映画「桃(タオ)さんのしあわせ」に見る香港と日本との老人ホームの差

スマートシニア・ビジネスレビュー 20131119Vol.198

カバー「桃さんのしあわせ(原題:桃姐、英題:A Simple Life)」は、日本人を母に持つアン・ホイ(許鞍華)監督、香港の大スター、ディニー・イップ(葉徳嫻)とアンディ・ラウ(劉徳華)主演で2011年にヒットした映画です。

 

この映画を観ようと思った理由は、先日フェイスブックの知人経由でこの映画の存在を知り、現在仕事で関わっている香港の老人ホーム事情や居住環境、家庭事情を知りたかったためです。

 

映画の物語は、60年仕えたメイド(桃さん、ディニー・イップ)が脳こうそくで倒れ、生まれた時から桃さんに面倒をみてもらってきたメイドの主人(ロジャー、アンディ・ラウ)が、今度は面倒をみるというもの。

 

映画の舞台は、香港・九龍の北西部にある低所得者向けの「護老院」。護老院とは香港の老人ホームのことで、老人院とも呼ばれます。映画を観てよくわかりましたが、その雰囲気は、かつての日本の養老院のようです。

 

この映画の公開が2011年とわずか2年前であり、映画で描かれているシーンがほぼ現在の状況だとすれば、香港の庶民向けの老人ホームの実態は、日本の40年以上前の状況に近いと言えます。

 

場面2個室はほとんどなく、大半が大人数の大部屋。個室でも簡素な壁とカーテンとで仕切られた畳2畳程度の広さしかない。数年前にシンガポールで教会が運営する施設を訪れたことがありましたが、そこと似たような状況でした。

 

香港もシンガポールも一人当たりGDPでは、日本を超えるほど「豊かな国」ですが、こうした高齢者向け施設(特に低所得者向け)は、国の平均的豊かさに比べると依然かなり遅れていることがわかります。(香港は正確にいえば中国の特別行政区ですが、ここではあえて国と呼びます)

 

どちらの国も所得格差が日本よりも遥かに大きいため、余計低所得者向けの居住環境が手薄な感じがします。

 

場面1しかしながら、映画で描かれているような老人ホーム入居の際の料金体系の煩雑さ、入居者どうしの人間模様や入居者の家族どうしの諍いなどは日本と同じであり、高齢社会の課題はどの国も共通であることが改めてわかります。

 

香港の老人ホーム事情や居住環境、家庭事情を知るためには大変参考になる映画と言えましょう。

 

近年介護をテーマにした映画が日本の内外で増えていますが、なかにはストーリー性を強調し過ぎるがゆえに、違和感のあるものも存在します。

 

場面4しかし、この映画はドラスティックなストーリー展開などとは無縁の、静かな、心温まる内容になっています。名優ディニー・イップとアンディ・ラウの演技力で魅せる映画と言ってもよいでしょう。

 

ディニー・イップ演じる桃さんの、メイドとしての立場をわきまえた奥ゆかしい態度が、日本人の心にも響く内容となっています。

 

なお、ディニー・イップは、この映画でヴェネツィア国際映画祭女優賞、沖縄国際映画祭の“Peace部門” 海人 (うみんちゅ) 賞グランプリなど多くの賞を獲得しています。残念ながら、すでに上映はされていませんが、DVDで観ることができます。

桃さんのしあわせ トレーラー

 

 

「桃(タオ)さんのしあわせ」公式サイト

 

「桃(タオ)さんのしあわせ」DVD

 

 

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