通販LUSCに見るシニア男性に受ける商品の秘訣

商品・サービス別
シニア男性比率が高い「ライトアップショッピングクラブ」

2022年12月23日 日経MJ連載 納得!シニア消費

シニアを対象にした通販会社の会員は一般に女性の割合が多い。だが、男女比がほぼ1対1で他社と比べて男性比率が高いのが「ライトアップショッピングクラブ(LUSC)」だ。

会員の7割以上が60歳以上、コロナ禍による巣ごもり消費拡大の影響で毎年4%程度会員数が伸びているなぜ、シニア男性に受けているのか。同通販の人気商品でひもといてみよう。

若い頃から慣れ親しんだものを好む傾向が強い

1つ目は、マックレガーのジャケットを取り上げたい。京都府の平野信二さん(59歳、仮名)は、「若い頃に着ていて、懐かしさを感じて購入した。前のファスナーを上げてもチラリと赤いチェック柄がのぞく点などシンプルだが、さりげないしゃれたデザインが良い」と話す。

この世代は流行と無関係に若い頃から慣れ親しんだものを好む傾向が強い。ターゲット顧客に合わせてそうしたアイテムに触れてもらうとノスタルジー消費を促しやすい。また商品を「限定モデル」にしている点が希少性を高め、購買意欲をそそっている。

懐かしさと機能性とのバランスが心地よい

2つ目は、セイコーのオリジナル腕時計。神奈川県の田中正雄さん(68歳、仮名)は、「鉄道運転士をしていた頃、電車の運転席で毎日使っていたのが精工舎の鉄道時計だった。まるで当時の懐中時計がそのまま腕時計になったようで懐かしくてたまらず購入した」と語る。

これもノスタルジー消費の一種だが、懐かしさだけが購入理由ではない。ソーラー電池の利用で電池交換不要としつつ、ソーラーパネルを文字盤の下に配置して鉄道時計の雰囲気を残すなどのこだわりが随所に見られる。こうした機能性とのバランスが心地よい。

老舗の名店の味が手軽にどこでも楽しめるのがよい

三つ目は、東京・銀座の老舗とんかつ屋「梅林」のかつ丼だ。福島県の若林恵一さん(61歳、仮名)は「銀座の名店の味を福島の自宅でも味わえるのがいい。肉は厚いのに柔らかく、卵もトロトロで、とても冷凍とは思えない」と話す。

ちまたには「名店の味を自宅で」とうたう通販商品は多いが、実際に食べてみると必ずしもそうでない場合もある。梅林のかつ丼は累計販売数25万食を超え、リピーターも多いとのことだ。

LUSCが受けている共通の理由は、①百貨店などの実店舗ではもはや扱わない、昔からの愛用品や無くならないで欲しい商品が買える②住んでいる場所に依らず手軽に本格派を味わえること、3)普段使いの製品だが上質感があり、価格は高過ぎず安過ぎずない—この3つと言える。

日用品に飽きたシニア客には「物語性」のあるモノが求められる

重要なのはシニア男性の琴線に触れる商品デザインの「こだわり」と品質の良さを維持していることだ。

シニア層は一般に生活に必要なほとんどのモノを持っている。このため、コロナ禍前の経済成熟・モノ余り社会では「モノ消費」から「コト消費」へのシフトが声高に言われ、多くの小売業が時間消費機会をサービスに組み込もうとした。

一方、コロナ禍による外出制限の影響で巣ごもりによる「モノ消費」へ回帰したようにも見える。だが、日用品に飽きたシニア客には何らかの「物語性」のあるモノが求められている。LUSCはそうした商品のショーケースのような通販会社だ。

成功するシニアビジネスの教科書

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