2012915日 朝日新聞 夕刊

朝日新聞_120915_夕刊_2団塊の世代が今年から、年金を受け取れる65歳になる。戦後の日本社会を築いてきた世代は、どんな「老後」を過ごすのか―。17日は敬老の日。

 

「育ジイ」で罪滅ぼし ■ 遊びに投資

 

「孫は本当にかわいいねえ」。東京都多摩市でタウン紙を発行する長谷川由富さん(65)は、3人の孫が遊ぶ姿に目を細めた。

 

「今度は何をして遊ぼうかと考えるのが楽しくて。プレゼントをあげて喜ぶ顔を見ると、また贈りたくなるんだよなあ」

 

仕事を理由に子育ては妻(65)に任せっきりだった。「父親らしいことをしてやれなかった」。孫とは月に1度会い、毎年夏は旅行にもいく。

 

電通が7月に発表した調査では、50代以上の男性が孫にかける金額は年間11万円。担当者は「若い時に見たアメリカのホームドラマのような仲の良い家族に憧れている」と分析する。

 

団塊の世代は日本の「家族」の姿を変えた。核家族化を進め、仕事優先で子育てに関わらなかった父親も多い。「罪滅ぼし的な意味も込め、より孫をかわいがろうと思うようだ」。NPO法人孫育て・ニッポンの棒田明子理事長(44)は見る。

 

団塊の世代は、第1次ベビーブーム(194749年)に生まれた世代を指す。高度経済成長を支え、バブル景気も経験。バーベキューやゴルフなど、それまでの日本では珍しかった娯楽もたしなんだ。「仕事をバリバリやり、趣味にも金と労力をつき込んだ」。博報堂新しい大人文化研究所の阪本節郎所長(60)は言う。

 

埼玉県川口市の山下智子さん(65)は子育てと親の介護を終え、50代半ばから写真撮影に凝っている。4年前には20万円するデジタル一眼レフを購入。レンズ4本を抱えて撮影旅行に出かける。

 

「体力が続くうちは、あちこちでいろんなものを撮りたい」。夫(65)の趣味はゴルフと俳句。「お互い人生を楽しまないと」

 

シニア層の生活に詳しい村田裕之・東北大特任教授(50は「元気なうちは自分の好きなことに惜しみなく出費するだろう」と話す。