「多様なミクロ市場の集合体」とはどういうこと?

ビジネス切り口別
開発された「新らくらくフォン」

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第65回  

シニア市場を「ひとくくり」に捉えてはいけない

ニッセイ基礎研究所によれば、60歳以上の市場は2022年度で約107兆円と推計されています。

しかし、この市場で事業を成功させるには、市場を「ひとくくり」に捉え、大雑把に取り組む姿勢では難しいです。むしろ「多様なミクロ市場の集合体」と認識して緻密な取り組みが必要です。

私が携わったNTTドコモ「らくらくホン」を例にお話ししましょう。この商品は99年10月から発売され、05年頃まで右肩上がりで急激に売り上げを伸ばしていました。

ところが、06年上期頃に踊り場に差し掛かり、対策が求められました。実はそれまでの機種は三種類しかありませんでした。この機種数で今後も十分なのか、もし不十分ならば、次はどういうデザインのものを何機種追加すればよいのか、を相談されました。

そこでまず、それまで何となくわかった気になっていたシニア向け携帯市場を徹底的に調べ直しました。その結果、当時ターゲットだった60歳以上の人たちにも「らくらくホンのデザインがいかにも年寄り臭くて嫌だ」と敬遠する人がかなり多かったことがわかりました。

シニア市場が「多様なミクロ市場の集合体」である具体的な例

60歳以上を対象とした大規模データ分析を行い、「使いたい機能の数」と「月別通話料金」を切り口に整理してみたところ、市場全体が10種類ほどの小グループに分かれることがわかりました。これが「シニア市場は多様なミクロ市場の集合体」ということの具体的な例です。

世間で言われているような一様なマス・マーケットではなく、いくつかのミクロ市場の集合体であることがはっきりしたのです。

この結果に基づき、07年から従来型になかったお洒落な「らくらくホンベーシック」やワンセグなどの機能を満載した「らくらくホンプレミアム」などを相次いで投入した結果、大ヒット商品となり、再び急速に市場シェアを伸ばすことに成功しました。

必要なのは、自社商品の「ミクロ市場」を定義することです。これは携帯電話だけでなく、高齢者住宅を含む多くのシニア市場に当てはまるでしょう。

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