「一人暮らし世帯特有」の価値を組み込む

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キーワードは「小型・軽量・健康・安心・手軽・高品質」

社会の高齢化が進むと一人暮らし世帯が増える。この世帯が求める価値のキーワードは「小型(小口)」「軽量」「健康」「安心」「手軽」「高品質」だ。

小口化健康志向は、現在コンビニやスーパー各社が進めている商品戦略の柱だ。セブン-イレブンの小口総菜「セブンプレミアム」がその代表。サバの味噌煮、ポテトサラダ、ひじきの煮物、けんちん汁、牛タンシチューなどの総菜を、150~500円程度の価格帯(2022年6月現在)で品揃えしている。

また、イオンの子会社の「オリジン弁当」、イオン葛西店などで見られる「一人用刺身」「小口デザート」なども一人暮らし世帯をターゲットとした商品だ。

一方、雑誌「ハルメク」のロングセラー商品「人参ジュース」は健康志向を訴求したもの。有機栽培の人参を原料とした1リットルのビンに入ったトローっとしたジュースは、一般の人参ジュースとは趣が違う。 食物繊維を豊富に含み、「おいしくて、身体が軽く、スッキリ、快適になる」というのが人気の秘密だ。値段は、6本組み6,899円(税込、2022年6月現在)と高めだが、前身の「いきいき」時代からの根強い人気のロングセラーとなっている。

一人暮らしの年配者が、有機栽培の人参ジュースを自宅で都度作るのはかなり面倒なので、「手軽」に「高品質」で「健康にいい」という価値が、多少値段が高くても買わせるのだ。

売れる家電は“一人用”サイズ

家電メーカーのシニア対応商品は大分増えた。一人用サイズで美味しくご飯が炊ける小型炊飯器がその一例。従来10合炊き、5.5合炊きだったのが、3合炊き、1.5合炊きまで商品化された。土鍋コーティング、IH炊飯によって「炭窯で炊いた」「土鍋で炊いた」ような味わいのご飯を楽しめるという高品質が売れている理由だ。

掃除機では、パナソニックが2012年8月から発売の「プチサイクロン」シリーズが、「小型・軽量・高性能」でロングセラーになっている。 小さく、軽くて操作しやすいにもかかわらず、高性能でゴミも捨てやすいというのが、シニアの一人暮らし世帯の気持ちをつかんでいる。

旦那と旅行してもつまらないから、一人で参加する旅

実は一人暮らし世帯でなくても、「一人で楽しみたい」というニーズもかなり存在する。クラブツーリズムが提供している「ひとり旅」は、そのような「一人で参加して楽しみたい人」向けの「おひとり参加限定」の旅行商品だ。

ただし、「おひとり参加限定」といっても、独身や未亡人でないとダメという意味ではない。あくまでも旅行への参加が一人、という意味だ。「旦那と旅行してもつまらないから、一人で参加する」という高齢女性も結構いるために、こうしたニーズの受け皿にしているのだ。

内容はさまざまで、コンサート、芸術鑑賞などのエンターテインメント型旅行、講師が同行していろいろな場所への散歩、毎月の誕生日の人を集める「誕生日交流会」などの工夫を凝らしている。ひとり旅では次のような特徴を打ち出している。1)参加者全員がおひとり様参加 2)だから、同行者を探す必要がない 3)全コースに添乗員が同行 4)ツアー中に自己紹介タイムを用意 5)希望すれば1名1室コースもあり

人気があるのは、一人では行きにくい所への旅

一人で参加しても旅の最中は一人ではなく、似たような境遇の人たちと一緒。こうした人たちとの「さりげない出会い」の機会も魅力の一つだ。

ひとり旅で人気があるのは、「一人では行きにくい所」への旅だ。たとえば、古い温泉旅館などでは、中高年の女性客が一人で行くと、旅館の人から「この人は何しに来たのだろう?自殺でもされたら困る」といぶかしがられることもある。

また、沖縄のようなビーチリゾート的なところは、一人では行きづらいが、こうした形態のツアーなら参加しやすくなる。

余談だが、私は昔イタリアのベローナという町に一人で行ったことがある。ベローナは、「ロミオとジュリエット」の舞台となった町で、「ジュリエットの家」が人気の観光スポットだ。 ところが、ここへ行くと周りはカップルばかりで、一人で行った私は、とても場違いな気分になったものだ。ひとり旅のようなツアーで行ったのであれば、このような場違い感を味わうことはなかっただろう。

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