シンガポールのためのスマート・エイジング戦略と超高齢社会・日本の知見

2024年5月10日 シンガポール社会科学大学&Ageing Asia

超高齢社会・日本の知見をシンガポールに伝える

連休明けにシンガポールで講演することになりました。講演タイトルは「Smart Ageing Strategies and Insights from Super-aged Japan for Singapore」、翻訳すれば「シンガポールのためのスマート・エイジング戦略と超高齢国家・日本の知見」となります。

現在の私の活動は、1)「スマート・エイジングの秘訣」を主に中高年の個人の方にお伝えすること、2)個人のスマート・エイジングを支える商品・サービスの開発や利用促進(シニアビジネス)を行う民間企業を支援すること、3)これら二つの活動で得られた知見を、これから社会の高齢化が進む海外諸国に伝えることです。今回の講演は3)に該当します。

シンガポールの高齢化はかなりのハイペースで進んでいる

高齢社会対策は、その国の国民の生活水準(一人当たりGDPが尺度となる)が一定以上であれば、高齢化率に応じた段階があります。

一人当たりGDPでは、2023年現在でシンガポールはUS$91,100で世界第6位、日本はUS$35,390で世界31位です。US$表示のため、日本の数値は最近の円安でかなり目減りしています。国民の生活水準の面ではシンガポールは日本以上に高いと言えます。

一方、2022年時点での高齢化率は、日本が29.1%に対し、シンガポールは18.4%で、この数値は日本の2002年頃と同じです。

しかし、2038年に2022年の日本と同じになり、2060年にほぼ日本と同程度になると予想されています(図参照)。

これより明らかなように、シンガポールの高齢化は2010年以降、かなりのハイペースで進んでいます。

シンガポールが、現時点で国連の定義による「超高齢社会=高齢化率で21%を超える社会」よりも、まだ若い社会であるからと言って安心はできないでしょう。

日本よりも深刻なシンガポールの少子化傾向

シンガポールの高齢化が加速している理由の一つは、少子化の進展です。

出生率は、1988年以降、右肩下がりで低下し続けており、2021年で1.12と日本の1.3よりも低くなっています。

少子化対策は、シンガポールでもこれまで様々な取り組みがなされてきました。しかし、その中身は子育て支援や多子化促進であり、ほとんど効果がありませんでした。

シンガポールの出生減はほぼすべて20代の出生率の減少によるため、20代の結婚が促進される環境・制度の整備が必要です。

しかしながら、仮に出生率が現在の1.12から2以上に戻ったとしても、生産人口の増加に反映されるまで少なくとも20年以上かかります。

高齢者予備軍と高齢者が「三つの健康」を可能な限り長く継続することが必要

そこで必要なのは、現時点の高齢者予備軍と高齢者が、「三つの健康(身体的、精神的、社会的健康)」を可能な限り継続することです。これが、2006年から私が提唱しているスマート・エイジングの考え方です。

講演では、個人のスマート・エイジング実現に必要なことは何か、それを支援する商品・サービスの事例と、それらを生み出すために何が必要かについてお話しする予定です。