団塊世代は引退するか?

スマートシニア・ビジネスレビュー 20021118 Vol. 22

imagesCAS51N8E_soho_2_1先週の某週刊誌で「団塊世代が引退する日」いうタイトルの特集がありました。

 

「定年後」「第二の人生をいかに過すか」の類の書物、記事は以前からいろいろありましたが、最近とりわけ団塊サラリーマンの「引退後」を扱うものが目立つ気がします。団塊世代が人口のボリュームゾーンであり、市場における影響力が大きいと思われているからでしょう。

 

一方、アメリカには日本の団塊世代にあたる「ベビーブーマー世代」が存在します。ただし、団塊世代が47年生まれから49年生まれの人たちを呼ぶのに対して、ベビーブーマー世代は47年生まれから64年生まれの人たちのことを呼びます。

 

この世代の人数は7千6百万人と巨大で、彼らの市場動向は、日本での団塊世代に対する扱い以上に多くの市場関係者が注目しています。

 

実は、AARP(全米退職者協会)の2000年の調査によると、ベビーブーマーの75%がこの「引退(retirement)」という言葉を嫌っており、引退など考えていないと答えています。

 

60年代に建設されたサンシティを代表とする「リタイアメント・コミュニティ」には、これまで大勢の「引退した人」が移り住みました。しかし、これらのリタイアメント・コミュニティは、もはやベビーブーマーの選択肢になっていません。なぜなら、彼らは「リタイアメント=引退」を望まないからです。

 

では、「引退」の代わりに何をするのでしょうか。ベビーブーマーのなんと80%が何らかの理由で「働き続ける」ことを計画しているのです。

 

どうもアメリカのベビーブーマーは、週刊誌のタイトルのように「引退する日」を迎えないようです。

 

最近訪れたアメリカでは、このような「脱リタイアメント指向」のベビーブーマーを意識した商品・サービスが登場し始めています。

 

代表的なものは住宅です。近年ハイテク産業の集積が進み、ベビーブーマーにとって住みやすいところの筆頭に挙げられているコロラド州ボルダーでは、従来と異なる住宅や都市の作り方が見られます。

 

最近増えている住宅は、従来に比べ、ベッドルームの数を減らす一方、ブロードバンド回線や大容量電源などを完備し、オフィススペースとしての利用を想定した部屋が増えています。

 

これらの住宅では子育てが終了した夫婦が、それぞれ個人用のオフィスをもち「SOHO(Small Office, Home Office)」 ならぬ「HOHO(His Office, Her Office)」として、各々好きな仕事に取り組んでいます。

 

また、一軒家ではなく、2階が住居で1階が自分のオフィスとなっている「HOHO長屋」のようなアパートもいくつかありました。このような形態を「バーティカル・ミックス」と呼んでいます。

 

一方、SOHO経験者はよくご存知のことですが、いくらSOHOとはいえ、四六時中家の中にだけいるのは気が滅入ります。このため自宅からそれほど離れていないところに別途オフィスを借りるというケースも多いのです。

 

アリゾナ州ツーソンの郊外で見たベビーブーマーに人気の住居コミュニティでは、コミュニティの真ん中に別途オフィス用の建物があり、自宅にオフィスがある人もそこで顧客と打ち合わせをしたり、お茶を飲んで談話したりしていました。このような住宅と商業施設とが隣接するケースを「ホリゾンタル・ミックス」と呼んでいます。

 

「引退しない」ベビーブーマーは、自動車で遠距離通勤する従来型のワークスタイルではなく、家族と仕事とのバランスがとれるような「家と仕事場との緩やかな融合」を求めているのです。

 

そして、そのような彼らのニーズに合わせて単に住宅というハコをつくるのではなく、そこで過す人が自分の好きなスタイルで仕事ができ、家族や隣人とのコミュニケーションもとりやすいような雰囲気つくりを工夫しているのです。

 

さて、ひるがえって、日本の団塊世代は果たして「引退する日」を迎えるのでしょうか?

 

私は日本の団塊世代でも、これまでの舞台を「退場」はするけれども「引退」はしない人が増えると思います。そして、「自分の好きなスタイルで仕事を続けること」を希望する人が増えると思います。

 

実際、定年直後は豪華な海外旅行に行ったり、ダンススクールなどに通ったりする人も少なくないのですが、特に男性の場合は、3ヶ月ほどで飽きてしまうという人が多いようです。

 

また、総務庁の97年の調査によると、40歳から59歳の人の41.2%が70歳以上あるいは年齢にこだわらずに働きたいという希望を持っています。

 

したがって、これからは日本でも「家と仕事場との緩やかな融合」のような新しいニーズに対応した商品・サービスが求められていきます。そして、その兆候はすでに都市部を中心に見られます。

 

サン・シティ型のリタイアメント・コミュニティは、近い将来、偉大なる過去の遺物として追想の対象となることでしょう。

 

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