「同郷の親しみ」をインセンティブにする

ビジネス切り口別
ウィローバレー共用部の様子

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第67回  

全米から見学者 入居率は常にほぼ満室

アメリカのウィローバレーは、ペンシルバニア州の田舎の人口6万人の小さな町、ランカスターにある3千戸の住居が立ち並ぶ大規模リタイアメント・コミュニティです。

ここは州都フィラデルフィアから北へ車で2時間ほど行った、たくさんの牛が飼育されている牧草地の田舎。平均気温は低く、冬はかなり寒い地域です。

リタイアメント・コミュニティのような施設は、フロリダやアリゾナなどの温暖で過ごしやすい場所につくるのが通例です。しかし、ウィローバレーは、アメリカ北部の冬の寒い、市街地から遠く離れた田舎に立地しています。

にもかかわらず、入居率は健常型も介護型も常にほぼ満室状態その理由は入居者参加型の独特の営業活動にあります。見学者は全米から集まりますが、この際の案内役を担うのが、実は入居者なのです。

つまり、フロリダから見学に来た人にはフロリダの出身者が、カリフォルニアから見学に来た人には、カリフォルニアの出身者が案内役となるのです。

同郷の入居者が同郷のゲストの案内役

リタイアメント・コミュニティのような商品を買う意思決定には、会社側の営業トークより、入居者の生の声による口コミの方が効果的です。また、同郷の人が対応すれば、親近感が湧き、購入決定へのハードルが下がります。

たとえば、アリゾナのような温暖な地域から、ウィローバレーに移住した理由や移住してみた感想などを聴けることで、納得感が高まります。また、見学の最後には、ちょっとしたパーティーが用意され、そこでさらに詳しく意見交換ができます。

かつて東京・銀座に「白いばら」というキャバレーがありました。入り口に日本地図が掲げられ、都道府県ごとに出身ホステスの名前が書かれていました。

同郷のホステスを指名すると、お国なまりのまま話ができる安心感があり、同郷のローカルな話題ですぐ打ち解けて、話が盛り上がると評判でした。

このように「同郷の親しみ」をインセンティブにする方法は、いろいろな業種に応用できるでしょう。

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