中越地震の被災地・栃尾を勇気づけた伝説の名画「ゆめのかよいじ」、東京で上映

スマートシニア・ビジネスレビュー 20131211Vol.200

主人公来る1214日より東京・渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷で、素敵な映画が東京で初めて上映されます。

 

その映画のタイトルは「ゆめのかよいじ」漢字で書けば「夢の通い路」。古今集の「住の江の岸による波よるさへや夢の通ひ路人目よくらむ」という歌から来ているとのことです。

 

映画での「通い路」の意味は、人の想いや魂そのものが交錯する、この世とあの世とが交錯する通り道のような空間のこと。主人公の少女が古い木造校舎でそこに居ついている少女の霊と交流する不思議な物語です。

 

映画の原作は1987年に大ヒットした大野安之のSF漫画で、それを五藤利弘監督が映画化したものです。

 

今回、この映画のことをお伝えしたい理由が4つあります。

 

第一の理由は、この映画が映画製作における「クラウドファンディング」活用の日本の先駆例だからです。

 

クラウドファンディング(crowd funding)とは、不特定多数の人がインターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことをいいます。ソーシャル・ファンディングとも言います。

 

最近、日本でも映画製作にクラウドファンディングを活用する例が増えてきました。しかし、この映画はクラウドファンディングという言葉が日本でまだ知られてない頃に、ネットで制作資金の一部を調達した実績をつくり、その後の映画製作におけるクラウドファンディング活用の道を開拓したパイオニアなのです。

 

日本の映画史上、大きなインパクトを与えた映画と言ってよいでしょう。

 

第二の理由は、この映画が2004年の中越地震の被災地のひとつ、旧・新潟県栃尾市(現・長岡市栃尾)を舞台にしており、被災地の人たちを大いに勇気づけたことです。

 

あぶらげ_豆撰栃尾と言ってもご存知ない方もいらっしゃるかもしれませんが、最近では「栃尾あぶらげ」という大きな油揚げや日本酒の「越の景虎(かげとら)」が有名になり、都内の多くのレストランや居酒屋、スーパーなどで目にするようになっています。

 

←映画にも出て来る栃尾・豆撰さんのあぶらげ

また、景虎という名前のとおり、戦国武将の上杉謙信が幼年期を過ごした場所でもあります。謙信を取り上げた
1969年度NHK大河ドラマ「天と地と」で、謙信役の石坂浩二が栃尾にやって来た時は町中が熱狂したことを記憶しています。

 

天地人ちなみに、2009年度大河ドラマ「天地人」の主人公は、上杉家の家臣・直江兼続で、再び栃尾が注目されたのは記憶に新しいところです。

 



実は今回の映画を制作した五藤利弘監督は長岡市の出身
20041023日にあの最大震度7を記録した中越地震が起き、それまで東京で活躍していた五藤監督は「この映画を栃尾でつくろう」と決意されたのです。

 

棚田五藤監督はこの映画について「忘れてしまいかけたもの、なくなってしまいそうなもの、いなくなった人など、それらを今生きている人たちがずっと忘れずに思い続けることで、それらもずっと生き続けるということを観て下さる方に伝えたい」と語っています。

 



石積み五藤監督のこの純粋な思いが、栃尾の多くの人たちの心に響き、年配者から子供たちまで大勢の人たちが制作に協力してくれました。映画のポスターの下に沢山の栃尾の関係者の名前が載っています。

 

震災で深く傷ついた栃尾の人たちも、この映画製作を通じて互いに心を通わせ、勇気づけられたのです。

 



第三の理由は、日本映画界屈指の名カメラウーマン、芦沢明子さんが撮影を担当されていることです。

 

トウキョウソナタ芦沢さんといえば、カンヌ国際映画祭受賞作品の「トウキョウソナタ」、「LOFT ロフト」「叫」などの名画を撮影されたことで知る人ぞ知る名カメラウーマン。意外なところでは、私がかつてこのレビューで紹介したこともあり、中村雅俊が主演した60歳のラヴレター」も撮影を担当されています。

 

きちがいピエロ芦沢さんは、学生時代にジャン=リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」を見て映画に目覚めた方で、フランス映画がお好きな方にはよくご存知の「ヌーベルバーグ」の影響を受けた画風が見られます。ロケ地栃尾の懐かしい日本の山間の風景と調和した美しい映像の中にファンタジー色がいっぱいに溢れている映画に仕上がっています。

 


そして、第四の理由は、栃尾が私の生まれ故郷であることです。

 

栃尾で生まれ育った私は、実は子供の頃、栃尾が嫌でたまりませんでした。

 

サンパチ豪雪南越線私が子供の頃、栃尾は冬になると積もった雪で道路の高さが家の軒先と同じになる、日本でも有数の豪雪地でした。昭和38年のいわゆる「サンパチ豪雪」では、陸の孤島となり、自衛隊のヘリコプターが生活物資を運んできたほどです。

 



雪下ろし雪地で何が辛いかといえば、除雪作業。冬になると生活維持のためにほぼ毎日やらなければならない。家から基幹道路までの除雪、家周りの除雪、そして屋根の雪下ろし。これが一番きつい。

 

積雪量が多い時には毎日。これが1週間以上続くこともありました。たとえどんなに疲れていようが、他にやることが沢山あろうが、まず、この除雪をやらなければなりませんでした。

 

こうした経験から、子供の頃の私にとって、雪は憎らしい、恨めしい対象でした。

 

また、山に囲まれた人口23,000人(当時)の小さな田舎は、世間が狭く、噂話が隣近所にすぐ伝わる典型的な在郷(ざいごう=田舎)。子供の頃から早く大人になって脱出したいと思っていました。

 

そしたら、家庭の都合で中学卒業と共に隣の見附市に引っ越し、高校は長岡。高校卒業後、仙台の大学に進み、東京の会社に就職。以来35年間、栃尾に行く機会はほとんどなくなりました。

 

ところが、何年か前に実家に帰省した時に、移動中のクルマから、ふと眺めた雪に覆われた八海山の風景が、子供の頃に見えていたものと大きく違って見えました。

 

それは、とても美しかった。

子供の頃、雪や雪山は、憎らしい、恨めしい対象であり、美しさを感じる対象では決してなかった。その雪山が、何て美しいのだろう―――――――――――――。

 

人が何かを感じたり、認識したりする力、いわゆる認知力が、齢を取るにつれて変わっていくことを自ら体感した瞬間でした。

 

栃尾_春今回、栃尾を舞台にした映画があると聞いた私は、幼少の頃見ていた栃尾と今見る栃尾との、自分における見え方の違いを確かめてみたくなったのです。

 

 



映画は
1214日から上映開始。ただし、1220日までの7日間限定公開です。

上映する映画館は東京・渋谷のヒューマントラストシネマ渋谷のみ。

JR渋谷駅のすぐそばです。

 

初日の14日は上映前に舞台挨拶があり、五藤利弘監督、原作者の大野安之さん、主役の石橋杏奈さん、竹富聖花さんが登壇される予定です。

 

チケットは次のサイトからオンラインで購入できます。

http://www1.ttcgreserve.jp/human_shibuya/schedule/

 

ご興味を持った方は、ぜひ、渋谷まで足を運んでみてください。

 

 

 

映画「ゆめのかよいじ」オフィシャルサイト

 

映画館「ヒューマントラストシネマ渋谷」のサイト

 

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