高まるフリマ熱、60代以上にも

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高まるフリマ熱、60代以上にも

2022年3月25日 日経MJ連載 納得!シニア消費

60代以上のフリマアプリ利用者は1年で約4~5%増えている

フリーマーケットのように個人間で衣服や書籍などを売買できるフリマアプリの利用者といえば20代~30代の若者だと思われてきた。ところが、近年60歳以上のシニアの利用者がじわじわ増えている。

ニッセイ基礎研究所の調査によると、2021年7月時点での60代男性に占めるフリマアプリ利用者の割合は26.9%、60代女性が23.4%だ。20年6月時点では60代男性が23.2%、女性が18.8%だったので、約1年で約4~5%増えている。なぜ、いま、フリマアプリがシニアの利用意欲を高めているのか。

フリマアプリがシニアの利用意欲を高めている理由とは

理由として第一に考えられるのが、不用品を処分でき、他人の役に立てる点だ。千葉県船橋市の山本正子さん(仮名、61歳)は、巣立った子供がかつて使っていた受験参考書の通称「赤本」を出品したら、30分後には売れたという。買ったのは現役受験生の母親で「貴重な本を手に入れることができ助かりました」とのコメントが届いた。

捨てようと思っていたものが売れて、さらにお礼を言われると単に換金できた以上の気持ちになりモチベーションが上がるという。

第二に自分で決めた価格で売却できる点だ。街のリサイクルショップに商品を持ち込むと店側に価格を決められてしまう。本人が希望している価格よりも安い額が提示されることが少なくない。

フリマアプリの場合、売る側で価格を決められる。もちろん買う側から値引きを求められるが、値引きしたとしても自分で決めているので納得感がある。

社会とのつながりに喜び

第三に社会とのつながりを感じられる点だ。フリマアプリ大手のメルカリが60代以上と20代の利用者を対象に実施した調査によると、フリマアプリ利用後に「社会とのつながりを感じるようになった」と回答した60代以上は20代と比較し約3倍の割合となっている。

「異なる世代との売買交渉のやりとりが楽しい」という声も60代以上からはよく聞かれる。特に退職後の男性や専業主婦などでは新たなコミュニケーション機会となることが注目だ。

第四に匿名配送で売買できる点。これは自分の氏名、住所などの個人情報を開示せず配送できる仕組みだ。特にネット売買に警戒感のあるシニアにとっては安心感が増し、売買意欲が高まる。

ウィズコロナ時代に交流を楽しみながら生前整理を行う手段

さらにシニアが利用しやすい工夫が随所に施されている。スマホでもアプリ画面が見やすく、使いやすい。出品時に文章例が逐一表示されるため、それを使えば入力が容易で出品も購買も簡単にできる。

商品発送用の箱は全国のコンビニで買うこともできる。発送が面倒な人には最寄りのドコモショップに持ち込むと梱包して配送するサービスもある。全国にあるメルカリステーション、ドラッグストアなどで「メルカリ教室」を開催し、初期設定から出品の仕方まで教えてくれる。シニアだけが対象ではないがシニア利用者には有用な場所となっている。

ウィズコロナ時代に交流を楽しみながら生前整理を行う手段として、シニアにとってのフリマアプリの利用価値は今後さらに上がるだろう。

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