2026年8月28日 村田裕之の活動
新聞記事に掲載された友人との意外な「きっかけ」
毎日新聞デジタル版の連載「私のライフシフト」に、友人の梶原伸子さん(ペンネーム:カジノビコさん)のストーリー「吉野家でトクホ開発、57歳で画家に『趣味で終わらせない』」が掲載されました。
「早期退職を選んだワケ」の部分で、「研究職として働き続ける中、今後の⼈⽣を後押ししてくれる⼈物にも出会った」として私のことが紹介されていました。
梶原さんは彼女が吉野家在籍時に共同研究を行っていた仲間です。当時はいわゆる大切な「クライアント」でした。連載記事では、私が彼女の早期退職を後押ししたように書いてありますが、私自身には当時そうした意図は全くありませんでした(笑)。
共同研究の間は会食機会など非常に少ない「マジメな」関係で、普段のコミュニケーションも研究の話ばかりでした。それでも研究の節目で一杯やる機会はあったので、もしかして、そうした時に私が話したことが、梶原さんのアンテナに触れたのかもしれません。
2年半前に突然「台湾に行ってきます」との連絡があり、研究が一段落したので休暇に行くのだろうと思っていました。しかし、それが彼女の人生の大きな転機になるとは、当時は全く予想していませんでした。
50代中盤から訪れる人生の「解放段階」
梶原さんのストーリーを連載記事で読み、私は2006年に翻訳家の竹林正子さんと上梓した「いくつになっても脳は若返る 年齢を重ねてこそ湧き出る積極的な力」(ダイヤモンド社)の次の話を思い出しました。
米国の心理学者ジーン・コーエンが原著のなかで、後半生の心理的発達に四つの段階があり、50代中盤から70代前半にかけて「解放段階」に達する人が多いと述べています。
この解放段階においては、「何かいままでと違うことをやりたくなる傾向」が見られます。
例えば、サラリーマンを早期退職して沖縄に行ってダイバーになる。あるいは、ずっとパートでレジ打ちをやっていた女性がダンスの先生になる、といった具合です。
こういう一種の「変身」が起こりやすくなるのが、この段階の特徴です。
なぜ60代前後に心の変化が起きるのか
なぜ、60代前後に「解放段階」が訪れるのか。1つは、脳の潜在能力が発達し、新たな活動や役割に挑戦するエネルギーが湧きやすくなっているためです。
もう1つは、この時期には退職や子育て終了、親の介護の終了などライフステージが変わりやすいためです。
これらがきっかけで心理面の変化が起きやすくなるのです。
もう人生長くないのだから、自分のやりたいことをやろう、という気持ちが強くなる。すると「インナープッシュ」と呼ぶ自己解放を促す精神のエネルギーが起きやすくなると、コーエンは述べています。
20年前に上梓した書籍の内容ですが、梶原さんが一歩踏み出した理由を改めて感じました。
全米で大きな話題を呼んだMature Mindの翻訳本。最先端の脳研究成果から中年期以降の人の知的能力の発達にどのような意味があるのかを洞察し、退職者のリタイア後の有意義な生活や創造性を発揮するライフスタイルの提案まである啓蒙書。
新たな挑戦に一歩を踏み出せる人の共通点
一方で、当該年齢に達すれば、必ず何か新しいことを始める、ということではありません。解放段階になっても、色々なしがらみや都合があり、現状維持する人も少なくありません。
私が知る限り、定年前後で新たなことを始める人は、自分がやりたいことを明確に持っている人です。それも、数年以上に渡って温めている人の方が始めやすい。梶原さんの場合は水彩画を趣味として10年間取り組んできたことが大きいと思います。
前述の通り、解放段階に達する年齢は、人によって幅があります。梶原さんのように50代後半の人もいれば、70代過ぎてからの人もいます。別の友人には、70代後半で富山から京都に引っ越して新たに店を始めた人もいます。
歳を重ねるにつれて、新たなことに挑戦するのはおっくうになりがちです。それでも取り組む人は、元気にイキイキして見えます。これは不思議なことですが、最も至極のようにも思えます。
梶原さんの今後の活躍を期待しています!
横浜市戸塚区在住のカジノビコ(本名・梶原伸子)さん(59)は大学卒業後、食品業界で長く研究開発の仕事に携わった。 当時は、何度も何度も実験や試作を繰り返す地道な作業の連続だった。









