額出費を行うこと。これはシニアの平均的な資産構造が「ストック・リッチ、フロー・プア」であることに起因します。

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