「老後は銀座で」に書かれていないこと

スマートシニア・ビジネスレビュー 2004年5月10日 Vol. 50

ealore老後を都心で暮らしたいという人が増えている。

昨年、テレビ番組で話題を呼んだ
渡辺淳一の小説「エ・アロール」の舞台は、
東京・銀座の有料老人ホームだった。

これは架空の施設だったが、
昨今の都心の高層マンションラッシュからすれば、
近い将来、銀座界隈に本物の有料老人ホームが
出現する可能性は十分ある。

ただ、銀座のような都心に住んだことのない
高齢者にとって、銀座に住むということが
実際どのようなものなのか想像がつきにくいだろう。

そんな人には、山崎武也著「老後は銀座で」
(PHP研究所)が参考になるかもしれない。

ただし、著者もまえがきで断っているように、
都市部の質のよい賑やかな地に老後に住むことを、
「老後を銀座で」と象徴的に言っているだけで、
著者自身が銀座に住んでいるわけではない。

このため、銀座に実際に移り住む人は、
この本に書かれていない
「いくつかのこと」に遭遇することになるだろう。

それらは、いわゆる「華やかな銀座」のイメージとは、
大きくかけ離れたものである。

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「エイジング」という言葉の意味

スマートシニア・ビジネスレビュー 2004年3月23日 Vol. 47

red-wineエイジング(aging)という言葉は、
高齢社会やシニア市場を語る時によく使われる。
だが、この言葉がもつ意味を
一つの日本語にするのは難しい。

エイジングという言葉では、これまでどちらかというと
「マイナス」の側面が強調されてきた。

たとえば、石油化学プラントや発電プラントは、
長年稼動すると、回転部が摩耗し、
配管などの部材の材質が変化して脆くなる。
このような経年劣化は、設備のエイジングである。

これは、しばしば事故の原因となるため、
可能な限り避けたいマイナスの対象とされてきた。
このため、経年劣化の診断・予防技術が
長年産業界の重要なテーマとなってきた。

一方、人間の体でも加齢とともにひざの関節が痛んだり、
皮膚にしわが増えたりする。
体の機能も経年劣化することから、
機械設備同様にマイナスの対象とされてきた。

最近良く耳にする「アンチエイジング」は、
狭義には抗老化療法のことをいうが、
これは体の機能の経年劣化に対する対処技術といえる。

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その人にとっての名作

スマートシニア・ビジネスレビュー 2004年3月10日 Vol. 46

ikiru先日見た「映画 届けます」という番組が印象に残った。
NHKの人間ドキュメントである。

フリーの映画監督 河崎義祐さんが、「映画の出前」をするという話だ。見たい映画のリクエストを受け、スクリーン、プロジェクター、ビデオデッキ、ビデオテープとともに出前する。

行き先は、主に老人ホームや介護施設。リクエストの上位は、
「愛染かつら」「暖流」「麦秋」といった往年の名作が多い。
リクエストは3ヶ月先まで埋まっているという。

現在67歳の河崎さんは、元東宝の映画監督である。
「青い山脈」で監督デビューした後、
三浦友和、山口百恵、桜田淳子、松田聖子などの
若者アイドルが主役の映画をつくってきた。

47歳で東宝を辞め、フリーになった。
フリーになってから映画をつくる機会は減ったが、
若手の俳優候補の演技指導や脚本作家として仕事を続けている。

だが、映画出前サービスは、交通費などの
実費をもらうだけのボランティアである。

レンタルのビデオやDVDが普及した今、
なぜ、ボランティアでの「映画の出前」なのか。

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デジタル技術の逆説

スマートシニア・ビジネスレビュー 2003128 Vol.40

デジタルAV機器_2今年の中高年向けのヒット商品の一つは、

デジタルAV機器だ。

 

特にハードディスクとDVD一体型のものが

よく売れている。

これまでDVDと無縁だった私も、

ついにその仲間入りを果たした。

 

だが、最新のデジタル機器で観るようになったのは、

CG技術を駆使した最新のハリウッド映画ではなく、

黒澤明のモノクロ映画だ。

 

最先端のデジタル機器で、

古い時代のモノクロ映画を見るというのは、

一見お門違いのように見える。

 

だが、デジタル技術の最大の恩恵は、

画質劣化でこれまで埋もれて見えなかったものを

明らかにしてくれることにある。

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団塊女性の旅行を阻むもの

スマートシニア・ビジネスレビュー 2003109 Vol. 36

秋の旅行団塊世代を中心とした50代女性が、

これからの一年で一番楽しみにしていること。

それは「旅行」である。

これは先日の電通シニア大航海学会で講演された

サンケイリビング新聞社滑川さんの話。

拝見したデータによれば、

今後一年間に、50代女性の68%が

海外旅行や3泊以上の国内旅行を予定している。

 

50代以上が旅行需要のけん引役になっていることは

旅行業界では既に常識化している。

しかし、実際にほぼ7割の人が

今後一年間に旅行を予定していることを知り、

この世代の旅行に対する潜在需要の大きさを改めて感じた。

 

50代女性は、子育てが一段落するとともに

夫が退職時期を迎えることが多い。

これまで家の中に向けていたエネルギーを

今度は家の外に向けたいと思う気持ちも強く、

非日常体験としての旅行への需要は底堅い。

 

しかし、これだけの潜在需要にもかかわらず、

実際に旅行にいける人は、予定より少なくなるだろう。

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擬似家族化するペット

スマートシニア・ビジネスレビュー 2003823 Vol. 33

犬とキャンプ場今年、行楽地に向かう高速道路のパーキング・エリアで見慣れないものを見つけた。

 

それは、「犬のオムツ専用」のゴミ箱だ。

ゴミ箱の表面には犬用とわかるイラストが書いてある。

中にはかなりの量の使用済みオムツが捨てられていた。

もちろん、犬のである。

 

一方、訪れたキャンプ場でも目に付いたのは

「犬同伴」の家族だった。

来場者のほぼ半分がそうだったように見える。

昨年も犬同伴の人はいたのだろうが、

明らかに今年はその数が多かった。

 

ここ数年、ペットブームであることはもちろん認識していた。

だが、実際にどの行楽地でも多くの犬同伴者を目の当たりにして、

今やペットが「擬似家族化」していることを実感した。

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映画「アバウト・シュミット」に見る退職後の現実

スマートシニア・ビジネスレビュー 200359 Vol. 29

アバウト・シュミレット冒頭の退職シーンから最初の数分間を見て日本の多くの中高年の人は驚くことでしょう。映画に出てくるのが、あまりに「日本的」なシーンの連続だからです。アメリカにも「サラリーマン」生活が存在すること、そして大企業に長く勤めた人が、定年退職後に直面する課題に日米で大きな違いがないことを実感します。

 

この映画は、前回触れたAARPのThe Magazine最新号でも「2003年に成長する映画」の筆頭に挙げられています。アメリカの年長者たちにも共感を持たれている証拠でしょう。しかし、この映画を「アメリカ人による、アメリカでの、日本によく似たサラリーマン退職者による自分探しの映画」とみなすのは、余りに惜しい気がします。

 

近年のハリウッド映画はCGの発達で背景シーンは微細になった反面、ストーリーが単純化し、つまらないものが多いと思っていました。よい映画というのは、いろいろな解釈が可能な「複線的なメッセージ性」をもっています。そして、見る人間の立場や見るタイミングによって、豊かな想像を掻き立ててくれる力があります。

 

この映画は、久々にその典型です。それを理解するカギは、ジャック・ニコルソンという名優の起用にあります。

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変貌するAARPは何を目指しているのか

スマートシニア・ビジネスレビュー 2003413 Vol. 28

AARP_2AARPとは、アメリカの50歳以上の会員3千6百万人を有する世界でも他に例のない巨大NPOです。AARPは「社会福祉と商業主義とが混在した稀有な団体」といわれます。各種保険や旅行商品に関する全米最大の販売者としての顔もあれば、ワシントンで最も恐れているロビー団体としての顔もあります。

 

その規模の巨大さ、社会的影響力の大きさから日本の企業、NPOからも注目されており、AARPを訪問する外国人のうち最も多いのが日本人とのことです。しかし、そのわかりにくさから、多くの日本人が訪問しているにもかかわらず、活動の全貌を把握している人はきわめて少ないようです。

 

そのAARPが、この春から大きな方針変更を行いました。

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営利企業的「ソシアル・マーケティング」の時代

スマートシニア・ビジネスレビュー 2003324 Vol. 27

2コトラー_先日シカゴで開催されたNational Council on the Aging (NCOA) American Society on Aging (ASA)のジョイント・コンフェランスでは、多くの新しい出会いとともに、新しい動きに触れることができました。

 

なかでも頻繁に聞かれたキー・ワードの一つが、「ソシアル・マーケティング(Social Marketing)」。

 

この言葉自体は、70年代に有名なコトラーが使って以来存在するもので、政府、教会、学校、病院などの非営利組織によるマーケティングのことをいいます。

 

しかし、今回のコンフェランスで驚いたのは、エイジング分野の先進的なNPOが、営利企業向けのマーケティングの専門家を使って、テレビコマーシャルを製作したり、全米キャンペーンを行ったりする例が増えていることです。日本でいえば、たとえば長寿社会文化協会が、電通にテレビコマーシャルの製作を依頼して、全国キャンペーンを行うようなものです。

 

さらに興味深かったのは、コンフェランスの中で、NPOの人たちが、どのようにして効果的なソシアル・マーケティングを行うべきか、その手法を伝えるセミナーがいくつか開催されていたことです。私もその場に参加したのですが、どの参加者もセミナー講師に熱心に質問をしていました。

 

なぜ、いま、アメリカのNPOの人たちは、営利企業が行っているのと同様のマーケティング活動を行うようになってきたのでしょうか。

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百歳のピアニスト

スマートシニア・ビジネスレビュー 2003115 Vol. 24

imagesCAP0U05R_ミエチスラフ・ホルショフスキー出版不況といわれる中で、昨年120万部売れた「生き方上手」の著者 日野原重明さんが、90歳を越えた今も現役の医師として活躍されていることはよく知られています。

 

しかし、上には上がいるもの。約11年前の1992年3月に百歳のピアニストを記念するコンサートがアメリカで企画されました。

 

ただし、これは百歳の記念に親戚・友人が集まって演奏会を開くのではありません。百歳でなお現役のプロのピアニストが、音楽の殿堂カーネギー・ホールで、譜面なしに2時間ピアノを弾きとおすというものでした。

 

そのピアニストの名は、ミエチスラフ・ホルショフスキー。ポーランドのリヴォフ(現ウクライナ)生まれのこの人は、戦前ソリストとして活躍し、チェロの神様パブロ・カザルスとの邂逅を得た後、カザルスの良き共演者としてその名を馳せた知る人ぞ知る伝説の大ピアニストです。

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