日本経済新聞夕刊 201412月17 読み解き現代消費

イオンスマホ日経夕刊2面の連載コラム「読み解き現代消費」に『格安スマホ、シニア飛びつく 品質と価格設定の妙』を寄稿しました。

 

「読み解き現代消費」は、毎週水曜日、気になる消費トレンドについて、その背景などを読み解くコラムです。私も執筆者の一人に名を連ねており、一か月半に一度のペースで寄稿しています。以下に全文を掲載します。

 

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格安のスマートフォン(スマホ)がシニア層に人気だ。口火を切ったのは既存の大手キャリアではなく、小売業のイオンである。2014年4月、端末代と通信料合わせて月額2980円(税別)で発売した格安スマホに、多くのシニアが飛びついたのだ。

 

格安スマホブームの口火を切ったのは小売業のイオンだった。同社の格安スマホの場合、購入者に占める50歳以上のシニア層の割合は50%に上るという。

 

当初のモデルで指摘された通信速度の遅さなどの問題は、競合他社の新規参入が相次いで機能の向上が進んだ結果、徐々に解消されている。

 

10月に新規参入した楽天は月額利用料を2200円に抑えながら、高品質をうたっている。格安スマホの浸透は大手キャリアを脅かすほどになりつつある。

 

なぜ、多くのシニアが格安スマホに飛びつくのか。理由はその価格設定にある。

 

シニアが通信機器を購入する際、価格の基準を固定電話の料金に近い月額3000円に置くことが多い。従来型携帯電話では月額3300円程度だ。そう考えると、月額2980円は固定、携帯のどちらよりも安い。

 

月に8000円ほどかかる通信料がネックで、大手キャリアのスマホ購入に二の足を踏んでいた多くのシニアが飛びついたのも不思議はない。

 

女性専用フィットネスジムのカーブスは、70万人弱の会員の平均年齢が約60歳だという。シニアの健康不安を手軽に解消できる点が支持を広げた理由だが、月額利用料金を大手の半額近い5700円(税別)に設定したことも大きな要素だ。

 

「シニアは資産持ち」といわれるが、その資産は老後の高額出費への備えであり、日々の支出は抑え気味の人が多い。

 

とはいえ、ただ価格が安ければよいというわけでもない。重要なのは、品質とのバランスが厳しいシニア層の眼鏡にかなうという「価格設定の妙」にあることを心得るべきだろう。

 

 

参考文献:成功するシニアビジネスの教科書

 

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