「日本版SCORE」の設立を

スマートシニア・ビジネスレビュー 200282 Vol. 19

images_SCORE以前スマートシニア・ビジネスレビュー Vol.13で、「シニア・ナレッジ・ネットワーク」という考え方を提案しました。

 

これは、企業人として長いキャリアをもち、何らかの能力を有するシニアを「シニア・ナレッジ・ネットワーク」として組織化し、ベンチャー企業成長の支援者として活躍できる仕組みをつくることが、ベンチャー企業とシニアの双方にとって有益だ、という内容でした。

 

実はこの考えと似たような仕組みがアメリカには1964年から存在しています。米国中小企業庁が中心となり全米に展開する「SCORE」と呼ばれるNPOです。

 

ベンチャー企業のインキュベーションに「シニアの智恵」を活用する仕組みが全米規模で存在することに、アメリカの起業文化の層の厚さを感じます。

 

SCOREService Corps of Retired Executiveの略で、企業を引退した経営幹部らがボランティアでスモールビジネスの相談に乗る仕組みです。

 

全米389のオフィスで、計11,500人のシニアスペシャリストがスモールビジネスのカウンセラーとして活躍しています。設立以来、450万件もの相談に乗ってきた実績があります。

 

相談を希望する企業は、電話や電子メールで具体的な相談内容を伝え、相談日時の予約をします。SCOREは相談内容に合ったシニアボランティアを紹介し、企業側はボランティアが対応できる時間にオフィスを訪れてカウンセリングを受けます。

 

カウンセリングは1回につき1時間ですが、何回でも無料で受けられるため、資金やノウハウの少ないスモールビジネスにとっては、魅力的な仕組みとなっています。カウンセラーは、イーストマン・コダック、GEIBMP&Gなどそうそうたる企業でスペシャリストとして活躍してきた人たちが多く、豊富な実務経験に基づく的確なアドバイスが期待できます。

 

一方、シニアがSCOREにボランティア・スペシャリストとして認定されるには、事前審査を受ける必要があります。これは、長年培った智恵や経験がある経営幹部といえども、カウンセラーとして働くための訓練や研修が必要なためです。

 

具体的には、SCOREのメンバーとしての義務、カウンセラーとしての技術、さらには、スモールビジネス向けの支援制度について学ぶ機会が設けられています。また、メンバーとなった後も、視野を広げるために月1回のワークショップなどが開催され、融資制度などについて互いに勉強する機会があります。

 

このようにスモールビジネスの経営者へのカウンセリングを通じて、自らの視野を広め、さらに経営者としてあるいは人間としての成長の機会を得ることができるのが特徴です。

 

さて、目を転じると、最近日本の政府・官庁や大学はベンチャー企業の「創業支援」を声高に叫んでいるように見えます。少し前に「創業の促進」を目的に株式会社と有限会社の最低資本金額を撤廃するとの案も出されました。

 

しかし、現状でも合資会社や合名会社で設立すれば資本金は理論上1円でも創業できます。実際この形態での創業が増えていることから、最低資本金の額が低くなることが創業促進に結びつくとはとても思えません。

 

むしろ、ベンチャー企業にとって重要なのは「創業支援」ではなく、創業した後の「成長支援」です。要するに会社をつくるのは容易にできますが、つくった会社を存続・発展させていくのが現在の日本の社会環境では大変なのです。

 

創業促進だけを叫ぶ大学や政府にはベンチャー企業の現場感覚をほとんど理解していないピントのずれた人たちが多く、このことがあまり理解されていないように見受けられます。

 

一方、これまで日本のベンチャーキャピタルやインキュベータによる出資先企業に対する支援は財務面が主体で、せいぜい自社の社員を社外取締役として兼務で派遣する程度にしか、出資先企業に対して人的支援ができていないのが実状です。

 

SCOREに登録するアメリカのシニアは、退職前に事業で成功した人、あるいは経済的に働く必要のない人が多く、自分のビジネス体験を後世やスモールビジネスに伝えたいという意欲のある人ばかりだといいます。お金ではなく、社会への貢献を通じてさらに人間としての成長を続けることができるというのがSCOREへの参加のモチベーションとなっているのです。

 

最近日本でも年金収入がそれなりにある企業退職者は、報酬は少なくても自分の得意分野での知識や経験を活かして働くことを希望する場合が多くなっています。ビジネスマンとしての修練をきちんと積んできた人であれば、体力は多少衰えても、知力は全く低下していないばかりか、むしろ深まっているはずです。

 

このような背景を踏まえると、日本でもSCOREと同様の仕組みを立ち上げ、意欲と能力のあるシニアにリーズナブルなコストで活躍してもらうことは、ベンチャー企業の成長支援とシニアの能力発揮の両面において極めて有益であると思います。

 

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