2024年4月30日 村田裕之の活動
「スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家」とは
シンガポールを拠点とするアジア太平洋高齢者ケアイノベーションアワード(Asia Pacific Eldercare Innovation Awards)において、2024年度の「スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家(Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur)」に私・村田が選ばれました。
「スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家」とは、「事業活動を通じて人口の高齢化ニーズに応え、生活を向上させることに多大な貢献を果たした、日本で最も革新的で影響力のある起業家」とのことです。
受賞者の選考は、イノベーション、インパクト、持続可能性、拡張性の 4 つの基準を満たす起業家に対して行われ、日本および世界のシニアビジネス(Business of ageing)における先駆者の一人として選ばれたとのことです。
連休明けの5月9日夜、シンガポールの有名なホテル、マリーナベイサンズで行われる表彰式とレセプションに出席の予定です。
民間企業950社と介護保険に依存しないシニアビジネスに取り組んできたことが評価
今回の受賞は、多少、面はゆいところもありますが、1999年に初めてアクティブシニア市場の到来を予言し、その担い手としてのスマートシニアという新たな高齢者像を提唱し、以来25年間にわたり、950を超える民間企業と介護保険に依存しないシニアビジネスに取り組んできたことが評価されたものと受け止めています。
また2007年にスマート・エイジングという新たな加齢観を提唱し、東北大学におけるスマート・エイジング研究と産学連携を推進してきたこと、これまでに450回を超える海外での講演を通じてシニアビジネスの知見を伝えてきたことも評価されたものと思います。
シンガポールにおけるシルバー産業への取り組みの変遷
私が初めてシンガポールを訪れたのは、2008年に政府主催のSICEX(Silver Industry Conference and Exhibition)の講演者として招かれた時です。
当時まだ事実上の国のリーダーとして存在感を放っていた建国の父、リー・クアンユー元首相(現在のリー・シェンロン首相の父)と最初で最後の邂逅を得たのもこの時でした。
その頃、リー元首相は「これからのシンガポールの主要産業はシルバー産業だ」と言っていました。
彼は常に30年先を読み、そのための布石を打ち続けてきた方です。しかし、シルバー産業については必ずしも彼の予想の通りには進展しませんでした。
理由は、2008年当時のシンガポールの高齢化率は8%程度で、まだ国が若く、介護が不要で元気なシニア(アクティブシニア)の市場がほとんどありませんでした。
数年の試行錯誤ののち、シンガポール政府が注力し始めたのは高齢者住宅の建設や介護サービスの育成でした。
少子高齢化が急速に進むシンガポール アクティブ・エイジング産業への注力が必要
ところが、2022年現在のシンガポールの高齢化率は18.4%になり、かつ、高齢化の進展速度が速くなっています。介護産業だけに注力しても、社会の高齢化速度が速いため、このままでは立ち行かなくなります。
結局、必要なのは、今元気な高齢者と高齢者予備軍が、可能な限り要介護状態にならず、元気で居続けられるようにするか、なのです。シンガポールや香港では、これを「アクティブ・エイジング」と呼んでいます。
今回の受賞で、シンガポールが従来の介護産業だけでなく、「アクティブ・エイジング産業」にも注力する転機を迎えていることを改めて感じました。
個人のスマート・エイジング実現に必要なことは何か、それを支援する商品・サービスの事例と、それらを生み出すために何が必要かについてお話します。